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豚>貴族

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 あっ、そうか! 豚と一緒にするなんてコーシさんに失礼……ですよね? 多分、自信は無いですけど。



「……あれ? 坊ちゃま、右側の女ってグラン公爵家のメイドじゃないですか?」


 どうやらお守りをしている騎士の人がシャロットさんに見覚えが有るみたいですし、これで大丈夫ですかね?


「ええ、その通りです。私はグラン公爵家次期当主であるヴォルテクト様の警護と身の回りのお世話を任された身。……彼女も今からヴォルテクトにご用がありますので此処で失礼します」


「し…失礼します!」


 どうやら残った私の事を気遣って下さったみたいで、話を合わせてこのまま去らせて貰いましょう。ああ、助かった……。







「待ちなよ。どうせヴォルテクトの奴に抱かれてるんだろ? あの貴族の恥曝しに尻尾を振るなら僕にも奉仕しなよ」


「……は?」


 助かったと思ったんですが、どうも彼は骨の髄までアレだったみたいで騎士の人達も慌てています。そんな中、丁重な動作で相手を敬う表情をしていたシャロットさんが僅かに反応しました。……えっと、多分怒っています。




「うん? その様子だと違うのか? ああ、ヴォルテクトって不能か。グラン公爵家も終わりだな。よし! 僕の愛人にしてやるから感謝しろよ!」


 人って此処まで醜くなれるのですね。関係無い世界の為に頑張ってくれている璃癒の輝きを近くで見ているだけに彼の醜悪さが際立って見えて嫌悪感さえ冷え切ってしまいました。


「おっ! お前も僕をジッと見てるし、愛人志望だな! よーし、よし! お前は貴族の家に奉公する家柄じゃないみたいだし、首輪を付けてペットにしてやる」


 光栄だろうと言いたそうな顔をこれ以上見ているのが苦痛にさえ思えた時、シャロットさんが前に進み出します。コーシさ…コーシは何を勘違いしたのか嬉しそうな顔ですが近くの私には途轍もない怒気が感じられ……。




「黙りなさい。グラン家への侮辱は許しませんよ」


「ひぃっ!?」


 シャロットさんの表情が一変し、コーシさえ感じ取れる程の怒気が放たれる。豚が引きつけを起こしたみたいな悲鳴を上げて身を竦ませた彼ですが、ブルッと震えるなり股間の当たりが濡れて……あっ。



「おや、失禁ですか。随分と情けない」


「う…五月蝿い! 僕が折角親切に提案してあげたのに仇で返しやがって! おい、お前達! あっちは要らないから犯して殺せ!」


 本性が出ましたね。いえ、割と最初からですが。そして類は友をと言うべきか、アレな人の周囲にはアレな人が集まると言うか、下卑た顔で武器を構えて向かって来ます。


「へへっ! 抵抗しなければ死ぬ前に良い思いを……」


 シャロットさんは担いでいた熊を投げつけて先頭の一人が潰されました。熊って重いですからね。其れを片手で放り投げるシャロットもシャロットさんですが。


 ですが、これで残りの三人は怯えて今にも逃げそうです。逃げ出さないのは先程から気にしている雇い主を怒らせたくないからでしょう。


「おい、何やってるんだ! パパに言ってクビにするぞ!」


「ちっ! おい、三人掛かりだ! いや、もう片方を狙え。人質にするんだ!」


「……アイスバインド」


 氷よりも冷たい鎖が残りの三人を拘束する。これ以上は言葉を聞くのさえ我慢なりません。



「お…お前達は男爵家の僕に逆らうのかっ!」


「……そうですか。そういう事を言いますか。……なら、私も同じ事をさせて頂きます」


 此処まで来て家の権力を盾にしますか。なら同類になるみたいで嫌だったのですが、こんな風に馬鹿貴族に絡まれた時に使えと空也さんが仲介して下さったあのお方の威光をお借りしましょうか。


「我が呼び掛け、我が信仰に応えて下さるのならば姿をお見せ下さい。来たれ、風の精霊王よ!」


 私の前方で緑の旋風が吹き、シルフ様が姿を現す。コーシ自体はフロレス共和国以外の出身だそうですが聖獣王様の配下であらせられる精霊王の一角を前にしては絶句するしかないみたいですね。


「お…お前、シルフ様と契約してたのかっ!?」


「ええ、その通りです」


 実際はサバイバル訓練中だけの短期契約で正式契約は試練を突破しなければ駄目なのですが黙っておきましょう。契約は契約。嘘ではありません。


「……契約者よ。どうするのだ? 敵性紋章を刻んでやっても良いが?」


「ひぇ!?」


 大袈裟な程に怯えて更に漏らしたコーシですが無理もありません。敵性紋章とは精霊が敵だと認定した証。それこそ精霊王の物となれば盗賊団さえ拒絶すると伝わり、恐れられています。最近、とある港町を牛耳ろうとしていた人がウンディーネ様のを刻まれたのは強く記憶に残っていました。


「……今すぐ立ち去るなら構いません」


 そう言って拘束を解けば我先にと逃げて行くコーシ達。まあ、コーシは太り過ぎで私が歩くよりも遅いですし、転がった方が速いと思いますよ? 其れはそうと、彼を置き去りにしたので騎士の人達はクビでしょうね。


「……用事がないなら帰るぞ?」


「はい、感謝致します」


 私が頭を下げればシルフ様は一陣の風と共に姿を消す。


「シャロットさん、大変でしたね。 ……あの?」


「はっ!? 失礼致しました」


 ……あー。シャロットさんはフロレス共和国の方でしたね。此処は速く契約内容について説明しないと面倒な事に……。





「所で将来的な就職先はお決まりですか? グラン公爵家ならば最高の待遇で……」


 なっちゃいましたっ!













「平民の女のくせに馬鹿にしやがって! おい、家族の命が惜しいなら彼奴等を殺せっ!」


「ですがシルフ様と契約を……」


「ふんっ! お前達と違って頭の良い僕には策があるんだよ。立ち入り禁止地区にクリスタルドラゴンの巣があるから利用しろ! 卵を盗んで彼奴等の拠点に持って行くんだ!」

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