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悪趣味

 午後からの実戦訓練だけど、毎回何人かのグループに分かれての総当たり戦だ。一通り戦った後は勝率が似通った生徒同士で次のグループを作るんだけど、これで成績が決まるのかと思ったら少し申し訳ないと思う。


 だって僕の強さは偶々手に入れたクラスの補正が大きいからね。レベルだってお祖父ちゃん達が協力してくれて高くなったし、コツコツ頑張っている人に悪い……と思っていたのは初日だけだった。


「……またか」


 四日連続で授業に参加していない奴らがグループに最低一人居るんだ。当然だけど不戦敗になる……ちゃんと出席してた方が。まあ、家の力で成績が約束された奴らとちゃんと授業を受けている人達を分ける為の配慮って奴だ。


 勝率トップ組の不戦勝は家柄が良い方、同じ位の時は日によって同率になる様に調節するってコルナリアさんが教えてくれた。


 腐っているだろう? とは彼女の言葉であり、僕も同意でしかない。


 なーんか納得行かないと不満に思いながら次の相手になる人の試合の観戦をする。振り回されるハルバートをダガーを持った生徒が避け、振り下ろされた瞬間に踏み付ける。ハルバートを持った生徒が体勢を崩した時、ダガーを持った生徒が跳び蹴りを胸に叩き込んだ。


 あの人は結構強いな……。


「こ…降参だ……」


「勝者、!」


「力任せに振るい過ぎだ。だが、以前よりも腕力体力共に上がっているな。今後も精進するが良い!」


 仰向けになった生徒が両手を上げ、勝ったダガー使いは金髪を逆立てた大柄の少年。鍛え上げられて引き締まった肉体は魅せる為に膨らませた物じゃなくって戦いの中で鍛え上げられた物。


 名をヴォルテクト・グラン。高位の貴族の中で唯一授業にちゃんと参加して成績も優秀な人らしい。短期入学生の僕達にも気を使ってくれるし、上から目線なのは貴族だから仕方ないから五月蠅い以外は好人物だ。


「ふっはっはっはっはっはっ! 俺様に勝ちたければ歩みを止めるでないぞ。俺様とて止まらず歩むのだから当然ではあるがなっ!」


 ……あー、マジで五月蠅い。聞いているだけで耳がキンキンするし、悪気が無い分、逆に質が悪い気さえするよ。気遣いが出来る努力家って良い性格しているのに残念な奴……。



「転入生、いや、璃癒よっ! いよいよ次はお前と俺様の初試合、雌雄を決しようではないか! 偽りの成績で満足する屑共と違い真の学年最強を決める時だっ!!」


 そして、僕はその面倒で残念な奴にロックオンされているみたいで。……あー、うん。近いんだから叫ばなくても聞こえるからね?


 流石に耳が痛くなって来たのでその旨を伝えてみた所……。




「ぬぅっ!? 俺様が話す度に妙な顔をする者が多いと思っていたが……皆の者、迷惑を掛けていたなっ!」


「いや、だから五月蠅いって」


 ……分かった事がある。此奴、紛れもない馬鹿だ。それも筋金入りの馬鹿。僕が文句を言うと少し落ち込んだ様子で自分の観戦場所に戻って行き、隣の女子生徒、彼専属のメイドらしい人に慰められていた。彼女も一応生徒。護衛も兼ねているらしい。


 名前はシャロット。銀髪を短く揃えたクールビュティーだ。武器はトンファーと手斧。結構アグレッシブに攻めるタイプで一度試合をしたけど結構強かった。



「……次からはご注意下さい」


「うむ! だが、お前は流石優しい奴だな。どうだ? 俺様の嫁になる気は無いだろうかっ!」


「身分が違います。私では愛人すら過ぎた物かと……」


 うーん。断りつつも満更じゃないって様子の。普通に大勢の前でラブコメやらかすとか。何人かの男子生徒は、羨ま死ね、って呟いているし。


 さて、余計な事を考えるのは此処までだ。コルネリアさんとは(無理やり)夕食後に手合わせするって約束を(強引に)したし、体力を温存したいけど前座扱いで楽に勝てる相手じゃない。


「これは気を引き締めなくちゃね……」


 自分の力がクラスメイトと比べてズルだって分かっているけど、僕は負けるのが嫌いなんだ。お祖父ちゃん達に指導して貰っているし、絶対に負ける訳には行かないぞっ!


 僕は気合いを入れ、次の試合の様子を眺めながらイメージトレーニングを開始する。今戦っている人達には悪いんだけど、今は彼との勝負に集中したいんだ。



 ヴォルテクトとの試合までは不戦……敗が決まっている。正直腹立たしいけど体力の温存の為には……。






「おいおい、随分と低レベルな試合をしているじゃないか」


 でも、この日に限って空気を読まずに彼奴は遅れて出席していた。教師も強く出られないのか注意もしないし、ぞろぞろ引き連れている家臣も偉そうにしている。


「……何時も通りサボっとけよ」


「また悪い癖が出たのね……」


 少し先端がカールした金髪の軽薄そうな優男で身なりは良いけど品格が感じられない。漫画とかで登場する典型的な馬鹿息子って見た目だ。お昼にわざわざ料理人を連れて来て特別な食事を用意させていたのも此奴。作業スペースが限られているのに迷惑だってスカー先生がこぼしていた。


 名前は円形脱毛……じゃなかった。エンケー・ダッツモ、ダッツモ伯爵家の三男とのこと。家の力で集めた魔魂石でレベルだけは上げているけど、それで強くなった気になって授業には参加しない彼が参加した理由、それに直ぐに行き当たった。この授業で顔を見るのは初めてだけど、嫌って程に悪評を耳にしているからね。



「戦場ってのは過酷だ。木の剣なんかでするお遊びの試合が好きな君達と違って僕は……ほら、この通り。近隣で名の通った鍛冶屋に予め注文していたのさ」


 自信たっぷりに掲げたのは薔薇の金細工や宝石が散りばめられた成金趣味のレイピア。それを数度振り回したエンケーはヴォルテクトが無言で睨んでいるのに気が付いて一瞬ビビった顔をした後で目を逸らし、対戦表に書いてある自分の名前を見た後で僕に切っ先を向けた。




「なんだ、僕の相手はお前か、転入生。まあ、随分と評判らしいけど、此処で本当の強者の力を見せてあげるよ。ハンデとして君は手に馴染んでそうな訓練用の剣を使って良いよ。僕はハンデとして使い慣れていないレイピアを使ってあげようじゃないか」


 上から目線で偉そうに真剣と木の剣の試合を申し込む、これがエンケーの趣味だ。政治的に微妙な関係だからヴォルテクトが関わりのある人以外を庇えないのを良い事に権力を盾にして他の生徒をいたぶる、本当に悪趣味な奴だ。


 時間と体力の無駄だし、適当に負けて……。





「それにしても貧相な胸だね、君。情けなくて哀れだよ。……ぷっ!」


 ……絶対に負かせてやる。貧乳の敵に滅びあれっ!!

明日は休むかも……

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