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特別災害危険種

此処まで感想が無いと逆に面白いなww 一定数は見てるからブックマークは気にしないで置こう 所詮趣味だし、気にしすぎはね


なんとか6000オーバー これで16万字越え

 特別災害危険種、そんな指定をされるモンスターが居るってフィーラさんから教えて貰った。尚、どうして知らないんだって驚かれたけど。


 僕が先日、苦戦の末に倒したバイコーンもその中の一体で、フィーラさんが調査しに来たシーリザードも危険ランクは一段下だけど特別災害危険種の一体らしい。


 其れが今、僕達の前に現れた。全体的な見た目はレッサーシーリザードと変わらないんだけど大きさが桁違い。レッサーシーリザードがコモドドラゴン位の大きさなんだけど、シーリザードと比べたら普通の蜥蜴の大きさに見えた。


 右前足に填まっている黒い輪っか、バイコーンのと同じ物だ。偽勇者と彼奴等の両方と繋がっている奴が居るんだな。それにしても……。


「……うへぇ。気持ち悪い見た目だなぁ……」


 真水で固まる性質があったのでラグレでは気にならなかったけど、海水から上がってきた身体からはテラテラ光る粘着質な粘膜が出ている。一歩歩く度に地面と足の間で糸を引いて不気味だった。


 思わず一歩下がっちゃったけど、浚われた子供も居るし、どうも禍人と繋がっているらしい奴らがモンスターを操ってるっぽいし退くわけにはいかないよね。


 それに、向こうも逃がす気は無いみたいだしさ……。


「ぎゃはははは! 絶対に逃がさねぇぜ! 纏めて生きたまま餌にしてやるよ!!」


 男が叫ぶなりレッサーシーリザード達が僕達目掛けて向かってくる。体中の粘膜は武器の切れ味を落とす上に熱や電気に強いんだよね? うん、予め聞いていて良かった。


「……」


 緋鋼を鞘に納め、前傾姿勢を取る。手を伸ばせば触れられる距離までレッサーシーリザード達が迫り、僕が無惨に殺される光景を想像してかニヤニヤと笑う男達の視界から僕が消え、レッサーシーリザード達と背中を向け合う様にして後方に現れた。


「……は?」


 まるで瞬間移動でもしたみたいに見えたんだろうね。間抜けな声を出して目を擦っている。そして、再びの納刀による鍔鳴りの音。レッサーシーリザードから血が噴き出した。


「備えあれば嬉し……憂いなし。準備しといて良かったよ」


 緋鋼の切れ味は凄まじいけど、粘膜が付着したらどうなるか分からない。だから、予め魔法を使っておいて良かったよ。


 レッサーシーリザードの傷口周辺の粘膜は乾いた水飴みたいに固まって、僕の足下では納刀の際に飛び散った水滴が地面を濡らしている。武器に属性を付与するエンチャント系魔法、ウォーターウエポンのコツを同じく使えるフィーラさんに教わったんだ。じゃないと岩を切って投げ付ける脳筋戦法になってたもんね。


 まあ、そんな人が居るとは思えないけどさ。



「はっ! 調子に乗るなよ、貧乳女。レッサーシーリザードを数体倒したって……」


 余裕を崩さない男の背後でシーリザードが口をモゴモゴと動かし、開くなり大量のレッサーシーリザードが飛び出して来た。


「璃癒さん、レッサーシーリザードを幾ら倒しても無駄です! 直ぐに補充されるので本体を狙って下さい!」


 本体って言うのは言葉のままで、レッサーシーリザードはシーリザードが作り出した分身に過ぎないらしい。生み出したレッサーシーリザードが餌を探して食べ、そのレッサーシーリザードを食べて栄養を補給するとか。


「……もっと早く知りたかったなぁ」


「ごめんなさい、知っているかと!」


 あっ、これも常識だった? フィーラさんの中で僕はどれだけ世間知らずってなってるんだろうか。……それにしても口から大量の蜥蜴が出てくるとか、覚悟せずに見たから気持ち悪くなったよ。


 なんて無駄なことを考えている間にもレッサーシーリザード達は向かってくる。さっきみたいに素早く動きながらとっても速く斬るだけじゃ修行にならないし、此処は魔法を使ってみよう。


 選択するのは魔法剣士系のクラスが使える魔法。心臓の辺りに溜まった魔力が手を通して剣に流れ込むイメージ。大きく構え、一気に振り抜く。



「エアスラッシュ!」


 剣の軌道に合わて三日月状の斬撃が一直線に飛んで行く。斜線上にいたレッサーシーリザード達を上下に分断して、勢いを殺されずにシーリザードへと届く。


「げっ!?」


 レッサーより分厚くて粘度も高い粘膜が鎧の働きをしてエアスラッシュの勢いを殺す。速度を落としながらも進むんだけど、分厚い皮膚と脂肪の表面まで斬った所で終わっちゃった。切れ目が入った粘膜も直ぐに戻る上に止血の役割を果たしているのかちょっとだけ血が出ただけで終わってるよ。


 ……正直言ってレッサーシーリザードを量産するから脅威になっているんだと思ったけど甘かったみたいだね。その上、ダメージを受けたのは受けたので怒ったのか巨体にも関わらずレッサーシーリザードより少し遅いくらいの動きで向かってくる。


 動く度に粘膜が飛び散るし、鋭い歯がビッシリ生えた口の中から凄い臭いがして来た。フィーラさんは……うん、もう後方に下がってる。出来れば男達を牽制して欲しかったけど……。


「エアスラッシュ!」


 再び放つ飛ぶ斬撃。でも、シーリザードの横を通り過ぎて行く。外した訳じゃない。気絶して転がっているペラ君と近寄ろうとした男の間に着弾した。危ない危ない。人質にされる所だったよ。……先に回収した方が良いかな?


「うん、だよね!」


 思い立ったら即実行。僕に向かって突進してくるシーリザードの巨体を直前で跳んで躱し、着地と同時に一足飛びにペラ君の前に着地すると振り返りながら振りかぶる。目標は坂を上っているフィーラさん。幾ら何でも逃げるのに躊躇が無いにも程があるけど、今は都合が良い。


「フィーラさん、パース!」


「ふぇっ? えぇええええええええっ!?」


 僕は声を掛けるなり彼女目掛けてペラ君を投げ付ける。よし、直撃……じゃなかった、ナイスキャッチ! 受け止めた勢いで転んじゃったけど、慌てた様子で坂を上って行った。


「さて、後は……」


 男達がフィーラさんを追えない様に注意しながらシーリザードを倒すだけ。僕が目の前から居なくなったのに速度を落とさず岩壁に向かって行くんだけど、激突するかと思いきや壁をヤモリみたいに駆け上り、天井に張り付いて動いている。……うぇ。ヤモリって言うかゴキブリみたいだ。


「居けっ! そのまま押し潰せっ!」


 僕に向かって天井を這い動くシーリザードに指示が飛び、天井からお腹を下にして飛び降りて来る。まあ、事前に指示が聞こえたし、跳んで避けた後で斬れば良いやと力を込めた足が飛び散っていた粘膜で滑った。


 ヤバいっ!? 咄嗟に受け身は取ったけど、仰向けになった僕にシーリザードが迫る。そして、巨体が地面に激突した轟音が洞窟内部に響き渡った。



「……ギリセーフ。下敷きになってたら拙かった」


 転がって移動したお陰で直撃は避けたけど体中に粘膜がくっ付いてベタベタだ。髪にもべったり付いたし、飛び散った石ころがぶつかって結構痛いし。その上、そろそろお腹が減って来た。



「……さっさと終わらせる」


「何してやがる! さっさと食い殺せっ!」


 大口を開けて迫り、僕を追って首を動かしながら噛みついてくるのを避けて行く。じれたのか足に力を込め、大口を開けて飛び付いて来たのに合わせ、緋鋼を握り締め前進した。腹の下をスライディングしながら通り過ぎ、真上の腹に刃を振るう。最後には転がり出るみたいにして顔面に迫った尻尾を避け、シーリザードは着地を失敗して転がった。


「浅かったかぁ……」


 あんな体勢じゃちゃんと振るえなかったからか、またしても皮を少し切り裂いただけに終わる。でも、水を纏った刃が触れた部分の粘膜は固まって粘度が無くなってるし、次同じ所を……お腹だし、どうやって斬れば良いんだろう?


 流石に同じ方法は通用しないよね。向こうも僕を警戒しているだろうしさ。……痛っ! 思ったより肩へのダメージが酷いみたいだ。脱臼や骨折の感じはしないけど、痣くらいにはなっているかも。


 僕が肩を押さえると振り向いたシーリザードが口をモゴモゴと動かす。またレッサーシーリザードを出すのかと身構えた瞬間、口が開いて猛烈な勢いで舌が伸びた。咄嗟に反応して避けた僕が居た場所を通り過ぎた舌は岩壁に当たる。固そうな岩壁の一部が砕けて罅が広がっていた。アレを食らったら流石に拙い。


 引き戻されて行く舌。縮む速度は伸びる速度に比べて遅いけど、それでも中々の速度だ。多分蛙やカメレオンみたいに獲物を捕まえるのにも使っているんじゃないのかな? 僕はそんな事を思いながら手を前に突き出した。


「フレイムジャベリン!」


 さっき見えた口の中は体表と違って粘膜が無い。つまりは熱への耐性が無いって事だ。舌が口の中に収まって口が閉じられる寸前、飛び込んだ炎の槍が内部で高熱を撒き散らす。口や鼻の穴からも火を噴き出して悶え苦しむシーリザード。アレで死なないとか頑丈過ぎるし、少し哀れにも感じたよ。だって凄く苦しそうなんだから。


「シャァアアアアアアアアッ!!」


 でも、向こうはダメージが大きいけど完全に怒って唸声を上げる。息も荒く身を震わせたかと思った瞬間、動きが更に激しくなって粘膜が塊で飛んできた。一抱え出来そうな量の粘膜を次々に避けて行く中、シーリザードの異変に気付く。体を覆う粘膜が大分少なくなって来ているんだ。少しずつ増えているけど再生が消費に追い付いていない。


 なら、今なら結構効くよねっ! 大きな塊を前進で避け、シーリザードに向かって刃を振るう。一瞬肩が痛んで狙いが逸れたけど、構うもんか。このまま放ってやる!


「エアスラッシュ!」


 さっきは分厚い粘膜や皮や脂肪に防がれて大したダメージじゃなかったけど、今度は至近距離から放った。鎧となる粘膜も薄くなっていて、飛ぶ斬撃は左側の前足を切り落とす。ちぇっ! 本当なら右前足の輪っかを狙ったのにさ。でも、この一撃は大きいぞ。


 流石にダメージが大きかったのかシーリザードは絶叫を上げるけど、残った右前足の爪で襲い掛かって来た。左前足が肘の辺りから失われているから前のめりだけど鋭利そうな爪は長い。避けた時に髪の毛が数本掠って切り飛ばされてしまう。あー、本当に厄介! こんな奴、本当ならお祖父ちゃん達に倒して貰えれば楽なのにさ! まあ、今不在の人を頼っても仕方がないか。


 苛立ちからか狙いが雑になって力任せに振るわれる爪を避け続けると、今度は大きく振り上げて勢い良く振り下ろして来る。僕は避けず、敢えて真正面から緋鋼を振るった。



「はっ!」


 硬質な物が地面に落ちる音がして、切り落としたシーリザードの爪が数度跳ねる。腕を振るった姿勢のまま固まるシーリザード。僕は更に前進し、頭に向かって真上から刃を振り下ろす。大した抵抗もなく刃が通り過ぎた。絶叫を再び上げて仰け反った瞬間、露わになった腹を再び切り裂く。今度は手応えがあった。



「……終わったね」


 腹と頭の傷は粘膜じゃ塞ぎ切れないのか地面に大量の血が流れ出しているし、大分効いたみたいだね。僕も避けきれなかった尻尾が左肩に当たって結構痛いし、柄を握る手が震えているけどさ。じゃあ、油断せずにトドメを……。



「何やってんだっ! 死ぬまで暴れ続けろっ!」


 確かにシーリザードは大きなダメージを受けた。だって内蔵の一部が露出する位だったんだ、当然だよ。でも、操られているからか口から血を吐いて、はみ出した内蔵を引き擦りながらも動き続けている。


「……」


 僕は迫り来るシーリザードに刃の切っ先を向け、頭上に振り上げた。


 この世界ではモンスターと獣は別物で、人類にとっての脅威や仇敵といった扱いだ。きっと、この世界の人が今のシーリザードの姿を見ても同情なんてしないんだろうね。でも、僕はこの世界の出身じゃない。目の前の存在は品詞の体を無理に動かさせられている哀れな存在に過ぎなかった。







 だから、今すぐ楽にしてあげる。こんなの全然優しさなんかじゃないと思うけど、僕にしてあげられるのはこれだけだから。本当は人前では控えろって言われているけど、確実に殺してあげられるのはこれだけだ。


「ホーリーセイバァアアアアアアアアア!!」


 緋鋼を中心に形成される光の刃は洞窟内を照らしながら立ち上り、振り下ろせばシーリザードの肉体を両断する。地面にも斬激の痕跡をまざまざと残して光の刃は消え失せ、僕はシーリザードの死骸から黒い輪っかを取り外した。だって、死んだ後もこんなのを付けておく必要は無いじゃないか。


「静かにお休み。……ごめんね」


 開いたままの目を手で閉じさせ、付着した粘膜を服で拭うと呆然とこっちを見て立ち尽くす男達に視線を向けた。


「……ねぇ」


「ひっ! こ…降参だっ! 降参するから助けてくれ」


「も…もう抵抗しないからよ……」


 ……うーん。今の僕ってそんなに怖く見えるんだろうか? あんな大きなモンスターを両断した以外で怖く見える所というと、返り血で服や顔が汚れている所くらいだけど……。


 いや、それで十分だね。あれだけ自信があったモンスターだし、人の命を奪うのに抵抗がなかったみたいだから、僕も同じだと思われているのかも。


「いや、別に殺しはしないよ。でも、話はちゃんと聞かせて貰う……っ!?」


 からね、と言おうとした時、背筋に寒気が走った僕は柄を強く握り締める。さっき感じた気配、あれは何処から感じた? あの禍人、ローズリンデと同じ人でも獣でもない何かの気配、禍人の気配を確かに感じたんだ。        


「……なあ、おい」


「ああ……」  

                       

 気配の出所を探ろうと意識を集中した僕が自分達から意識を外したと察したのか忍び足で去ろうとする二人。でも、目の前に土の壁がせり上がって邪魔をした。


「璃癒さん、二人が逃げちゃいます!」


「……っと、危なかった」


 禍人への警戒も必要だけど、この二人や、繋がっている禍人の情報も必要だ。今まで誘拐された人達の捜索に役立つだろうしね。でも、僕って拘束系の魔法は使えないんだよね。ロープの代わりも服ぐらいだけど、僕達の服は論外で、この人達を脱がせるのも抵抗があるし……」


「フィーラさん、相手を眠らせる魔法とか使えるかい?」


「えっと、さっきので魔力が殆ど残っていなくって……」


「じゃあ、殴って気絶でもさせるしかないか」


 拳を向けたら身を竦ませたけど、ペラ君は気絶だけで拘束されてなかったし、必要な物を置いていない君達が悪いのさ。ってか、そっちは僕を殺そうとしてたよね?


「大丈夫だよ……多分。貧乳って罵った事はそんなに怒っていないから。精々怒髪天って位だからさ」


「いや、それって怒り心頭って……ぐぎゃっ!?」


「絶対キレて……おぐぅ!?」


 だから僕も遠慮せずに二人を殴って気絶させる事にした。これで連れ帰れば事件は解決に向かう……と思ったんだけど、世の中はそんなに甘くないか。



「……来たね。偶々近くを通ったとかであって欲しかったよ」



 天井をすり抜けて熊のヌイグルミが落ちてくる。地面を転がったヌイグルミは二本足で立つと土埃を払い除けて僕を見る。此奴だ。此奴こそがさっきの気配の出所だ。


「ハッハー! ちょいとアンラッキーな気配を感じて来てみたらサプライズとは驚きだぜ。まさか勇者、それも未熟な段階のと会えるなんてな」


 嬉しそうに笑うヌイグルミの腹が割け、溢れ出した綿の奥に黒い球体があって、中心に存在する赤い目と視線が重なった。






「奇跡的な確率で娘と再会出来たんだ。ハニーにもあの子を抱き締めさせてやりたいんでね。悪いが……此処で死んで貰うぜ!」


 内部からヌイグルミの布を突き破って黒い腕が現れる。完全に露わになったのは黒い球体に赤い単眼と無数の腕が生えた異形の姿だった。



 やれやれ、一難去ってまた一難。これは少し疲れる程度じゃ終わりそうにないなぁ……。


 でも、どうしてだろう? あの禍人からは誰かへの愛とか悲しさとかを感じるんだけど。お祖父ちゃん達が隠している何かが関係しているのかな?

 


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