魅惑の聖女
「婚約者に立候補だとっ!!?やっぱり不貞ではないのか?」
ローア殿下がツバを飛ばす勢いで喚いている。それに引き換え、ジョージ様は相変わらず、澄ました顔のままである。
「殿下、そこは違います。ちゃんとレミア嬢が婚約解消したのを確認してからなので。それに、いま口説いている最中なので、人聞きが悪いことを言わないで頂きたい。彼女との関係を大切にしていきたいので」
「なっ、なっ、なん、……」
ボンとすっかり赤い銅像と化して、言葉にならない状態のレミア。
「何かな?レミア嬢?」
ん?と愛おしそうに顔を覗き込んでくるジョージに
「な、なんなんですの〜〜!!!聞いてませんわ!!」
「ごめん。ちゃんと後で改めて口説くから。」
ニカッと笑うジョージ様は!絶対に確信犯である。
「おいっ!!俺を無視していちゃつくなっ!!どういうことだ!!婚約解消って」
イライラした様子のローア殿下が、また人のことを指差しながら、怒鳴りつけてくる。
「そこまでだ」
背後から第三者の存在が、騒動の制止にかかった。バッと皆が振り向くと、そこには王様、王妃様、それに王様の後ろに宰相の父が、ゆっくりとこちらに歩んできている。
「父上!!」
「ローア。これは何の騒ぎだ。」
「はい。聖女アミーリアを虐めるレミアに婚約破棄を言い渡し、かわりに聖女アミーリアを新たな婚約者にしようと思っております。」
キリッと真面目な顔で言い切るローア殿下。それをうっとりとした表現で見つめるアミーリア嬢。2人は完全に王様に認められるものだと信じている様子だ。
「本当に愚かだな」
王様がため息を吐くと同時に、低い静かな声でいう。
「アミーリア嬢。前へ」
「は、はい」
緊張のためか、若干裏声でアミーリア嬢が王様の前まで近づいた。
「これを。」
王様の指示でアミーリア嬢の左手に鈍く輝く銀の腕輪が着けられた。
それと同時に
「ぐおぉぉーーー」「ギャーーー」「あぁぅ゙ぅ゙ぅ゙」と、うめき声があちこちから湧き上がった。ローア殿下も頭を両手で抱え込み、「ゔぅ゙……」と両膝をつきうずくまってしまった。
一体何が起きたのだろう。アミーリア嬢も理由が分からず、キョロキョロとあちこちを見て戸惑っている。
「これは王家に伝わる魔法封じの腕輪だ。アミーリア嬢、そなたは魅惑の聖女。その力が悪しき事に使われた場合に、封印する為の腕輪だ。魅惑の力は、戦時中であれば、皆の心を統一する為に役立つ力であるが、今は平穏の時。そなたの聖女の力は必要ないと判断した。」
「なっ……そんな……」
アミーリア嬢は目を見開き、放心状態である。
「アミーリア嬢。そなたは自己の為に力を使っていたな。そのために多大なる影響が出ている。よって、そなたは今後、北の修道院で己を磨くがよい。」
「ま、待ってください!!そんなっ!!修道院ってどういうこと?!私はヒロインなのよ!!ローアと結婚して、お城で優雅に暮らすハッピーエンドじゃないのっ!!!??こんなの、おかしい!!」
アミーリア嬢がまたよくわからないことを叫びだし、今度は私を振り返り
「レミア!!あんたも転生者なんでしょ!?どうしてくれんのよ!!原作と全然違うじゃないっ!」
私に掴みかかってきたところを、ジョージが華麗に避けるように庇ってくれた。その隙に、近衛騎士にアミーリアは取り押さえられている。
「ちょっと、離しなさいよ!!」と暴れているが、騎士の力には敵わず、解放されずにいる。そんな様子を厳しい表情で王様が見つめ
「魅惑の力を使われた者は、強度の依存症状がでていたと報告がある。それが今、強制的に中断され、中毒症状が出ている。復帰するにはかなりの療養が必要になるだろう。そなたはその責任もとるか?」
それを聞くと、ピタっとアミーリア嬢の動きが止まった。「………………」下を向いて俯いてしまった。
「連れて行け。」
そのまま、アミーリア嬢は近衛騎士に連れられて会場を後にした。
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