長い1日でした
「もし聖女の中毒症状が出ているようなら王家に申し出てくれ。しかる医療制度のもとで療養が必要になる。」
さて、と今度は王様が、うずくまる殿下と私の方を見て言う。
「ローアは療養が必要となる。レミア公爵令嬢との婚約は、以前から公爵家からの要望により、既に婚約解消済み案件だ。聖女の対策が優先になっていたため、レミア嬢には迷惑を強いた。……申し訳なかった。」
一国の主が、臣下に頭を下げるだなんて、異例の事態だ。アワアワと私は慌てながら、
「陛下。滅相もございません。きちんと手厚い慰謝料などご配慮頂きました。こちらこそ至らなく、申し訳ございません。」
陛下も私も、ローア殿下を悲しそうに見やる。もっと早くに対応出来ていたならと悔やまれる。王が合図をすると、医療班の方々が症状が出ている人々を会場外へと案内を始めた。それなりの人数が聖女の力に影響されていた。とくにまだ若い年代、学園関係者が多そうだ。
「騒がせたな。今日は建国記念日パーティーだ。王家より特別なワインを用意した。皆のもの存分に楽しんでくれ。」
そう言うと、従事の方々がワインを振る舞いだし、止まっていたダンスの音楽もまた再開しだした。
王や父も、その挨拶ととも裏方へと姿を消した。きっとこの後も聖女関係の処理や報告に追われるのだろう。
これで全部終わったのだろうか……私はまだボーッとした状態でいた。アミーリア嬢は、私に向かって、テンセイシャとか言っていたが何のことだろうか……ローア殿下はかなり苦しそうだった。ずっとアミーリア嬢の近くに居たのだから、症状も強いのかもしれない。頭のなかはグルグルと、忙しくない動いたままだった。
「レミア嬢、大丈夫かい?」
隣にいるジョージ様が心配そうに問いかけてきたので、私はハッと意識をパーティーへと戻した。
「……色々ありまして、正直まだ……」
「……そうだな。今夜はゆっくりと休むほうが良さそうだ。馬車で送ろう」
ジョージは最後まで献身的に公爵家まで送り届けてくれた。
ボスン……レミアは自身のベッドにダイブした。
今夜で決着がつくことは分かっていたが、そんなレミアでも終わった直後は放心状態だった。
何だか気持ちが、落ち着かないわね……。枕を抱え込み、ベッドにゴロゴロと転がりながら、視界の端に先ほどまで着ていたドレスが目に入る。ジョージ様が私にと用意されたそれは、キラキラと眩しく輝いて見える。
婚約者に立候補すると言っていた……あとでちゃんと口説くとも………さっきはビックリしすぎて、全然返事も出来ずにいた。帰りの馬車でもとくにその話題にはならなかったし、聖女騒ぎのせいで、スッカリ忘れていたが、ジョージ様とのこと……真剣に考えないとだわ。
私はそっと起き上がり、『幸せノート』を机から取り出す。そこには自分に大切なものが書き込まれている。
『甘いものは、笑顔のもと』『自分に嘘はつかない』『笑顔は伝染する』『好奇心を忘れない』『自分にご褒美』『味方を大切に』『勉強のときにはアーモンド』『疲れたときはチョコレート』『眠れないときはミルクはちみつ』『気分を上げたいときはシュークリーム』『気合をいれるときは肉・肉・肉』…………
パラパラと読んでいた。今夜は眠れそうにない……。
『眠れないときはミルクはちみつ』
ホットミルクに、プーソン村のはちみつを一匙……。今夜はちょっとご褒美に、チョコチップクッキーをつけて貰おう。
こうしてレミアの長い1日が終わっていった。
お読み頂きありがとうございます。
いよいよ残り1話になります。最後までお付き合い頂けたら嬉しいです




