ローア殿下
今日であの忌々しい女と婚約破棄できる。
そうすれば、愛しのアミーリアと、正式に婚約することができるんだ。アミーリアは聖女だ。王子である私と婚約することで、国の為にもなると、きっと父上もアミーリアのことを認めてくれるだろう。
そもそもレミアとは政略結婚だった。とくに今までは不満もなかったが、アミーリアに出会ってから、俺の世界は変わった。
アミーリアは、表情が豊かでリアクションに裏も表もない。素直に気持ちを表現してくれるから、とても居心地がいい。
それに、まだまだ貴族社会が新鮮なのか、教える度に「出来る殿下って凄い」「殿下も努力家なんですね」っと絶賛されるので、悪い気はしない。
今までは、「これくらい殿下なんだから出来て当たり前」だと自分も周りも思っていたことも、アミーリアは「凄い」と認めてくれることが、新鮮だったし、嬉しいと思ったんだ。
そんな事が何回か続くと、段々とアミーリアに惹かれていく自分に気付いた。それを自覚したと同時期に、アミーリアの側にいると安らぐ気持ちになり、離れると身体が重くなる症状がでるようになった。気付いた時には、アミーリアなしではイライラしてしまう。
レミアも、両親も、最初はアミーリアとの距離が近いと五月蝿かったが、最近ではそれもなくなりアミーリアと過ごしやすくなった。
逆にレミアが、アミーリアに対してイヤガラセをすると言うではないか。教科書がなくなったり、ノートが破られたり、最後は階段から落とそうなど………そんな卑しい心の持ち主と婚約してるだなんて、虫唾が走る思いだ。
建国記念日パーティーには多くの貴族が集まる。そこで、いかにレミアが非道であるか見せしめ、婚約破棄する計画を立てた。
本来ならパーティーに向けて、婚約者にドレスやアクセサリーなど一式用意しなければだが、俺はアミーリアに用意した。もちろん、当日もアミーリアをエスコートする。
レミアには直前に一報出しておけばいいだろう。俺からのエスコートもなしに、侘しく会場にいるだろう。アミーリアを虐める卑しい女には、惨めな姿がお似合いだろう。
俺色に染め上げたアミーリアと、一緒にダンスを踊れば気分が高揚する。ダンスの最中に、アミーリアが顔を寄せて、「ローア、今日から私が婚約者になれるのよね?」と、可愛らしく微笑む姿は、まるで天使のようだ。
「あぁ。レミアとは婚約破棄し、アミーリアを俺の妻に。どうだい?なってくれるかい?」
「もちろんよ。嬉しい〜ありがとう。ローア」
無邪気に抱きついてくるアミーリアを抱きとめ、早速レミアを呼び出す。
「レミア・モーガン。何処だ?!」
「レミア。出て来いっ!!」
「早くしろっ。レミアは何処にいる?!」
会場に向かってレミアを探すが、何処にも姿が見当たらない。クソっ!!怖気づいて逃げたのか?
「レミア・モーガン。さっさと出て来い!!」
「レミア様〜。ひどいです〜。このまま逃げるつもりですの〜?」
「レミア。雲隠れするつもりかっ!!何処だ!!」
「レミアさまー!」
「お待たしましたわ。私をお呼びになった?」
出てきた女性をみると、ぷっくりとしていて、何処からどう見てもレミアのはずがない。ふざけてるのかっ!!?身の程知らずの女もいたものだ。
しかし、慌てたようにアミーリアが耳元で
「あれがレミア様なの。めっちゃ太って変わってるけど本人よ。」
「なにっ!!?レミアだと!!」
おい…………嘘だろ?……変わりすぎだろ!別人じゃないかっ!!あれがレミアなのか……?なにを食べればこんなに短期間に太れるのだ。
「レミア・モーガンで御座います。お呼びでしょうか殿下。」
そう言って、完璧なカーテシーをする。いつも澄ました顔をして、何でも完璧にこなす姿がレミアと重なる。以前は、そんなところも誇らしく思っていたが、今はアミーリアに対しての当てつけにしか見えない。
やはり、忌々しい女め。
「レミア・モーガン。貴様は、この愛らしいアミーリアに嫉妬して、陰険なイジメを行い、危害を加えるなど言語道断だ。王子妃として相応しくない。よって!ここに婚約破棄を言い渡す!!」
ふん。これで泣き崩れて縋ってくるなら、少しは考えてやらんこともない。アミーリアの侍女として、王宮にあがるのも許そうと思っていたのだが、自分はアミーリアをイジメてなどいないと訴えてきた。
白々しいこと、このうえないな。見た目も、内面も醜いとあれば、救いようがない。婚約破棄して正解だったのだ。
まだこのときの俺は何も分かっていなかった。戻れるならと、後悔することも知らずに。
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