みんなで食べると美味しい
息を整えるのに、水を1杯グッと飲み干したジョージは、皆を心配そうに見渡した。
「みんな怪我とかないか?大丈夫か?……遅くなってすまなかった。店が騒ぎになってると聞いて、急いで戻ってきたが、表に誰もいなくクローズになっているし………いったい何があったんだ?」
すると、店の前で勇敢に対応していた彼が、詳細を話し出した。
あの男は開店と同時にやってきて、クッキー等をいくつか購入して一度帰ったらしい。ジョージが帰ってから10分程たったくらいに、もう一度来店し、喚きながら店内に入ろうとしたので、入口案内の彼が入店を拒否すると、店へのありえない誹謗中傷を叫びだした。
あまりの騒ぎに、人がどんどん集まってしまい、色んな人が男の話を、内容はデタラメだとしても、耳にしてしまったことを、オーナーのジョージに「……店の評判が……すみません」っと謝罪した。
そして騒ぎが、どうにも収拾がつかないで居ると、レミアが来店し、相手が公爵令嬢だと分かると、男が逃げ去って助かったのだと、ジョージに告げた。
店員の話を聞いてる間、硬く強く拳を身体の横で握りしめ、静かに怒っているのがわかった。彼の話を、じっと黙って最後まで聞いたジョージは、
「騒ぎは君のせいじゃない。むしろ店を守ってくれてありがとう。本当に、怪我などなくて良かった。」
優しく労った。
すると今度は私の方に向き直り、頭を下げた。
「レミア嬢。助けてくれてありがとう。巻き込んで申し訳ない。」
あぁ。こうやって周りの人を大切にし、誠実な対応ができる彼は、やっぱり素敵だと思えた。
「謝らなくて結構ですわ。アンバサダーとして当然のことだもの。謝罪をというのなら、私、今から皆さんと此処でお茶がしたいわ。」
ジョージは、キョトンとした顔をしばらくしていたが、眉を下げ少し困ったように、はにかんだ笑顔で「君には……敵わないな」と呟いた。
「頑張った後には!ご褒美が大切なのよ。甘い物をみんなで食べましょうよ」
私が提案すると、さっきまで怯えて震えていた従業員達から、ドッと賛成の声が湧き上がった。
「よしっ。そうだな。今日はこのままクローズして、売れ残っては困るものは皆で食べてしまおう。さぁ準備するぞ。」
「はいっ!!」
みんなに笑顔が戻り、それぞれバタバタと準備し始めた。
良かったわ〜。みんな気持ちが明るくなって。
嫌なことは、美味しいもので幸せに塗り替えてしまえばいいものね。
早速、幸せノートに書いた『美味しく食べる』が役に立ちそうで、私もホクホクと胸の奥が温まる感じがした。
自分で提案しておいてなんだが……
こ、これは、マルコニ洋菓子店のバイキングなのではっ!!夢にまでみたシュチュエーションだわっ。。ズラリと並んだ、ケーキに焼き菓子の数々。好きに取れとばかりに置いてある。
私の手にはトングとお皿………。はわわっ。
どれも美味しそうだけど、お腹に入る分量は限りがある………口惜しいことに……。私の胃袋!今だけでいいから別腹を2個も3個も作ってしまいたいわ〜。
ん〜ん〜っと悩みながら、目をキラキラさせ、ケーキに完全にロックオンしている様子を、ジョージが愛おしそうに見ていることなど、レミアはケーキ選びに夢中で、全く気づくことはなかった。
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