トラブルは突然に
「あら?どうしたのかしら……?」
馬車が停まってから時間がたつが、なかなか御者から降りる準備が出来たと声がかからない。何だか周りが騒がしい気がする。
「……確かにおかしいですですね。」
ナタリーが怪訝そうな顔をして、そっとカーテンの隙間から外の様子を伺っている。
「お嬢様。外の様子を見てまいります。……お嬢様は危険かもしれないので、ここでお待ちください。いいですか。絶対にドアも窓のカーテンも開けちゃ駄目ですからね。」
そう言うと、ナタリーは馬車を飛び出していってしまった。ガチャリ。と外から鍵までかけて…。
「ナタリー!気を付けて!!」
思わず大きな声が出てしまった。
その後、1人でシーンとした馬車の中で待つ時間は精神的にキツかった……。
「外はどうなっているのかしら。……ナタリーは大丈夫かしら……。」
どのくらい経ったのだろうか…。体感としては、凄く長く感じた……時間的には恐らく5〜10分ぐらいだろうが、このまま永遠に続くようにも感じた。
コンコンっとドアがノックされ
「お嬢様。戻りました。」
ナタリーの声を聞いたら、ホッとして思わず涙が出そうになる。………良かったわ〜。
馬車の中に戻ってきたナタリーを上から下まで観察したところ、どこも怪我などないようだ。やっと身体の力が抜けるのを感じ、ほぅっと、ひとつ溜息がでた。
「何があったの?」
「それが……この先のマルコニ洋菓子店の前で、どこかの貴族が揉めてるようで……野次馬の人々がたくさん集まっていて、馬車がお店まで回せないそうです。護衛もあまりの人の多さに周囲の安全を確保しようと動き回ってますが……」
えっ!マルコニ洋菓子店でっ?
貴族って…ジョージ様は大丈夫なの??!!!
ジョージ様は伯爵当主でもあるが、しかし貴族間だと派閥とか色々しがらみがあるものだ。
「ナタリー。 私なら公爵令嬢として貴族相手に顔がたつと思うの。マルコニ洋菓子店まで行きますわ。」
ナタリーは眉間にシワを寄せ、難しい顔になって熟考し始めた。そして真剣な顔をして
「お嬢様。お嬢様の安全が何よりも大切です。護衛の者に確認してきますが、もし護衛が守りきれないと判断して場合は、意に沿わないとしても、すぐに帰ります。いいですね。」
「わかったわ。」
私の身に何かあったら、それこそ、護衛やナタリーまでも処罰の対象になってしまうだろう。私の我儘が原因で、彼らが責められてしまうのは不本意である。
ジョージ様のことも大切だが、私自身も、彼らも皆大切なんだから。決して無茶はしないと約束した。
馬車の外に出てみると、少し先にかなりの人だかりが出来ているのが分かる。そして、その騒動の中心で誰かが何か喚いているのが聞こえる。
護衛が私の前後左右に配置され、その中心に向かっていくと、私達に気付いた周囲の人々が場所を開けるようにして、道ができた。そして原因となっている人が見えてきた。
あれは………




