◯6ー3 “アレ”の正体はまさかの!?
一体"アレ"ってなんなんだい!?
最近よく聞いていた、”アレ“。
俺の耳にはこの言葉がよく残っていた。
ついに正体が分かる。………なんかワクワクするな。
「“アレ”っていうのは…………何なんですか…?」
「“アレ”の正体…………それは……………」
ゴクリ─────────────
俺は息を呑む。一体、どんなものなんだ!?
「“サマー・ディザスター”………………」
「サ、サマー・ディザスター………!?」
何とも厨二心をくすぐる名前が出てきた。
直訳すると、夏の災害。何ともかっこいい!
………俺っていつまで厨二病なんだ?
さすがに最近、自分でも痛くなって来た。
「それってどういうやつなんですか?」
「サマー・ディザスターっていうのはこういう暑い気候の時期に起こる症状のことよ。症状例で言うと………軽いものだとめまいや吐き気、重いものだと意識障害………最悪死ぬこともあるわね」
「ひぇ~!めっちゃ怖いじゃないですか!」
サマー・ディザスター。名前の通り、恐ろしい症状だ。
こんな症状に罹ったら……………と思うとゾッとする。
「毎年……こういう時期はこの症状の患者が多い。一番、救護の仕事で忙しい時期かもね」
「君も罹らないように気をつけるんだぞ!」
「は、はい!」
……………………よくよく考えてみたら、この症状って────熱中症じゃないか?
この世界ではすっげえ怖い名称になってるな……
確かに熱中症は怖い。“ディザスター“と言うのも、あながち間違いではないかもしれない。
………そういえばあいつ(ミナトの友達)もかかってたな。めっちゃ辛そうだった……
[あいつを知りたい人!プロローグ見て!ちょこっと出てるから!]
名前が違うにしろ、罹らない方がいい。
「よし、一旦対処はしたわ。安静にしておけば治るはずよ」
「店長さん!ありがとうございます!」
どうやら治療が終わったようだ。
倒れていた男性は死ななくて済んだらしい。良かった。
────────────────
数時間後。
「死ななくて良かったわ」
「店長さん!本当にありがとうございました!」
倒れていた男性は、無事起きた。
結構元気そうで良かった。
「じゃあ、お大事にね」
「はい!」
そうして男性二人は頭を下げて帰っていった。
それを俺たちは見送った。
「ふぅ……………………」
「お疲れ様です!」
「やっぱり、重いのを治すのは疲れるわ…………」
リルアさんはかなり疲れているようだ。額から汗も流れている。
救護は大変だ。俺には到底できないだろう。
「リルアさん、重い奴だったのによくあんな短時間で治しましたね!」
「まあ、もう慣れてるし………………」
「多いって言ってましたけど、毎年どのくらい来るんですか?」
「まあ1000以上は…………?」
「えっ!?すごいですね!」
思ったよりすごい数字だ。
お店のこともあるのに………さすがリルアさんだ。
「でも患者の数はもっと多い。他の救護の仕事の人も大変よ」
「そうですよね…………………」
この世界でも、医療界隈はブラックらしい。
………現実に帰っても、絶対医療系の仕事はやめとこうと思ったら瞬間だった。
「というか、サマー・ディザスターが来たって事は、もう“夏”か………」
「そうですね…………はぁ、夏は嫌だな」
どうやら、この世界にも夏という概念はあるらしい。
季節があるなら、本当現実と変わらない環境で生活ができそうだ。
でも、言った通り俺は夏が嫌いだ。
理由は………イチャイチャカップルを目に見ることが増えるから。
…………ただの俺の嫉妬じゃないか。
その時──────────
「…………………」
「な、何ですかリルアさん。近いですよ!?」
リルアさんが俺に近づいてくる。いきなりどうしたんだろうか?
「“サマー・ディザスター”は覚えてないのに“夏”は覚えてる…………何で?」
「え」
………これは結構まずい雰囲気だ!
まさか、この世界では夏とサマー・ディザスターって知名度一緒くらいなのか!?
「ねぇ、何で?もしかして……………」
じわじわとリルアさんが距離を詰めてくる。
その目は、初めて会った時の鋭い目をしていた。
(うわぁ、あの怖い目だ!マジで怖すぎる!)
今ならこの目を向けられていた黒月の奴らの気持ちも分かる。
「いいから、答えて。3秒だけ待ってあげるから」
「あっ、え……」
「3」
カウントダウンが始まった。
このカウントダウンは………俺が終わりへと向かうカウントダウンだ。
(どどど、どうしよう!正直に言うか?でも…………)
「2」
俺は考えを巡らせる。
その間でも、カウントダウンは待ってくれない。
(………正直に言ってもダメ、黙り込んでもダメ。なら!)
「1」
カウントダウンが1になったところで…………
「あ、え~っと!夏のことは覚えてたんですよ!」
俺は口を開く。
俺がとった行動は……………言い訳をすることだった。
…………相変わらず酷い言い訳だ。もう少し上手く言えなかったんだろうか?
「……………………………………」
数秒間、沈黙が流れる。
(ど、どうなっちゃうんだ!?頼む、バレないでくれ!)
「………それなら何ですぐ答えなかったの」
「リルアさんの目つきが怖かったから、答えづらくて…………」
ここは嘘をついておく。
「そう…………目つきが怖かったのはごめん」
「別に大丈夫ですよ」
「……というか、ミナトが嘘をつくわけないわよね。メリットがないもの」
「は、はい!そうですよ!」
「疑ってごめんなさいね」
………どうやら乗り切ったようだ。
久しぶりにこんなピンチに陥った。本当、油断したらいけないな。
俺は嘘をついてここにいる身だということを忘れないようにしよう。
「それより、夏は怖いわよね。一番人が死ぬ時期だもの」
「そ、そうですね………」
「ミナトも気をつけるのよ。知ってる人が死ぬのは私、嫌よ」
「は、はい!気をつけます!」
聞いたところによると、この世界では夏は恐怖の対象らしい。
死ぬ数も一番なのか。大体サマー・ディザスターのせいなのだろう。
確か現実では…………冬だった気がするが。
1番の理由は、New year’s silent killer………。別名、餅だろう。
この名前はめちゃくちゃかっこいい!
…………どうでもいい話をしてしまった。
「あ、そうだ。ソルナにサマーフェスティバルに出ること言ってくれた?」
「………まだ言ってないです」
そういえば『言っておいて』って言われたけど言ってなかったな。
「じゃあ、今から行ってくれるかしら?」
「はい!分かりました!」
カランカラン──────────
「じゃあ行ってきますね」
「ええ、お願いね」
そうして俺は店を出て、ソルナさんのいるギルドへと向かうのだった。
──────────────
「………………はぁ」
俺が店を出た後、リルアさんは考え事をしていた。
(ミナトがそんなことをする子じゃないのは、一緒にいるから分かってる。でも………)
「やっぱり引っかかるわね………ちょっとマークしておくか。気は乗らないけど」
リルアさんの俺への疑いが生まれてしまった。
どうか、バレないでくれ。バレたら確実に…………俺は死ぬ。
リルアさんは………徹底的にやる人だ。
俺の未来は結構、アシュアさんやソルナさんにかかってるかもしれない。
あの人たちは俺のことを信用してくれているだろうし、ちょっとは味方してくれるだろう。
………………………多分。
まさかの正体は熱中症だった!?意外だった?それとも予想通り?それにしても………久しぶりに記憶喪失を疑われた!やっぱリルアさん……勘が鋭い!これからバレないように頑張らないと!じゃあ次回もお楽しみに!感想評価よろ〜




