◯1-1 異世界の洗礼と理想的な出会い
本編1話目!
これからも章ごと、節ごとに分けて投稿する予定!
翌朝。
「…………………んあ?」
頬を通り抜ける冷たい風に吹かれながら、俺は目を覚ました。
(なんか……変だな…………?)
布団のぬくもりも感じなければ、うっとおしいアラームの音も聞こえない。
違和感を覚えた俺は、ゆっくりと上半身を起こす。
「………………………は?」
そして、立ち上がって見えた光景に俺は戦慄する。
そう、目の前に広がっていたのは………見慣れた自分の部屋ではなかったのだ!
周囲にら木々が生い茂り、頭上からは鳥の鳴き声がよく耳に響いている。
どうやら、森の中にいるらしい。
俺の脳の処理能力は、完全に限界を超えていた。
(嘘だろ…俺、ガチで異世界に来ちまったのか!?)
いやいや、そんな事あるはずがない。
寝る前の妄想がまさか現実になるなんて──────誰が想像できるだろうか。
「ちょっと異世界来た時のあれ……やってみるか」
──────むぎゅっっ
俺は自分の頬をつねる。
「痛ってぇ!!」
思ったよりも痛かった。
少し強くつねりすぎてしまったらしい。
だが、どうやらここは現実で間違いなさそうだ。
「…………本当に異世界だ!よっしゃ~!」
俺は人生で一番と言っていいほど喜んだ。
憧れの異世界に来れたのだから当然の感情だろう。
「さて、異世界ライフを満喫しまくるぞ〜!」
アドレナリンが吹き出し、俺のテンションは最高潮。
……………だったのだが。
冷静に周りを見渡して俺はあることに気づく。
「待てよ………?森を抜けてみないと異世界は楽しめないよな……」
当たり前だ。
ここがどこかも分からないのに楽しめるはずがない。
「…………よし、一旦森を抜けよう!満喫するのはその後だ!」
そうして俺は森を抜けるべく、意気揚々と歩き始めたのだった。
─────────────────
「はぁ……はぁ………」
どのくらい歩いただろうか。
歩いても歩いても、景色は変わらない。
どこを見ても、目に入るのは木々ばかり。
そのうえ、足はすっかり疲れ切っていた。
「異世界に来れたっていっても………こんなしんどいのかよ!」
俺は簡単に楽しめる、モテれると思っていた自分の頭を叩く。
「もう無理だ………休憩しよう………」
ついに─────俺は体力の限界を迎えてしまった。
(何か座れるものはないか……?あっ!)
霞む視界のなかで、俺の目の前に入ったもの……それは、丸太だった。
「ラッキー!神様、ありがとう!」
俺は奇跡的に見つけた丸太に腰掛け、大きく息を吐く。
「ふぅ~長時間歩くのって案外きついんだな………」
肩で息をしながら、俺が疲れをとっていた時だった。
コツ、コツ───────
聞こえてきたのは規則的な足音。どうやら人が近づいていているらしい。
(誰か……来たのか。助けてもらえるかな……)
そんな淡い期待をして、俺は足音を待つ。
(どんな人が来るんだろうなぁ……どうせなら綺麗な人こい!)
そして木々の向こうから現れたのは──────
「君、どうしたの~?こんなところでさ」
後ろで結ばれた綺麗で長い黒髪に整った顔立ち。
スラっとした体型は容姿とは裏腹に少し鍛えられている。
一言で言えば、超絶美形な綺麗なお姉さん。
俺の理想をそのまま形にしたような人が、目の前に降臨したのだ。
「あっ、その、えっと………」
俺の脳の容量がキャパオーバーを起こす。
まさか本当に綺麗な人が来るとは思わなかったのだ。
「こんなところに軽装でいたら危険だよ!私みたいな人だったら大丈夫だけど」
お姉さんは注意喚起をしてくれる。
もしかして、ここって結構危険なのか……!?
「え、あ、え~っと………」
(ど、どうしよう……助けて欲しいけど……17の俺が助けてください、なんて惨めに懇願できるか……!?))
俺は疲れた頭をどうにかして働かせる。
でも、プライドも邪魔してかいい考えは思いつかない。
「ん?どうしたのかな?」
そんな俺の混乱を見かねて、お姉さんは首を傾げた。
そしてどうにかして俺が考えついた答えは─────
(記憶喪失ってことにすれば助けてもらえるし、この綺麗なお姉さんと一緒にいられるくね……?)
こんな馬鹿げた答えだった。
この時の俺は後々のことなんか考えちゃいない。
自分の欲望を満たすためだけに動いていた。
そして、俺はその考えをすぐ実行に移す。
「あ、あの…実は俺、記憶が………なくって」
それを聞いたお姉さんが俺に近づく。
少し、心配そうな顔をしてくれている。
「君、記憶なくなっちゃったの?」
「は、はい。気づいたらここにいて……」
「それは困ったね〜どうしようかな……?」
お姉さんが顎に手をやる。
どうやら、俺をどうするか考えてくれているらしい。
(………ど、どうなるんだ!?頼む!奇跡よ起きろ!)
心の中で必死に祈りを捧げていると、お姉さんがポンと手を打った。
「……よし!決めたよ!」
「ど、どうするんですか?」
「一旦、一緒に森から出て街に行こっか!」
「あっ…………えっ?」
「街に私の家があってさ~、そこに一緒に住んでる知り合いがいるから相談してみよう!」
「わ、分かりました」
………まさかの、また奇跡が起こってしまった。
今年の運、全て使い切ってしまったんじゃないか?
そう思えるくらいの、奇跡だった。
「それじゃ、行くよ!」
お姉さんが明るく笑いながら歩き始めた。
「こっちこっち!」
俺に手をブンブンと振ってくれるお姉さん。
「あっ!待ってくださいよ~!」
とっくに、足は限界なのだが………
だが、ついていかなかったら嘘をついた意味もなくなってしまう。
こうして俺は、足の痛みをこらえながら、理想通りお姉さんについていくことが出来たのだった。
果たして、俺はどうなってしまうのだろうか?
本編1話目、読んでくれてありがとうございます!
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