第9話 ギルド
「起きたか。ケンタ殿。」
「ああ、おはよう。パール。」
あの後当然二度寝した。
やはり布団は偉大だ。
ずっとベッドで寝ていたい。
でも、そんな悠長なことはしていられないようだ。
「今日はどうするつもりだ?」
「ああ、パールが言っていたように、今日はギルドで仕事を探す。ギルドの場所を教えてくれ。」
「だがどうする?ギルドといっても複数あるぞ。」
「そうなの?」
「そうだ。私が見ていない間に変わってしまったかもしれんが、ギルドは複数ある。トップのギルドは全部スカウト制だ。カネさえ払えば入れるギルドもあれば、無条件で登録できるところもある。もっとも、そういったところは冒険者の質もわるいし、仕事もあまりいいものとは言えないがな。」
「なるほど。パールもギルドに入っていたのか?」
「ああ。だが、敗北とともに永久追放された。おそらく私はもうギルドに登録できないだろう。ケンタ殿の実力で入れるギルドでなければ。」
「どんだけ壮大な戦いをしたんだよ………。俺でも行けるところとなると、無条件か。とりあえず、登録出来る場所に行こう。」
「それなら、城下町の広場へ行くといい。たくさんの勧誘が行われているぞ。大通りをまっすぐすすむと見えてくるだろう。」
「そっか、じゃあそこに行こう。頼りにしてるぜ。」
服を着替え、顔を洗い、朝食を食べる。
チェックアウトをして宿を後にした。
大通りを二人で歩く。
周りを見ると、本当に色々なひとがいる。
中にはカップルもいたので、ちゃんと爆散しますようにと願いをこめておいた。
昨日大量に金を使ったせいで、買いたい欲が心の中に渦巻いた。
でも我慢だ。今は金がない。
そういえば、働くのは初めてだ。
俺はバイトすらしたことがない。
しばらく歩くと、大きな噴水がある広場に出た。
たくさんの人が自己をアピールし、色々な人がスカウトをしている。
「なんか、緊張してきた。」
「大していいギルドに入れないことは確定しているから、そう緊張することはない。ケンタ殿の実力じゃ、底辺の底辺。名前も知られていないギルドにしか入れないだろう。」
「失礼な。でもありがとう。苛ついたおかげで緊張がなくなったよ」
「それはどういたしまして」
いつか見返してやるって思うも、絶対にできないんだろうなと諦めがついた。
諦めると楽だ。でも、諦めたくないこともある。
そこの境界線ははっきりさせておきたいものだ。
「あのー、ウチのギルド興味ありませんか?」
ギルド勧誘の女の子にパールが話しかけられた。
いや、その人の主人俺なんですけど。
だが、同じくギルド勧誘をしている男の人が割り込んだ。
「やめとけって。そいつ、敗北者だよ。敗北者パール。一昨年のギルド代表戦でギルドメンバーを陥れ、敗北に導いた戦犯だ。そいつをギルドに入れたら上位ギルドから袋叩きにされるぞ。」
「え、えっと、すみません、ギルド勧誘の話はなしってことで。」
二人は急ぎ足で何処かにいってしまった。
ふざけるなという思いと、本当にパールがやったのかという疑問が頭にうかんだ。
「パール、今の話…」
「……私はハメられたのだ。彼の話は真実ではない……だが、こんなにも話が広まっているとは。あやつはどれだけ……いや、すまない。私はこの場にはくるべきではなかったようだ。」
「あんなカンジ悪いギルド、入らなくて正解だよ。また他の方法を考えよう。」
そう言って帰ろうとしていたとき、どこからか怒鳴り声が聞こえた。
「お前らのような弱小ギルドに俺様がはいるわけないだろう!!!ギルドランキングにも乗っていないなんて論外だ!!出直してこい!!!」
「きゃあ!!」
女の子が突き飛ばされる。
ギルドの勧誘に失敗したようだ。
周りの人は一切気にしていない。
どうやら、この光景を当然だと考えているようだった。
「大丈夫ですか?」
偽善と言われようが、これはやったほうがいいことだと思った。
やらなかったら、俺は家族に顔向けできない。
見捨てても、救っても、どちらにせよいつか自分に還ってくる。
まあ、異世界のテンプレートでもあるからね。
「あ、ありがとうございます。」
手を取り、起き上がる。
「あの!、わたしハルといいます。実は、ギルド勧誘をしていて……助けていただいたうえで差し出がましく恐縮ですが、ギルドに入ってくれませんか?」
「興味があるな。詳しく教えてくれる?」
「はい!こっちです、ついてきてください!」
「ケンタ殿、私が入ったとしられれば、先程の彼らが言っていた通りになるかもしれない……また別の方法を……」
「見返してやろうぜ。パールのことを舐め腐っている全員。な?」
「……私の実力も見たことがないのに、ケンタ殿はどうして私を信じるんだ…?」
「そんなん、俺が仲間を信じないでどうして仲間から信頼されるんだよ。俺は、本気でパールと魔王を倒したいって思ってるんだぜ?たとえ、パールがどれだけ弱くたって、地獄の果てまで一緒だからな。」
「魔王を倒すですか!?本気で言っているの…?それにパールってあの…」
「ハル…だっけ?俺達はハルがここでやっぱやめるって言っても、恨まない。また違う方法を探すだけさ。だから、入ってほしくないっていうなら諦める。」
「……この際、もう誰でもいいです。わたしはおじいちゃんのギルドを再興させたいんです。」
「おじいちゃんのギルド?」
「はい。昔は有名なギルドだったんですが、ギルドメンバーの高齢化とともに衰退して、先日、最後の爺さんであるマツモトさんが息を引き取りました。私はギルマスの孫娘なんです。昔のような活気あふれるギルドにしたくて。つきました。ここです」
連れて行かれたのはおよそ人がいるとは思えない大きな廃墟だった。
いや、廃墟というのは失礼か。
「ここがギルド…?」
「はい!素敵なところでしょう?」
「あ、ああ。とても趣があっていいと思う。いまギルメンは何人いるんだ?」
「いません!お願いします。ギルドに入ってください。」
「そんな心配そうな顔しないで。ちゃんと入るから。」
パールの方を見る。
「ハルト殿が決めたことだったら私も異論はない。」
「ということで、今日からよろしくな。ハル。」
「ありがとうございます!どうぞ中へ。」
ギルドの中はおもったよりも清潔で、古き良き味わいを醸し出していた。
広い空間なのに誰もいないのが、時代の移り変わりを感じさせる。
ハルが受付に駆け込み、嬉しそうに立った。
「ようこそ、時の歌ギルドへ!!」




