第10話 力試し
「ようこそ、時の歌ギルドへ!」
心に厨二病を飼っている俺から言わせてもらうと、考えた人はよっぽどセンスがないのではないかと思った。
でも、いいギルドに入ったんじゃないかと思う。
「では、登録しますね。身分証を出してください。」
俺はポーチから身分証を取り出す。
ハルは受け取ると、専用の機械のようなものに入れて情報を入力した。
「はい。できました。確認してください。」
見るとライセンスの欄に時の歌ギルドという文字が追加されている。
「さて、登録できたことですし、力試し、してきませんか?」
「力試し?」
「はい。このギルドの恒例行事です。ギルメンみんなと手合わせして力量を測る。そして、それに応じてランクをつけるというものです。ランクにはFランク冒険者からSランク冒険者まであります。」
「でも、このギルドにはいま誰もいないって…」
「はい、ですので、私が戦います!」
「はっはっは、流石に俺より年下の女の子には負けないよ。」
「その実力、確かめさせてもらいます!」
中庭に行くと、たくさんの木で出来た武器があった。
たくさんの戦いの跡が壁に残っている。
俺は適当に木刀を取った。
ハルも同じく木剣を構える。
「私が立会人をつとめよう。ルールは相手が負けを認めるもしくは場外へ出る、および武器を失った場合に勝利とする。」
「悪いけど、年下だからって手加減しないぜ。」
「楽しみです!」
「よーい、始め!!」
俺は全力で横薙ぎで剣を振る。
それをハルはあっさりと半歩下がるだけで避けてしまう。
俺が刀を振り、ハルが容易に避けるという追いかけっこが始まった。
「はあ、ほああ、ひい、はあ、ぜえ、はあ……」
「ふざけているんですか?まさか、こんなに弱いなんて」
「ケンタ殿、私はお前が主で恥ずかしい」
「っるせえ、俺は剣術経験なんてな……」
ハルが攻撃を始める。
俺はあっさりと体に何発も食らった。
「痛いっ痛いっ、ま、参った、俺の負けだ降参降参。」
自分がまさか目の前の少女よりも弱いなんて考えもしなかった。
打撲してずきずきと痛む。
「どうだ俺のランクは」
「当然最底辺、Fランクです。」
「そんなぁ」
「パールさんは戦えるんですか?」
「無論。私はそこで無様に地面に這っている主とは違う。」
「では、力試し、やっていきましょう。」
二人が向き合い、武器を構える。
そういえば、パールが戦っている姿を一回も見たことがなかった。
「おほん。それじゃあ俺が立会人を務めます。ようい…始め!!」
刹那、ハルの姿が視界から消えた。
だがハルの放った一撃を、寸分の狂いもなくパールは槍で受け止めていた。
パールの反撃が始まる。
槍先から放たれる無数の突きは、ハルを一切近づけることなくじわじわと場外へと追いやっていく。
「っ…!『惑いの霧』!」
霧が辺りに立ち込める。
くそ、あまり中の様子が見えない。
『水の刃!!』
まだ戦いは続いているようだ。
「相性が悪かったようだな、小娘。『雷撃』」
「いたタタタ、参りました!降参です!」
「あだだだだだだ!?!?なんで俺も食らうんだよ!!」
「ケンタ殿、すまない。霧全体に攻撃をしたのだから、当然だろう」
「パールさん、すごいですね。すっごく手加減してもらっちゃいました。」
「あれ、手加減してたの!?」
「無論だ。私の技術は殺すための技術だからな。遊戯では使わん。」
「なんだか、小さい頃を思い出します。パールさんのランクはAランクです!実力の底が見えなかったので、いきなり最高ランクにすることはできませんが、高難易度クエストを受けることができるようになりました。」
「こんな少人数のギルドにもクエストはくるのか?」
「はい。先程申し上げた通り、先日までマツモトさんがまだ生きていらっしゃいましたから。彼は1ヶ月に一回ほどの活動でしたが、その毎回でSランククエストをこなしてきました。ですので、このギルドには定期的に高難易度のクエストが舞い込んできます!」
「どうしてハルはそんなに強いんだ?」
「それは、おじいちゃんたちが色々教えてくれましたからね。」
ハルの顔はどこか儚げで、寂しそうだった。
「またすぐに賑やかさを取り戻すよ」
「そうだと……いいですね。」
「きっとそうだよ。」
ハルを元気づけるように、自分に言い聞かせるように俺は言った。
言葉はまじないだ。
ネガティブなことを言えば、ネガティブな人間になる。
ポジティブなことを言えば、ポジティブな人間になる。
だから俺はポジティブに生きる。
だってそのほうがずっと楽で楽しいから。




