第8話 ノスタルジー
寝心地が悪くて目が覚めると、まだ日は登っておらず、辺りは薄暗かった。
時間は4時くらいだろうか。
隣の部屋をチラッと覗くと、パールはまだ寝ていた。
「ちょっと外歩くか。」
宿を出ると涼しい風が吹いてくる。
眠気が一気に無くなる。
大通りは昼間と違い、流石に人が少なかった。
夜道を独り占めしている、そんな気持ち。
「…この国の治安がどれくらいかわからないし、あんまり遠出するのはやめておくか」
この世界には、スマホもゲームもない。
ネットという存在もない。
魔法もスキルも特技もない俺から言わせてもらうと、この世界は完全に元の世界の劣化版だ。
この世界に長くとどまる理由なんてない。
一刻でも早く帰りたい。
「神殿とかで祈れば家に返してくれるかな?」
淡い希望だと思った。
あの女神のことだ。どうせまた理不尽な理由をつけて俺を貶めるんだろう。
俺は大抵の感情は寝ると忘れる。
友達と喧嘩した日も、次の日には怒りは収まってて、思い出すと腹が立つけど、ちゃんと仲直り出来た。
「そういえば、魔王っていうのは話が通じるのかな?」
よく考えてみると、俺は倒そうと思う相手のことをよく知らない。
でも、知りたいとは思わなかった。
知ってしまえば、情が湧いてしまうから。
倒せなかったら、俺は家には帰れない。
「もっと親孝行しとけばよかったな。」
星空が輝き、月が3個も空に浮かんでいた。
ほんのりと空が明るくなってきて、日の出を告げる。
夜風はまだ冷たく、流石に寒いと感じて宿に戻った。




