第7話 新しい仲間
俺が選んだのは、武人だ。
正直、あの中で一番期待値が高いのがあの武人だった。
普通異世界モノでは、美人な女奴隷を買って好かれてその子がめちゃくちゃ強いというのがお決まりだが、この世界は意地悪だ。
欲に負けて女の子を買って簡単に行くと思えなかった。
といっても、女の子をどう扱えばいいのかわかんないのもあるが。
「ほんのちょっと優しくしただけで無条件に好かれるなんてのは、創作物の中だけだよな」
武人は戦闘経験があるのが確定しているし、値下げされていた。
おそらく、世間からの評価が低かったのだろう。
彼自身も世間からの評価は敗北者だと言っていた。
つまり、世間体からの評価は低いが実力はちゃんとあるとも考えられる。
「キミに決めた。名前は何ていうの?」
「私を買うのか。変わった人間がいたものだ。…私の名はパールだ。」
手続きをして、パールを購入する。
先ほど案内してくれた人に、身分証から700万G支払った。
「血の契約を行います。少々、痛みますぞ。」
針で指を刺され、血が垂れる。
俺ももう15歳だが、流石に痛くて顔が歪む。
血が垂れてパールの脇腹にある紋章が光った。
「これにて、契約が成立しました。奴隷は主人に逆らえません。主人の命令は絶対です。そして当然、奴隷が起こした事の責任はすべて主人にあるのでご注意を。またのご来店をお待ちしております。」
正直な話、エルフや傷の少女を買おうかも悩んだ。
傷の少女に限ってはギリギリ購入することもできた。
だが、少女が買ってほしくないという話をしていたのと、3人も支えるだけの余裕が今の俺にはないということが難点だった。
「まさか、このような童に買われるとは。私を買ったからには、何か目的があるのだろう?」
「ああ、壮大な目的を持ってパール、君を買った。そう、俺の目的は、魔王討伐だ!!!」
「ほう、大層な目標を掲げたものだ。それで、仲間はいまどれだけいる?」
「パールだけ」
「…軍資金は」
「200万G」
「親は許可したのかね?」
「えーと、親はいないといいますか、会えないといいますか。」
「ふむ、私は買われる人を間違えたのかもしれぬ」
「フフフフ、パールがなんと言おうと、俺の決意は変わらないっ!地獄の果てまで付き合ってもらうぜ!」
パールが頭を抱える。
「そして、パールは何が出来るの?」
「…まさか、私のことを知らずに買ったのか…!?」
「強そうだったから買った」
「…そうか。私は武人。常日頃から戦を生業とする者。戦場では有名な槍使いだった。だが、ある時戦で敗れてしまい、その責任を追求され奴隷にまでなりさがった。というわけだ。」
「槍使いだったのか~。じゃあ、まずは装備を買いに行こう。」
「まて、本当に魔王を討伐しようと考えているのか!?」
目を見て、真剣に答える。
「ああ。俺は本気で魔王を倒そうと思っている。」
クソみたいな世界を変えるため。そして、家に帰るため。
おれは魔王を倒そうと決心したのだ。
「そうか。わかった。どうやら本気のようだ。童、名を何という。」
「鈴木健太。ケンタってよんでくれ。」
「ケンタ殿。私はパールだ。これから地獄の果てまでこの命を共にすることを誓おう。」
「頼りにしてるぜ」
そこから色々なものを揃えた。
208万あった軍資金はすっかり底を尽きて、残ったのは2万Gだけだった。
アイテムポーチ100万G、水・食料半年分20万G、テント・寝袋・サバイバル用品35万G、大蛇の槍30万G、パールと俺の日用品15万G、地図・コンパス1万G、簡素な防具5万G
「あんだけあった金が全部なくなっちまったよ」
「到底、旅をするには足りないな。だがいいのか?ほとんどの装備は私の装備ではないか」
「ああ、俺は一般人だからな。魔法も使えないし、運動も普段しないから非力だ。」
「まさか、ケンタ殿は魔石が…」
「そんな顔しなくて大丈夫だって。俺もともと魔法の才能なんてなかったし。武器や防具は使いこなせる人が使うべきだ。今日はそこの宿屋に泊まろう。そんで、明日はどうするか。何か、いいお金稼ぎの方法………そうだ!俺が、商人になるっていうのはどうだ?」
「ケンタ殿、商人はそう簡単なものではない。物流を読んで大量に仕入れ、そして自らより価値のある場所へ売りに行くのだ。読み書きも、計算もできないと出来ぬ。元手の金銭も足らぬだろう。」
「計算ならできるんだけど…たしかにな。なにか他に案あるか?」
「そもそも、私たちが金を稼ごうというだけで、その方法は限られてくる。」
「その方法って?」
「ギルドだ。ギルドに入り、そしてクエストをこなせば金が入る。私たちは今、戦う技術意外持っておらん。当然、戦って金を稼ぐ他なかろう。」
「んじゃあ、明日の予定はそれで決まりだな。」
宿で食事を終え、体を拭く。
お風呂はなかった。ただ、濡れたタオルで体を拭いただけ。
疲れたなーと思いながらベッドでうとうとしていると、パールが何かしゃべった。
俺はウトウトしていたせいで、うまく聞き取れなかった。
ぼんやりとした意識の中、俺は意識を手放した。
「ケンタ殿は本当に変わった人だ。私に命令をしようとしない。そして私の話をきちんと聞こうとする。それに、まだ未成年だ。いったいどんな人生を歩んできたら、あのような形になるのだ?」
部屋は静まり返っていた。ケンタの寝息が聞こえてくる。
「……私が親代わりになろう。立場は親とは言い難いが、彼は明らかに無理をしている。こんな場所で一人っきり。それがどれだけ辛いことか…」
決意がみなぎった。
「必ず、遂行しよう。そして、必ず守り切ろう。それが私に新しく示された、使命だ。」
久しぶりに闘気がみなぎっていた。
誰にも負けない。もう誰にも負けるつもりはない。
この命が果てるまで。




