第24話 虚実
「ん…ああ?」
冷たい地面の感触に、俺は意識を取り戻した。
目のピントがまだ合っておらず、ぼんやりと辺りを見渡す。
明らかに以上であった。
水面から出るように俺の意識ははっきりと覚醒する。
どうやら俺は牢の中にいるようだ。
床一面から紫色の光の粒子が昇っていき、塵になって消えてゆく。
「お、俺は…俺は…!」
「あれ、もう起きたんだね。」
声が聞こえた方を見ると、そこには一匹の灰色のスライムがいた。
灰色スライムはうねうねと動いたかと思うと、人の形を成す。
ただし、服や装飾品、肌も髪もすべてが灰色だが。
同時に、たくさんの混乱と疑問が頭に押し寄せてくる。
「初めまして。ボクは魔王軍軍事研究所所長のオヴァロだ。」
オヴァロと名乗ったそのスライムの、顔のパーツが顔をぐるぐると旋回する。
明らかに異質で気色悪い雰囲気に鳥肌が立つ。
逃げ出したいと思ってようやく、足につけられた枷に気がつく。
「逃げられると思ったかい。君が眠っている間に、君には細工をしておいたよ。」
彼(彼女?)の手には、懐中時計のようなものが握られていた。
それと同時に俺に付けられた首輪に気がつく。
触れてみるととても人の手では外せそうにない、硬い感触がする。
手が震える。
俺は…パールを殺して……エドを殺して。
夢だったのか…?
あのときのような万能感は一切感じない。
「少ない時間だが、君の記憶を投影させて見してもらったよ。実に興味深かった。元の世界、転生、そして何よりも”科学”。これはボクたち魔族の大きな進歩になる。」
「な…なあ!、俺は悪夢を見ていたのか?それとも、これは悪夢の続きなのか…?」
「……ああ、どうやらボクが君の記憶を見ている間、夢を見ていたようだね。君の記憶の断片から作られた拙い妄想。見ていて全く興味をそそられなかった。生憎、君自身には興味がないんだ。」
「一体いつから……いつからが夢だったんだ!?」
「……すばらしい記憶の礼に教えてあげよう。君たちが山を降りる頃には既にボクの術中だったよ。これで安心したかい?」
俺の心を見透かしたような発言に俺はドキッとする。
同時に、安心もしてしまっていた。
自分がやった過ちはなかったことになったんだ。
「ボクは知っているよ。君が何をしたのか。」
その一言で俺は凍りついた。
俺の記憶を見るということは、そういうことなんだ。
見られたくない部分も容赦なく暴かれる。
「では、もう一度眠ってもらうとしよう。意識があると、記憶が見づらいんだ。」
「お、俺を誘拐してると、俺の仲間が黙っちゃいないぜ?」
我ながら小者のセリフ。
でも、きっとパールたちなら違和感に気がついてくれるはず。
「残念だけど、助けは来ないよ。」




