第25話 ドッペルゲンガー?
僕が目を覚ますと、彼の背中で揺られていた。
そうだった。
確か僕が体調崩して、それから山を降りていたんだ。
ケンタの汗臭さはなぜか消えて、代わりに消毒液のような石鹸のような匂いがした。
不思議な感覚だ。
なんだかケンタの体は冷たくて、人間じゃないようにすら思えた。
もっとも、多分汗が引いただけだと思うけど。
「ありがとう。もう歩けるよ。」
「総ナノ~?ヨカッタ~★」
「!?!?」
いま、なんだか全然ちがう人だったような。
いや、でも眼の前にいるのは間違いなくケンタだ。
魔力もあんまり感じないし、見た目もケンタだ。
僕の気の所為だろう。
山を降りて暫く歩くと、ギルドが見えてきた。
「ボク、ここ知っテル~★」
「そりゃあ知ってるに決まってますよ。」
「あ~創ダッタ~ねッ!」
ケンタはやけに楽しそうに駆けていく。
よくあんな走ったのにまだ走る体力があるな。
そんなこと思っているとコケた。
「だ、大丈夫ですか?」
「ウウ…板ーイ!!」
怪我したのかと思って駆け寄るが、血は出ていないようだった。
あんなに走ったのだから疲れて当然だ。
「今日はつかれましたよね。ギルドでゆっくり休みましょう。」
「ウん。君はヤサシイー★」
ギルドの扉を開けると、いい香りが漂ってきた。
「あ、帰ってきた!おかえりなさい!」
彼女が調理場から顔を出して微笑む。
やっぱり彼女はかわいい。
「遅かったではないか。どこで道草を食っていたんだ。」
このパールという男はハルとは大違いだ。
悪い意味で。
それなのに実力はちゃんとあるのが少し癪に障る。
最初、彼と戦った時、意外と行けるかと思ったら全然そんなことはなかった。
見事に負かされた。
その洗練された戦い方には憧れを抱く。
「あ~ご半~?くれるの~★」
「ケンタさん、もう少しでできるので待っていてくださいね。」
「やッ他ー★ありがトう!」
「……何が合った?」
「いや、その、ケンタは僕を背負って降りてきたので、疲れてるみたいで…」
「ねえねえ、ナマぇ教えて~★」
「パールだ。私をあまり失望させないでくれ……」
パールは頭を抱える。
ケンタはキラキラと目を輝かせてパールを見ていた。
人は疲れるとこんな風になってしまうのか。
きっと半分は僕のせいだ。
そんなことを思っていると、料理を女神が運んできた。
「出来ましたよー。熱いので気を付けてください。」
「僕もいいんですか?」
「はい!ぜひ食べていってください。」
「いた打器マス~★」
みんなで食卓を囲む。
疲れた後の食事は体に染み渡る。
なんだかとても眠たくなってきた。
疲れがまだまだ残っているらしい。
あれだけの距離をケンタは毎日走っているそうだ。
あの弱さであれだけ頑張っているのは本当にすごいと思う。
僕だったらとっくに諦めている。
「それで、どうしてこんなにも遅くなったんだ?ケンタ殿がこんな風になってしまったのに心当たりはあるのか?」
そういえば、どうしてこんなに日が暮れるのが早いのだろう。
結構早めの時間にギルドを出たはずなのに、もどったときにはとっくに日が暮れて辺りは暗かった。
寝ている間にタイムスリップでもしたような気分だ。
「実は…」
僕は自分が疲れて倒れたこと、ケンタに助けてもらったことを話した。
当のケンタ本人は興味なさそうに食事に手を付けていた。
「ふふ。ケンタさんらしいです。」
「ン~おいシイ!ハルはスゴイ~根ッ★」
「ずいぶんつかれたようですから、今日はゆっくり休んでください。」
ケンタは4杯ほどおかわりしてソファーに寝転び睡眠し始めた。
パールは彼を二階へと連れて行く。
僕はと言うと、思ったよりも食べられなかった。
なんだか胃が縮んで食べたいのに食べられない感覚だ。
「僕は一度家に帰ります。また会いましょう。」
「夜道には気をつけて帰ってください!」
軽く見送ってもらい、僕は家へと向かった。
怒られるだろうか。
僕は恐る恐る家の戸を開けた。




