第22話 クライシス
ギルドに帰ると、何か違和感を感じた。
窓に飛び散った血がこころなしか広がっている気がする。
ところどころ穴が増えていた。
斬撃でえぐられたような穴だ。
悪寒を覚えた。
なにか、最悪な方向へと進んでいるような気がして。
俺はギルドの扉を開ける。
ひどい悪臭が俺の鼻を劈く。
目が離せない。
そこには、変わり果てたハルの姿と、呆然と立ち尽くすパールがいた。
「どけ!!」
俺はパールを押しのけ、急いでハルに駆け寄る。
その体は無惨にも引き裂かれ、当然息をしていない。
「嘘だ…」
死体を見るのは初めてだった。
喉奥からなにかが込み上げてくる。
「な、なにがあったんだ?答えろよ!!パール!!」
「あの女がやってきて、それで」
「なんでハルが引き裂かれて、お前は傷一つないんだよ!死ねよ…お前なんか死んじまえ!!」
「ケンタ殿…私はーーー」
パールがそう言い切る前に彼は自分の喉元を切り裂いた。
そのまま崩れ落ちるように倒れる。
「え…」
俺はようやく思い出す。
パールが俺の奴隷だということ。
俺の命令には逆らえないということを。
「そ、そんなつもりじゃ……なあ、起きろよ!!」
必死で体を揺さぶるが、返事がない。
ただの屍のようだ。
殺しちゃった。
俺が、殺した。
「ハハハは…アハハアハハあ!夢だ…こんなん夢に決まってる。」
そもそも最初からおかしかったんだ。
異世界転生なんてフィクションに決まっている。
どうして気が付かなかったんだろう。
きっとこれは夢なんだ!
奴隷もまた買えばいい。
俺は食料庫や武器庫のアイテムをアイテムポーチに詰め込むと、ギルドを出た。
外には呑気に寝ているエドがいた。
俺は喉元にナイフを突き立てる。
いい経験値になるだろう。
手に肉を引き裂く感触が伝わってくる。
一瞬エドは目を見開き、ビクリと数回はねた後、息を引き取った。
その感覚はやけにリアルで、胸の中に変な感覚を覚えさせる。
「うわ、キモい」
俺は3人の死体をギルドの食料庫に入れた。
再びギルドを出る。
「血で汚れちゃった」
井戸で体を洗うと、俺は着替えた。
「さて、じゃあこの夢を楽しむことにしますか。ハハッ!!」
そう言うと俺は夜の街へと駆け出した。




