第17話 傷跡
初めてのトカゲ肉は意外と美味しかった。
鶏肉と近い感覚だ。
馬鹿舌の俺に鶏と言って食べさせても信じるだろう。
食事を終え、皿洗いを手伝っているとき、俺は違和感を覚えた。
ハルの重心がなんだか傾いているような気がしたのだ。
その違和感は、彼女が歩いているときにより顕著に感じられた。
「ハル、大丈夫か?足がおぼつかない感じがするけど」
「大丈夫です。ちょっと足がもつれただけです。」
鈍感な俺でも流石に気がついた。
「もしかして、怪我してるのか?」
「してません。大丈夫です」
俺は大丈夫だと言うハルの足を軽くつつく。
「痛い!」
「やっぱり怪我してるじゃないねえか!なんで言ってくれないんだ!」
「だって、心配させないように…」
「俺より年下のくせになに言ってやがる。」
足を見ると大きく腫れて、かなりの熱を帯びていた。
それも三箇所も。
「……!こんな状態で家事をしていたのか…」
「わたしは大丈夫です。魔法で補強してますから」
「そういう話じゃない!すぐに休んでくれ。後のことは俺がやるから」
「……怒ってますか?」
「……ああ、怒ってるよ。ハルを傷つけたやつも、頼ってくれなかったハルも、すぐに気が付かなかった俺にも、頼りがいがないって思わせた俺にも、間に合わなかった俺にも。」
「……その、黙っていてゴメンなさい。」
「ハルが謝る必要はないよ。でも、頼ってもらえないっていうのは、寂しいんだぜ?……確かに、俺は不甲斐ないし、ぶっちゃけダサいことばっかやってる。でもよ、俺達は助け合うことができるじゃないか。仲間なんだから、分け合えるじゃないか。出来ないことばっかの俺だって、出来ることがある。力になれる。力になりたい。」
彼女の目を見て真剣に語りかける。
「俺の言いたいこと、わかった?」
ハルはコクリと頷いた。
肩を貸し、彼女を寝室へと運ぶ。
「辛かったよな。ごめんね、気づいてあげられなくて。……その傷、誰にやられたんだ?」
「パールの関係者の女が、ギルドに入ってきて。それで、わたしは何も出来ませんでした。わたしが痛がるのを彼女、笑って見てた。そこに魔物が乱入して…」
「そうか、思い出させてゴメンな。今日はもうゆっくり休んでくれ。」
俺は部屋の明かりを消し、部屋の扉に手をかける。
「なんか、俺の気持ちを一方的に押し付けるみたいになってゴメンな。でも、俺がどんな風に思っているのか、知ってほしかった。……それじゃ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
そう聞こえて俺は扉を閉める。
なんだか言い過ぎた気もするが、言いたいことは言えた。
思い出すときっと恥ずかしくなるから、記憶の隅に留めることにする。
「うし、頑張るぞ…!」
食器洗いを終わらせ、窓や床にこびりついた血を洗い始める。
しばらく洗った後、今日中には終わらなさそうなので、また明日やることにした。
俺が掃除を繰り上げ、寝る準備をしていると、玄関の戸がノックされる。




