第14話 奇襲
あれから4日ほどの時間が経過した。
朝起きたらまずあの山を駆け上りそして駆け下りる。
朝早くにでてもギルドにつく頃には3時を過ぎているので、山頂で食事をするのが日課となった。
相変わらず息切れするし、苦しいし、横腹が痛むし、意識も朦朧とする。
ただひたすらに頭を空にして走った。
正直、これで体力がついてきているのかわからない。
こういう地道な努力はすぐに成果が追いついてこないのが難点だ。
いや、何事も継続。継続は力なりってどっかの誰かも言っていたし。
ギルドに戻り、日が暮れていなかったら、ハルと手合わせをする。
主に、反射神経の訓練だ。
ゲームで鍛えた反射神経が俺にはあるが、指先しか動かないのでは意味がない。
手加減してもらっているが、到底勝てる気がしなかった。
何事も継続だと言うが心が折れそうになる。
とにかく受け流す、防御するのを意識して剣を構える。
初日と比べ、ほんのたまに受け止めることができるようになったのだが、ハルから見ればまだまだ隙だらけのようだ。剣術の世界は奥深い。
そして2日目のときに改めて言った。
「ここで居候させてください」ってね。
ハルはこころよく了承してくれて、安心した。
ひょっとしたらすごく迷惑だと思われているのでは?と思ったのだ。
まあそんなこんなで、今日も俺は山を登った。
今は山頂でゆっくり食事をしている。
パンは固くあまり美味しくはないが、もう慣れた。
住めば都と人は言うが、本当に人は適応出来る生き物なのだと思い知った。
もちろん、そのためにはある程度割り切る必要があるが。
「…ッ!?」
おじいちゃんのギルドに、新しい冒険者が入った。
正確にはもうわたしのギルドになっているのだが。
でも、心のなかではまだおじいちゃんのギルドだった。
このギルドは、たくさんの思い出が詰まっている。
わたしの家でもある。
新しくきた冒険者は、ケンタという不思議な男の子と、パールというすごく強い男の人だった。
ケンタは本当に不思議な人だ。
わたしのことを変な目で見ないし、嫌がらない。
弱いのに、とっても頑張り屋さんで、努力している彼を見ると、不思議と頑張ろうって思える。
パールという人も、最初は悪名しか聞いていなかったから怯えはしたものの、それが杞憂だったことにすぐ気がついた。
不器用な人だとおもう。わたしのおじいちゃんと同じくらい。
とっても強かった。わたしは今までにたくさんの冒険者と手合わせしてきたけど、その中でもかなり上位に入る。
一番驚いたのが、ケンタとパールの関係性だった。
奴隷と主人の主従関係だなんて、全く思わなかった。
ケンタは命令しないし、パールは逆にケンタを導こうといろんなことをやらせようとしている。
「不思議な人」
この調子で、ギルドに人が増えていったらいいなと思いながら、私はギルドを出ようとした。
すると丁度ノックが鳴る。
「はーい。いま出ますー。」
来客なんて珍しい。
不思議に思ってドアを開けると、そこには女性が立っていた。
黒い派手な格好に趣味の悪い化粧。
ヘビのようにうねった髪の毛が、彼女の異質さを引き立てている。
まるで死神のようだった。
「ここがパールちゃんが新しく入ったっていうギルド?アハハははは、ボロくて加齢臭のする、あいつにはピッタリのギルドじゃない!」
「な、なんですかあなたは!出てってください!」
ドアの間を通ろうとする彼女を押し返そうとする。
かなり力を込めたはずなのに、突き飛ばされた。
「アナタ、アタシに歯向かえる立場にいると思っているの?」
彼女はその履いてるヒールで容赦なく私の足を突き刺した。
「い゙い痛い!」
足を貫いたそのヒールから、血が垂れる。
わたしの血だ。
認知した瞬間から、体が全力で逃げろと警告を鳴らす。
「アタシはね、アナタみたいな小娘、だーいっ嫌いなの。だからァ、うっかりコロしちゃうかも」
舐めるような目で怯えるわたしを見下ろす。
わたしが動こうとするたび、黒い女が少しヒールを動かすたびに、ひどい苦痛で顔がゆがむ。
「アハハハは、何その顔ウケる。こんくらいどうってことないでしょぉ?」
黒い女は嗜虐の笑みを浮かべながら高らかに嗤った。
ヒールをわざとグリグリと押し当てる。
反応すれば喜ばせるだけだと分かっているから、声を我慢しできるだけ我慢して涙をこらえる。
「アハ。」
黒い女がヒールを引き抜いた。血が一気にドバドバと足から流れる。
「あ゙ああ゙あ…!」
抜いたことでいままでせき止められていた痛みがあふれる。
「んふ。」
またもや嗜虐の笑みを浮かべる。
今度は腿を刺された。
痛い痛い痛い痛い痛い、血が止まらない。
「アハハはははああ!惨めね!!こんなに苦しんで痛いのに、誰も助けに来ないなんて…!パールちゃんはいないのかしらぁ?」
ーーー「ダヴィデ様、ターゲットの住処が見えてきました。あちらのボロ屋でございます。」




