第2話 白日の儀式
——晴天というのは、時に残酷なまでに白々しい。
雲一つない、抜けるような青空。
休日の朝、七時。まだ夜の冷気が名残を留める時間であるというのに、照りつける陽光は容赦なく地表を灼き始めていた。
場所は、綺麗に整地されたある敷地。
そこでは数人の男たちが、額に汗を浮かべながら立ち働いていた。
一人は、神職の正装に身を包んだ小柄な男。
水川神社の宮司、高橋栄太郎である。
五十五歳。小太りの体躯に温和な、悪く言えばいささか締まりのない風貌を湛えているが、その手つきには長年の経験が宿る。
その傍らで、凛とした佇まいを見せるのは、巫女姿の娘——竹宮夏美、二十三歳。
身長は百六十八センチ。
およそ神域には不釣り合いなほどの、モデルと見紛う麗しい肢体を白衣と緋袴に包んでいる。
彼らと共に準備に追われているのは、ワイシャツにネクタイを締めた不動産会社の男たちであった。
その中に、一際熱心に立ち回る若者がいる。
営業マンの丹羽明良、三十歳。日々の過酷な外回りを証明するかのように、顔面は煤けたように営業焼けしている。
根っからのお調子者らしく、口元には軽薄な笑みが張り付いていた。
男たちはトラックから仮設テントの部材を引っ張り出し、折り畳み式のパイプ椅子を砂利の上に並べていく。
今日はこれから、この地で地鎮祭が執り行われるのである。
敷地の隅には、既にこの物件を購入した若夫婦が、小さな子供の手を引いて所在なげに佇んでいた。これから始まる自らの城の、その基盤を固める儀式を、ただじっと見守っている。
午前中から始まった地鎮祭は、高橋宮司の先導のもと、厳かに、かつ粛々と進められた。大気を震わせる祝詞、穢れを祓う玉串奉奠。すべては理路整然とした手順を踏み、午後を少し過ぎたあたりで、何事の滞りもなく無事に終了した。
◇
祭りが終われば、それはただの現世の空間に戻る。
高橋と竹宮は、役目を終えた祭壇や神具を手際よく片付け、神社から乗ってきた実用本位のワンボックスカーの荷台へと収めた。
——仕事を終えた二人は、不動産屋が設営した仮設テントの中、並べられたパイプ椅子に腰を掛けて一息ついていた。
「宮司、お疲れ様です。お茶をどうぞ」
お調子者の丹羽が、これみよがしな手際の良さで冷たい茶を二人の前に差し出した。茶をひと口、口にした高橋に、丹羽は声を潜めて告げる。
「実は、もうすぐウチの社長がこちらへ向かっておりまして。宮司に少々お話があるとのことですので、恐れ入りますが、このまま少しお待ちいただけないでしょうか」
——それからしばらくのち、事態は動いた。




