↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禊祓師(みそぎはらえし)  作者: 溶けた犬
PR
2/31

第2話 白日の儀式

——晴天というのは、時に残酷なまでに白々しい。


雲一つない、抜けるような青空。

休日の朝、七時。まだ夜の冷気が名残を留める時間であるというのに、照りつける陽光は容赦なく地表を灼き始めていた。


場所は、綺麗に整地されたある敷地。

そこでは数人の男たちが、額に汗を浮かべながら立ち働いていた。


一人は、神職の正装に身を包んだ小柄な男。


水川神社の宮司、高橋栄太郎である。

五十五歳。小太りの体躯に温和な、悪く言えばいささか締まりのない風貌を湛えているが、その手つきには長年の経験が宿る。


その傍らで、凛とした佇まいを見せるのは、巫女姿の娘——竹宮夏美、二十三歳。


身長は百六十八センチ。

およそ神域には不釣り合いなほどの、モデルと見紛う麗しい肢体を白衣と緋袴(ひばかま)に包んでいる。


彼らと共に準備に追われているのは、ワイシャツにネクタイを締めた不動産会社の男たちであった。


その中に、一際熱心に立ち回る若者がいる。

営業マンの丹羽明良、三十歳。日々の過酷な外回りを証明するかのように、顔面は煤けたように営業焼けしている。


根っからのお調子者らしく、口元には軽薄な笑みが張り付いていた。


男たちはトラックから仮設テントの部材を引っ張り出し、折り畳み式のパイプ椅子を砂利の上に並べていく。

今日はこれから、この地で地鎮祭が執り行われるのである。


敷地の隅には、既にこの物件を購入した若夫婦が、小さな子供の手を引いて所在なげに佇んでいた。これから始まる自らの城の、その基盤を固める儀式を、ただじっと見守っている。


午前中から始まった地鎮祭は、高橋宮司の先導のもと、厳かに、かつ粛々と進められた。大気を震わせる祝詞、穢れを祓う玉串奉奠(たまぐしほうてん)。すべては理路整然とした手順を踏み、午後を少し過ぎたあたりで、何事の滞りもなく無事に終了した。


◇


祭りが終われば、それはただの現世の空間に戻る。

高橋と竹宮は、役目を終えた祭壇や神具を手際よく片付け、神社から乗ってきた実用本位のワンボックスカーの荷台へと収めた。


——仕事を終えた二人は、不動産屋が設営した仮設テントの中、並べられたパイプ椅子に腰を掛けて一息ついていた。


「宮司、お疲れ様です。お茶をどうぞ」


お調子者の丹羽が、これみよがしな手際の良さで冷たい茶を二人の前に差し出した。茶をひと口、口にした高橋に、丹羽は声を潜めて告げる。


「実は、もうすぐウチの社長がこちらへ向かっておりまして。宮司に少々お話があるとのことですので、恐れ入りますが、このまま少しお待ちいただけないでしょうか」


——それからしばらくのち、事態は動いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。