14-5:やっぱり結婚?
街の東側出口から、ラクダが出発。そのすぐ脇を2枚の絨毯が舞う。あまり人が離れると、ラクダが混乱するというのが1点。高く飛びすぎると、太陽にやられてしまうというのが1点。以上の2つの要因から、こういう隊列が一般的になったそうだ。
「早朝なのに、暑いですね」
砂漠に入ると、一段と暑く感じる。多分だけど、オアシスが遠くなるからだね。水の恩恵って、こんなところにも現れるんだ。
「布を被るのが良いとは言うけど」
「それはそれで蒸すんだよね」
2人も口を尖らせながら耐えの一手みたいだけど。
「ももちゃん、ビーチパラソル作って」
「ぱらそる?」
「「ビーチパラソル?」」
全員が首を傾げる。私は検索をかけ、ももちゃんに実物を見せてあげた。
「作れそう?」
「うん」
お返事の後、ももちゃんは早速コネコネを始めて、傘の部分を作る。上手いものだね。ちゃんとドーム型になってる。
「あとは柄の部分だ」
私に言われるまでもなく、ももちゃんは小さなお手々で粘土を紙縒るようにして、棒状を形成していく。やがて完成したそれを、傘の内側に取りつけて、
「できた」
みるみる具現化し、それはビーチパラソルへと変わった。パステルカラーの可愛いデザインだ。
「おお!」
「す、凄いですね!」
向こうの絨毯からも大歓声だ。今度こそ、いばりんぼポーズを繰り出すももちゃん。また水を差されたら、やるタイミングを失っちゃうもんね。
「これをこうして」
ももちゃんと私の間に固定する。ちょっと抱っこが離れちゃうけど、まあ大丈夫か。ももちゃんも暴れたりしないだろうし、いざとなったら立ち上がって止めれば良い。
「ももちゃん、こっちにも作ってよ」
「お願いします」
「うん、いいよ」
コネコネ。そういえば何度かリメインもあったし、少し粘土の量も減ってきてるね。この街にもショップはあるハズだから、後で買い足しておこう。
ももちゃんは、ささっと作ってあげる。向こうの絨毯が寄ってきて、フジョルさんが受け取った。
「ありがとうございます。これは良い品ですね」
「ていうか、この発想が無かったのが悔やまれるね」
砂漠出身&在住なのに、ビーチパラソルの発想に至らなかった。まあ住んで慣れてると逆に、そうなることもあるのかも?
「ええっと。こうかな」
フジョルさんが、バナーリヤさんのお尻の後ろに固定する。少し2人の距離が離れた感じだ。
と。
「なんかゴツゴツして気になるわ」
バナーリヤさんは後ろを振り向いて、パラソルを取り上げてしまう。そうして、自分の体の前側に置き直した。
「それじゃあ、僕が入れないよ。遠い」
「も、もっとくっつけば良いじゃん」
……これは。
2人、さっきよりもピタリくっつく。もはやフジョルさんのアゴがバナーリヤさんの首筋に当たるレベルだ。うわあ、尊い。
ここに来て、完璧に理解したよ。互いに意識しながらも、色々なしがらみで踏み出せない2人の距離感を、プレイヤーが観察して楽しむ。そういうエンタメなんだ、このクエストは。
「なかよしだね。やっぱりけっこん?」
ももちゃんのイノセントな冷やかしに、2人は気まずげにしつつも、離れることはなかった。
太陽が中天に差し掛かろうかというところで、ようやく目的地周辺に到着した。と言っても、私には全く分からない。土地勘のある2人ですら「多分ここら辺だ」とだけ。
周囲には小さな岩が何個も転がってはいるけど、他はここまでと全く変わり映えのしない景色。本当にここで合ってるのかな。
「周囲を探してみようか。特に岩影あたりで涼んでる可能性はあるから」
「慎重にお願いしますね。毒針で刺されると、少し厄介ですから」
う。怖いなあ。
「……」
ももちゃんも少し不安げだ。
私たち姉妹は固まって行動し、岩の影や間を覗き込んでいく。もちろん、ある程度の距離を保って奇襲に備えつつね。
ただまあ、心配しなくてもサソリの影も形も無かったワケだけど。
「ねえ、本当にここで合ってるのかい?」
「そのハズだけど……」
幼馴染2人も不安になってきている様子。
「あついから、どっかすずしいところにいったのかな?」
ももちゃんの推測。まあ可能性としてはあるだろうけど、
「商人が見たのは夕方頃だったっけね」
「うん。けど昼夜で拠点を移動するというのは聞いたことがないからね」
2人は「うーん」と首を傾げ、しかしやがてフジョルさんの方がハッと閃いた顔になる。
「そうか、移動せずに涼しい場所」
「「「???」」」
要領を得ず、私とバナーリヤさんは顔を見合わせる。
「この下じゃないかな」
フジョルさんは手近な岩を掌でペチペチと叩いた。
「岩の下……確かに太陽光は防げるでしょうけど」
そもそも入れるのか問題があるよね。こんな重たい岩の下に、サソリの膂力では。
「砂を軽く掘って、入ってる可能性はあるよ。それにヤツらは平べったいからね」
なるほど。
平べったい昆虫ということで、一瞬おぞましき黒光を思い浮かべてしまって、慌てて頭を振った。大丈夫、金色らしいからね。アレとは違うから。
「いわのしたに、さそりさんいるの? どけるの?」
「どけたいけど……ウチらが全員で押しても厳しそうな気がするよ」
女子2人と、インドア男子1人。ももちゃんは流石に戦力には含められないから、まあ確かに難しそうかなあ。
軽く手で押してみるけど、ビクともしない。
「しまったね。テコでも使えたら良かったんだけど」
「こうなると分かっていたら、丈夫な板とか持って来て……」
バナーリヤさんがセリフの途中で、ももちゃんを見る。はい、ウチの天使が作れますね。
ということで、3人の大人がももちゃん様にお願いして、一式を作ってもらった。長くて丈夫な鉄板と、三角のキレイな石は支点用。
早速、配置に取り掛かった。




