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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第14話:黄金のサソリを追って

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14-3:ダンスステージ

 エメラルドグリーンのトップスは、おへそが見えるくらいの丈で、エナメル質のキラキラ光る生地。肩が出てるけど、スリーブはあるタイプで、思ったより露出は少ないので一安心。下はゆったりしたスカートで、丈も踝くらいまである。引っ掛けて転ばないように注意しないとね。


「……すーすーするね」


 チビッ子ダンサーのももちゃんは、私と同じデザインの桃色があったのでそれを着せた。激烈に可愛い。ちっちゃいお腹肉がぽっこりとスカートの上に乗ってる。軽く摘まんでみた。ぷにぷにだ。


「ももちゃん、これ何だろう?」


「ちらない」


 ちらないハズないんだけどなあ。今まさに掴まれてるのに。


「さてと。それじゃあ待ちくたびれてるフジョルと合流しようか」


 あ、忘れかけてた。

 というワケで、部屋の外に出て、フジョルさんと合流。そのまま4人で通路を進んで行くと、すぐに大きな扉の前に着いた。ここでもカギを開けたバナーリヤさんが中へ。そのまま照明を点けてくれたみたいで、光が灯った。私たちも扉をくぐる。


「あ、ステージになってるんだ」


 だだっ広い木製の舞台の上に繋がっていた。控室で着替えて、そのまま通路を進んで舞台袖の裏口へ。なるほど、無駄が無いね。


「ウチが踊ってみるから、2人はなんとなくで合わせて」


「ええ? そんなテキトーな……」


「時間が無いんだって。とにかく変な動きさえしなければ、恐らく誤魔化せるよ」


「そうですね。見習いというのを周知しておけば、仮に少し変でも大目に見てもらえるでしょうし」


 ももちゃんも、ジュニアの部を開設するテスト云々で乗り切る算段らしい。まあ日本でもダンススクールのキッズ部とか普通にあるしね。


 バナーリヤさんがアドリブで踊りだす。両手を左右に広げて、波打つみたいに体全体を揺らした。続けざまに後ろを向いて、腰だけ小刻みに動かす。その度に美しいスカートが体に遅れて舞い、そちらにも目を奪われた。

 回転しながら手を斜め上にキレイに伸ばして、視線を誘導する。そちらに私たちの目が行ったところで、またクルリと回転。今度はこちらに向かって手が伸びている。体、手、腰、衣装。全てで表現してるんだ。とても優雅で女性らしく、けど時々ドキッとするほど荒々しくて。


「……」


 ももちゃんも目をキラキラさせて見入ってる。よく見れば、小さく手足が動いている。マネをしようとしてるみたいだね。

 

「ももちゃん、見てて。こうだよ」


 バナーリヤさんが気付いて、動きをゆっくり見せてくれる。ももちゃんは両腕を広げて、波打たせようとするけど、中々キレイにいかない。ヤジロベーみたいになってて、微笑ましいけどね。


「ほら、笑ってないで。幸奈もやりなよ」


「え」


「え、じゃないよ。アンタの方が、ももちゃんより厳しく見られるからね?」


 ひい。

 でも、確かにそうか。ももちゃんが多少変だったとしても、3歳児に厳しい目を向ける人なんて、そうは居ない。逆に見習いの私は……


「や、やっぱり私もジュニアの部みたいな感じで」


「無理ですよ、流石に」


 フジョルさんが少し呆れたような声音でツッコむ。

 うう、やっぱダメかあ。


「ほら。夜までに、ある程度は見れるようにするよ」


 そうしてスパルタ特訓が始まる。私たち姉妹はヒイヒイ言いながら、最低限の動きを覚えていった。






 そうして、夜の6時。開店を迎えた。続々とお客さんが入ってくる。労働を終えたオジサンたちと、意外にも女性の姿もそれなりに見かける。純粋な酒場としても機能しているってことなのかな。これなら更に安心だね。


「さあ、いくよ。みんな」


 う、早速か。

 音楽隊がステージ脇に現れ、演奏が始まる。ダンサーたちがパッと散り、それぞれの立ち位置へ。目印も無いのに、寸分違わず等間隔で立ってるの凄すぎるよ。


 ――♪♪


 音楽に合わせて、みんなが踊りだした。私も必死に体をウェーブさせる。隣では、ももちゃんも同じ動きをしているハズだけど、確認する余裕が無い。

 あ、ヤバい。みんなターンしようとしてる。私も合わせてクルリ。客席から歓声が飛んでくる。私に向かってじゃないだろうけど……


「やあ、可愛い~」


 ももちゃんでしたね。キャバレー利用ではなさそうな女性客たちが、私の隣に視線を注いでいるのが分かる。

 よしよし。このまま私は路傍の石のように扱ってもらって一向に構わないので。


 ――♪♪


 曲が転調し、ダンサーたちの動きも激しくなる。私も合わせてワチャワチャする。ていうか今更だけど、リハーサルくらいさせて欲しかったよね。音楽隊をわざわざ呼べないとか、そもそも時間が無いとか、出来なかった事情も分かるけど。


 ――ぴ~~! ぴゅい!


 子ルッフの鳴き声みたいな音は、誰かが鳴らした指笛か。

 

「はっ、はっ……はっ」


 メッチャ疲れる。隣の妹がよろけて、私の足に軽くぶつかってきた。姉妹諸共に転倒という失態は避けたい。グッと踏ん張って支えているうちに、ももちゃんも体勢を立て直してくれた。

 ただ、私も妹もヘトヘトだ。本番の長さを甘く見ていたね。練習の時の疲労度とは桁違いだ。

 早く終わって、と念じながら。


 ――♪♪♪


 曲がラスサビに入った。ダンサーたちは上体を揺らさずに、腰とお腹だけを激しく前後させる。私たちは、あそこまで速いのは出来ないので、その場でクルクルと回転して誤魔化す。別の動きだけど、意外と誤魔化せるとのことで。困った時に使う技だ。


 そして、遂に。一際大きな音を奏でて、楽曲が終わりを告げる。ダンサーたちも、腕を伸ばしてポージング。アレは私たちにも出来るから、マネをして。


 ――でち!


 ももちゃんは隣で転んで、尻餅をついちゃってるみたいだけど。


 ――ぱちぱちぱち!


 拍手が起こった。指笛に、歓声も。

 なんとか。なんとか、ステージを壊さずに勤め上げられたみたいだった。

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