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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第14話:黄金のサソリを追って

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14-2:まさかの代役です

 私たちは街の北西にある酒場へと向かう。バナーリヤさんが夜働いている店だという。踊り子ということで、少しいかがわしいニオイを感じてしまうけど、そこは流石に半子供向けゲーム。ちゃんと踊りだけで客を楽しませるパフォーマー的な仕事らしい。


「昼の早いうちに来るのは久しぶりだね。変な感じだ」


 昼間はギルド受付の仕事があるもんね。

 ……バナーリヤさん、いつ寝てるんだろう。と、私が心配したのと同じタイミングで、


「あまり無理はしないでね。薬代は僕の方でも多少は頑張るから」


 フジョルさんが優しく諭す。


「ありがたいけど……全面的に甘えるワケにはいかないよ」


 バナーリヤさんが力なく笑う。


「……」


「……」


 2人の距離感。なんとも言えないな。幼馴染と、その母親を気遣う彼と。彼に凄く感謝しながらも、一線は引いている彼女。

 

「ふじょるおにいちゃんたちは、けっこんするの?」


「は?」

「え?」


 ももちゃん、ぶっこむ。いや、私もなんとなく「あるのかなあ」とは思ってしまったけど、それにしてもこんなに直截に。恐るべし、イノセント下種の勘繰り。

 言われた2人は、やはり少し顔を見合わせ、そっと逸らした。


「……どうして、そう思ったんだい?」


 バナーリヤさんが訊ねる。


「えっとね。めいどのおばちゃんと、しょーふぇんおじちゃんにね、なんかにてるから」


 ああ、なるほど。エリーファさん&ショーフェンさんの幼馴染カップルと、どこか似通った雰囲気を感じ取ったということらしい。

 私は顔中に疑問符を浮かべている2人にも事情を説明する。勝手に他人のプライベートを話すのも少し気が引けるけど、まあこの2人があの夫婦に会うことは無いだろうからね。


「なるほどね……どうなの、フジョル」


「ぼ、僕に聞くのか」


 うーん。このやり取り。気安い幼馴染が勘違いを楽しんでいるようにも見えるし、さりとて完全に脈ナシならもっとガッツリ否定するような気も。


「ていうか、今はそんな話してる場合じゃないから……」


 フジョルさんの疲れたような声で我に返る。そうだったね。クエストには関係の無い部分だ。個人としては……もちろん気になるけどね。超気になるけどね。


「ほら、着いたよ。あそこだ」


 バナーリヤさんが軽く駆けて行って、建物へ着く。通用口のカギを開けているみたいだ。体よく逃げられたようにも感じるのは、それこそ下種の勘繰りかな。


「あれが……さかば?」


「みたいだね」


 土造りの横に広い建物。ここら辺の平均的な家屋の3倍はありそうな大きさだ。儲かってるのかな。


「さかばって、びーるのむところ? いざかやさんとちがうの?」


 パパのせいでお酒や、それが呑める場所に関する知識が多い。

 ただ私も咄嗟には、「酒場」と「居酒屋」の違いが分からないので、「同じようなものだよ」とだけ教えておいた。あとで調べてみようかな。


「さあ、僕たちも行きましょう」


 通用口の向こうに消えたバナーリヤさんを追って、私たちも建物の中へと入る。

 バナーリヤさんが光の魔石を点けてくれたみたいで、中は明るかった。左右を土の壁に挟まれた狭い通路。


「こっちですよ」


 フジョルさんが先に立って、私たちはその後について行く。ああ、そうか。彼が行き先を知ってるから、バナーリヤさんは先に行ってしまったんだね。また阿吽の呼吸だ。


 やがて、1つの部屋へと着いた。木の扉が開け放たれている。中には既にバナーリヤさんが居て、テーブルの上に布を広げていた。いや、布というか、アレは衣装か。

 近づいて検分してみると、どうやらスカートみたいだね。そしてもう1つ、トップスのような物もある。

 ええっと……


「踊り子の衣装だよ。アンタたちにも着てもらおうと思って」


「え」


 そんなの聞いてない。ただ情報を持ってる商人の男が、今晩酒場に来るということしか教えてもらってなかった。てっきり隠密のようなことをして、コッソリ盗み聞きするんだと思ってたのに。


「実は、ダンサーが数人、里帰りしていまして」


 蜃気楼の晴れる2週間。外部とマホロバを隔てる敷居が消えた期間を利用して、私たちは来たワケだけど。市外からマホロバに移住している人は、逆に帰省チャンスということらしい。


「つまり数合わせってことですか……」


「それでも居ないよりは良いからね。グループに加わって、客にパフォーマンスして欲しい」


「情報はホステス班が引き出してくれる手筈になってるんですよ」


 なるほど。ダンスパフォーマーをステージに呼んで、それを肴に女性が男性とお酒やトークを交わすラウンジという感じなのか。

 もちろん、お触りとかは厳禁とのことなので、アレなお店ではないんだけど……ちょっとドキドキしてしまうよね。


「まあダンスといっても、ウチのグループが踊る間、後ろでそれっぽく動いてくれれば良いだけだから」


 聞けば、やはり何もしない女性が場に居ると不自然だということらしく、ダンス部の見習いみたいな扱いにするそうだ。


「ももちゃんさんは、僕と一緒に控室で待機ですね」


「え? ももちゃんも、だんすできるよ?」


 うーん。大人の社交場だからなあ。いかがわしい店ではないとはいえ、子供に参加させても良いものなのか。


「ほいくえんのおゆうぎでやるもん」


「う、うん。それは知ってるけど」


 まあ良いか。ステージで踊ってるだけなら、客席の方がキャバレーだとか分かんないよね。


「それじゃあ、ももちゃんもダンスしようか」


「うん!」


 ということで結論が出た。バナーリヤさんも頷いてくれる。


「分かった。それじゃあ、子供用のステージ衣装も出してくるよ」


 あるんだ。じゃあ一応、子供のプレイヤーもダンスする想定のクエストってことか。

 バナーリヤさんは部屋の隅に置かれた木箱の蓋を開け、中を漁る。しばらくして、


「あ、これだね。入ると思うよ」


 見つけたらしい。


「それじゃあ、僕は外に出てるから」


「はい」


 こっちも自動録画してるカメラをオフにしておいて。

 バナーリヤさんに手伝ってもらいながら、初めて踊り子衣装に身を包むのだった。

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