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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第14話:黄金のサソリを追って

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14-1:共同依頼人

 1日空いて、土曜日。

 お昼ご飯の後、ももちゃんと一緒に少しだけお昼寝をして。起きたところで、ゆるゆるとブロクエを始めた。

 ログインすると、宮殿の前だった。前回、おじさんたちが船を抱えて出てきた正面玄関。オアシスを背にしてる格好だ。

 早速、玄関前で靴の砂を落としてから、扉を開けて中へ入る。


「ちかいね」


「そうね」


 街の東西から入った時と比べたらね。

 中央階段の脇を抜け、ギルドへと向かう。と、その扉の前に1人の青年が立っていた。細縁のメガネを掛けていて、少し地味な印象を受ける。ローブの上に灰色のマントを羽織った出で立ちで、ターバンなどは巻いていない。


「あ。失礼」


 と、私たちとすれ違おうとするけど。そこで彼は不意に立ち止まった。


「失礼ですが、もしかして外から来た冒険者の方ですか?」


 直截に訊ねられる。私は少し面食らいながらも頷いた。


「ブロンズの……城下幸奈です。こっちは妹の」

「ももちゃんです……」


「幸奈さんと、ももちゃんさんですね。僕はフジョルと言います」


 謎に自己紹介を交わす流れになってるけど……えっと。


「ついさっき、僕とバナーリヤで共同のクエストを出したんです。しかし今現在、この街で活動している冒険者はアナタ方お2人だけと聞いています。なので。お願いします。どうか、受けてください」


 そういうことだったんだ。それにしても必死の様相で、頭まで下げてくる。


「ちょ、ちょっと。そんな大袈裟な」

 

 頼み込まれるようなことじゃない。だって、言われなくても受けると思うし。今までの傾向から言って、クエストなんて貼られて1、2枚のモンだから、そもそも他に選択肢が無い。


「ももちゃん、くえすとうけるよ。ぼうけんしゃだもん」


 おお、頼もしい。


「あ、ありがとうございます! それでは、中へ」


 掌で差し示されるまま、私たちはギルドの中へと足を踏み入れる。

 途端、バナーリヤさんにも歓迎を受ける。フジョルさんと同じように「待っていたよ」「頼むよ」の合唱だったけど。


「バナーリヤ、受けてくれるって。ももちゃんさんも言ってたから」


「あ、そうなの? 良かった」


 勝手に解決したよね。落ち着いてくれたバナーリヤさんに、まずは前回クエストの報告をする。ハンコを押してくれて、報酬の袋もカウンター上へ。


「オロミドさん、マイク? ってのに、いたく感謝してたみたいでね。多めに出てるよ」


 あ、そういえばリメインしたまま忘れてた。まあ元々プレゼントするつもりだったから、良いけど。

 

「16000Gと、フラワーコイン2枚ね」


 私がレースの賭けで負けたのが2000Gだったから、取り返せたね。まあ全部ももちゃんのおかげなんだけどね。マイクを発想したのも作ったのも、彼女だから。


 受け取って、フラワーの方はももちゃんのガマ口さんへ。今更だけど、結構入ってるのに、ももちゃんが音を上げるほど重たくならないのは謎だよね。ファンタジー貨幣パワーかな。


「で。こちらですね」


 うわ、もうフジョルさんが剥がして持って来てるし。

 受け取って、ももちゃんにも見えるよう、その場でしゃがみ込んだ。そうして、2人で確認すると。




 ====================


 No.14


 <薬の材料調達>


 依頼者:町医者フジョル&ギルド受付嬢バナーリヤ


 内容:薬の材料に関する情報収集ならびに採取


 報酬:9000G

    フラワーコイン2枚


 備考:ギルド受付のバナーリヤに話を聞こう。


 ====================


 


 ということだった。読み終わったタイミングで、フジョルさんにヒョイと奪われ、それはそのままバナーリヤさんへと渡る。そして何か言う前に『受諾』のハンコを押されてしまった。


「あ、阿吽の呼吸ですね」


「ははは、ウチらは幼馴染だからね」


 へえ。2人、随分とタイプが違うけどね。バナーリヤさんは化粧バッチリで、美意識も高い感じ。あ、いや。フジョルさんが不潔とか美意識低いってワケではないんだけど……あまり見た目に頓着してるタイプではないのは事実かな。


「ウチの母親の病気を、フジョルは診てくれてるからね」


 あ、そういう関係なんだ。


「それで薬の材料のお話になるんですね」


 2人は頷く。


「寛解はしてるけど、定期的に薬が必要なんですよ」


「その材料が少し厄介でね。人手が欲しい」


 だからこそクエストになってるってことだろうね。


「黄金サソリの毒腺という素材になります」


「サソリ……ですか」


 砂漠地帯だし、どこかでサソリとかフンコロガシとかと対峙するクエストも予想しなかったワケでも無かったけど。外れてて欲しかったなあ。


「……それじゃあ、そのサソリを獲れば良いんですね」


 ももちゃんに作ってもらうお助けアイテムを色々思案しながら訊ねると、しかし2人は曖昧に頷くだけだった。


「最終的にはそうなんだけどね。まずはサソリがどこに居るかの情報を得ないと」


「連中は定期的に群れで移動する習性があるんです。以前獲った場所には、もう居ない可能性が高い」


 ああ、なるほど。遊牧民スタイルなのか。厄介な。

 ももちゃんにもサソリの画像を見せてあげる。


「ざりが…………に?」


 途中までは「ザリガニだ!」と思ってたけど、尻尾を見つけて疑問が生じたみたいだね。


「まさか水の中とかには居ないですよね?」


 一応、可能性を潰しておきたくて訊ねると、2人も苦笑しながら首を横に振った。


「流石に砂漠内だけですよ、移動は。ただそれ故に難しい」


「砂漠の中は、あまり目印になるような物は無いからね」


 それはそうか。


「だからこの薬が切れると、毎回大変なんですよねえ」


 お医者さんの苦労が偲ばれる。ていうか、調薬どころか薬の材料まで採りに行くお医者さんってアクティブすぎるよね。他の冒険者が居ないっていうのも……私たち的には競合がなくて良いけど、暮らしてる人たちにとっては辛いことなんだ。


「最近の目撃情報はあるんですが……」


「行商のオッサンなんだよね。流石に商人ってことで、タダでは教えてくれなくてね」


 情報も商材ってワケだね。人助けの分野でまで業突く張りなのは感心しないけど。


「なので、情報を引き出すところから協力いただければと」


 そこから2人は、具体的な方策を共有してくれた。

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