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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第13話:熱狂! 子ルッフレース

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13-7:レース決着です

 ゲートのドアが開き、子ルッフたちが一斉に飛び出す。それと同時、場内に大歓声が沸き起こった。地鳴りのようで、腕の中のももちゃんがビクッとなった。


「いけー!」


「赤ルッフー!」


 赤というのは、頭に巻かれたハチマキの色だ。名前は一応あるハズだけど、みんなあの色で識別してるみたいだね。


「俺の今月の給料、全部注ぎ込んでるんだぞー!」


 それはやりすぎだね。ギャンブルは程々にしておかないと。

 

 周囲の熱狂を呑み込んだみたいに、子ルッフたちは白熱のレースを展開している。直線では、やや4番目の子(緑のハチマキ)が有利みたいだけど、私が予想した3番目に乗った子(黒いハチマキ)も負けてない。やはり私の勝負勘に狂いはなかったね。


 ただ残念ながら、ももちゃんがベットした一番小さな子(白ハチマキ)はダメっぽい。完全に最下位に沈んでしまっている。懸命に走ってはいるけど、4位から5鳥身くらい離されてるね。


「しろるっふちゃん……」


 ももちゃんも悲しそうな声を出している。


『さあ、最初のコーナーに差し掛かるよ! ここで抜け出すのは!?』


 緑を先頭に、ハナ差で黒、そして1鳥身くらい後ろに黄色。その後ろにピタリと赤。そこから5鳥身離れて白の子が続く。上位4羽は内側を奪い合いながら、激しく走り抜ける。体を斜めに傾けて、最初にコーナーを抜けたのは、


『黒ルッフだ! ここで先頭に立った!』


 わあ、と大きな歓声が上がる。緑に賭けているだろう人たちは悲鳴。私と同じく、黒に賭けている人たちからは狂喜の声。

 私も熱くなって、つい身を乗り出した。


「このまま! このまま!」


 高揚感でフワフワする。当たる。配当が貰えるんだ。

 長い直線が続く。ジワジワと緑が追い上げて、また抜かれそうになってきた。やっぱり真っ直ぐなコースでは、あの子が一番速いみたいだ。


「くっ」


 抜きつ抜かれつになる。3位の黄の子とは3鳥身くらい差がついている。そのすぐ後ろが赤。そして白の子は残念ながら、その赤から6鳥身差くらいか。


「……」


 ももちゃんの悲しげな表情に、少し胸が痛むけど。これも真剣勝負。

 なんて思っていた、その時。突然、場内がワーッと沸く。明らかに空気が変わった感じがする。私も慌てて顔を上げた。


『あっと! まさか、これは!』


 実況のオロミドさんも驚愕の事態。私も口をあんぐり開けてしまう。


「しろるっふちゃん! とんでる!」


 そう。ももちゃんの言う通り、白いハチマキの子が宙を浮いた状態で大外からグンと伸びてきたのだ。


「ウソ!? と、飛べたの! あの子!」


 あの観光客を運んでくれる親鳥と比べれば、「飛んでいる」と表現するほどの高度ではないかも知れないけど。でも確かに、今あの子は地面に足を着けていない。


 ――ぴー!


 そしてカーブに差し掛かったところで、更なる真価を発揮した。内を取り合う先頭2羽を嘲笑うかのように、その上空を悠々と舞う。膨らむこともなく、キレイに回った。そして一気に先頭へ。その時には2位の緑に3鳥身以上の差をつけていた。


「そんな……」


 私の言葉を継ぐように、


「そんなのアリかよー!」


「反則じゃないのか!」


 観衆から物言いがつくけど。


『ルールを読んでるかい? エサや運動量を平等に。そこから先の身体能力の成長差は個性として全て認める』


 あ、そうだった。そういう話だった。


『体が大きく育った子とは対照的に、あの子は小さいが、その軽さの分、飛べたんだ。いや、アタシも知らなかったんだけどね』


 そうこう言っている間に、決着がつきそう。白の子が誰の背中も見えない自由な空を滑り……1着。

 悲鳴。歓喜。興奮。怒号。白の子の体格を見てベットを敬遠した人が多いようで、ハズレ券が空を舞っている。


『最終だよ。白、黒、緑、黄、赤』


 確定だ。

 私も一瞬、放心しそうになるけど。ハタと気付く。そうだった。


「ももちゃん、ももちゃん! アタリだよ!」


 胸の中に妹を抱き締めながら、興奮が抑えきれない。


「しろるっふちゃんが、いちばん?」


「そう!」


「やったね」


「やったよ~。ももちゃん様様だよ~」


 私だけだったら、黒に全ベットで死んでた。

 またまた、ももちゃんに助けられたね。


 ………………

 …………

 ……


 レースが終わり、熱狂もウソのように引いていた。みんな帰路に就いていて、当たった人は筋肉さんのテーブルで換金している。とはいえ、やっぱり少ないみたいで、大体の人が大損を抱えてトボトボ去って行く。


「いやあ、凄かったねえ。ももちゃん、当てたんだって?」


「うん!」


「あの子が飛べるって気付いてたのかい?」


 オロミドさんが訊ねるけど、ももちゃんは首を横に振る。


「でもね。ちっちゃくてもすごいこはいるから!」


 自分もそうだと言わんばかりに、ももちゃんが胸を張る。

 オロミドさんは「あはは」と快活に笑って、


「そうだね。それはそうだ。案外、この子が次の怪鳥になったりしてね」


 柵の中に手を伸ばすと、白い子が寄ってきて頭を撫でられる。


 ――ぴい!


 嬉しそうに鳴いた後、胸を反らした白い子。その姿勢がももちゃんのポーズそっくりで、私もオロミドさんも大笑いしてしまう。

 その後、私たちも白い子だけでなく他の子全員を撫でさせてもらって、小屋を後にする。みんな頑張ったからね。


「さあ。今晩はご馳走にしようか、オマエたち。なんせギャンブルは胴元が一番儲かるからね」


 最後にオロミドさんのアコギなセリフを背中で聞きながら、今度こそクエストを終了する。

 ちなみに、換金の結果だけど……フラワーコインを5枚も貰えました。

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