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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第13話:熱狂! 子ルッフレース

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13-6:博徒ももちゃん

 折角だから翌日のレースも見て行きなよと言われたところで、『翌日までスキップしますか?』の文字が。あ、こういうパターンもあるんだね。宿に泊まるという選択肢もあるっぽい(オロミドさんが示唆してくれた)けど、まあ宿代もかかるしね。

 私は『はい』を選択する。一瞬、暗転し、次に晴れた時には……どこ? ここ。


「あれ? るっふちゃんたちは?」


「ちょっと移動してるみたい」


 マップを出してみると、住宅街から少し南の辺り。小屋から見ると、少し北に歩いた辺りかな。何故こんな場所に出たのかは謎だけど、とにかく南下すれば良い。

 ふふ、私もこのゲームを始めて、かなり地図が読めるようになってきたよね。


「こっちだよ、ももちゃん」


「ねえね、ちがうよ。そっちはにし」


「……」


 現在地は割と分かるようになったんだけどね。そこからどっちに進んだら目的地なのか、これが分からない。


 ………………

 …………

 ……


 ももちゃんに手を引いてもらって、3分ほど南下したところで。人だかりが見えてきた。最後尾の辺りに着いて、周囲の人の会話に耳をそば立てたところ、どうやら全員レースを観にきた人たちのようだった。大人気だね。

 と、そこで。


「よう、嬢ちゃんたち」


「昨日はご苦労さん」


 ティングスさん、フィングスさんの声。周囲を見渡すと、受付の机があり、そこで業務をしているらしかった。こういうの見るに、本当に公務員なんだね。


「こんにちは」

「ちは」


「おう。オマエさんたちは特別にファストパスだ」


「功労者だからな」


 周囲から少し不満の声が上がるけど、フィングスさんが腕まくりして筋肉をモリッとしたら黙った。


「ところで、トトも買っていくか?」


「トト?」


「賭けだ。公営だぜ」


 うーん。子供向けなのに、賭け事が出来るのか。まあでも競馬とか宝くじも日本は公営だし……ていうか、既にカジノでルーレットしたね、そういえば。


「かけ?」


「こないだ、ドギーさんのカジノでやったような」


「るーれっと!」


「ではなくて」


「!?」

 

 それ以外もあるのか、って顔してるけど。あのカジノにも他に遊技台があったでしょ。


「ルッフちゃんたちのレースを予想するの。駆けっこで、誰が一番速いか」


「かったら、またふらわーこいんもらえるのかな」


「どうだろう。どうなんですか?」


「フラワーコインを賭ければ貰えるぞ。GだとGだ」


 なるほど、明朗会計だね。


「Gなら最低1000から。フラワーコインは最低1枚からだ」


「どうするよ?」


「それじゃあ……Gとフラワーコイン両方で」


「え? 両方かい?」


「お嬢ちゃん、見かけによらずギャンブル好きだな」


「そ、そんなことないと思いますけど」


 な、ないよね?


 ちょっとした濡れ衣もかけられつつ。私の予想……昨日3番目に乗った子に2000G。ももちゃんの予想……最初に乗った一番ちっちゃい子にフラワーコイン1枚。ということでベットが完了した。

 ていうか、今更だけど。スキップ明けた時、小屋から離れた所に移動させられてたのは、この受付に寄らせて、ギャンブルイベントを提示するためだったんだろうね。まんまと参加しちゃったし、ナイス判断だけどさ。






 ファストパスをさせてもらって、私たちは小屋の裏側、昨日も来たレース会場へと足を踏み入れた。すぐにオロミドさんが見つけてくれて、「関係者だよ」と周囲に説明しつつ、特等席に案内してくれた。運営テントの2列目席だ。ももちゃんを抱っこして座った。


 レース場を眺める。昨日は無かったゲートが設置されていた。木製の扉つきのヤツで、自動開閉機能は無さそうだけど、子ルッフたちはアレを押し開けてスタートするんだろう。こちらからもゲートの中に収まっている、一番手前の子が見える。


「……入れ込んでる様子は無いね」


 レース開始まで、残り3分というところ。


「うん! んん!」


 オロミドさんが、にわかに喉の調子を整え始めた。


「どうしたんですか?」


「実況をしないといけないからね。毎年、この大観衆の声援や罵声に負けないように声を張り上げないといけないのさ」


「な、なるほど」


「おかげで、終わったら、いつも喉がガラガラで1週間くらい痛いんだけどね」

 

 それは大変だ。

 と、ももちゃんが粘土を取り出した。


「まいく」


「え? あ、ああ! ナイスアイデアだよ、ももちゃん」


 オロミドさんはキョトンとしてるけど、ももちゃんは構わずに粘土を机の上でこね始める。


「そういえば、公務員の2人に聞いたけど、不思議な粘土を使うんだってね。これが?」


「はい」


 問答している間にも、ももちゃんはマイクのポップガード(網の部分)をせっせと作り、瞬く間に完成させてしまった。色づきながら具現化し、黒いマイクが現れた。


「ありがとう、ももちゃん」


 受け取って、電源をオンにする。


『あ、あ』


 拡声される。場内がどよめき、オロミドさんも目を真ん丸にしている。

 オフにしてから彼女に渡した。


「こいつは……凄いね。拡声する筒。いやあ、驚きだ。ももちゃん、アンタ凄いんだねえ」


 はい、出ました。いばりんぼポーズ。

 まあでも、実際お手柄だよね。私はパッと思いつかなかったし。


「よし、これがあれば百人力だ。今年の実況は最後までバテたりしないよ!」


 あ、例年はバテてたんだね。


 オロミドさんはマイクをオンにして。


『さあ、第27回子ルッフレース、もう間もなくスタートだよ! 飲み物は買ったかい? トトは買ったかい?』


 前口上みたいに観客を煽って、ボルテージを上げていく。

 

『さあ。ファンファーレだよ』


 反対側に金管楽器を持った一団が現れる。少しの間を置いてから、演奏が始まった。高らかに鳴り響く音の奔流。そしてそれが止んだところで、


『各鳥、一斉にスタートだ!』


 レースが始まった。

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