13-2:たっぷり触れ合います
オロミドさんの「人懐っこいし、噛みついたりしないよ」というお墨付きもあって。恐る恐る柵のすぐ近くまで寄ってみる。すぐに先の丸いクチバシがツンツンと私の頬を突ついてきた。わわ。ツルツルしてるね。
「ももちゃんも、触ってみる?」
「……いたくない?」
警戒気味のももちゃん。
「大丈夫、ほら」
クチバシを撫でてみる。
――ぴゅい♪♪
その手に頬を擦りつけてきた。うわあ、フカフカであったかい。
「可愛いよ」
「じゃ、じゃあさわってみる」
ということなので、ももちゃんを抱え上げて子ルッフの前へ。相手が子供だというのが分かるのか、子ルッフは突つかずにクチバシの表面で妹の頬をなぞるようにした。
「あ。つるつるしてるよ」
「ほっぺも撫でてみな」
オロミドさんに言われるまま、ももちゃんは子ルッフのほっぺたを撫でた。小さなお手々がフカフカに沈む、癒やしの光景。
「あったかいね。ふゆぶとんみたい」
羽毛だからね。ていうか、冬布団なんて単語知ってたんだ。冬が無さそうなマホロバの住民であるオロミドさんはキョトンとしてるけど。
――ぴぴ!
もう1羽寄って来て、ももちゃんの頬にクチバシを擦り付ける。
「♪♪」
ももちゃんも嬉しそう。動物さんと触れ合うのは、子供にとっても凄く良いことだというのを改めて実感する。
ただ、そろそろ私の腕が限界なので、ももちゃんをそっと下ろした。不服そうな顔で、ねえねを見上げるのやめてね。
「さてと。顔合わせも済んだことだし、クエストに移っても良いかい?」
「あ、はい」
「依頼書にも書いた通り、明日、この子たちのトレーニングと街の興行を兼ねたレースがあるんだ」
明日か。となると、またスキップ機能が火を噴きそう。まあ今は良いや。
「この子たちが万全で臨めるように。そして大会運営が成功裏に終わるように」
「その補助をすれば良いんですよね」
私が後を継いで答えると、オロミドさんは満足げに頷いた。
「まずは、この子たちがレース中にスタミナ切れを起こさないよう、良いエサをあげないとね」
「なるほど。ちなみに普段は何をあげてるんですか?」
「雑穀が多いかねえ。本当は平時からもっと良い物食べさせてあげたいんだけどねえ」
「そうなんですね」
「まあそれでも、住処の連峰よりは良い物が安全に手に入るってんで、ルッフも預けてるんだろうけどね」
ああ、そういう理由なのか。
「連峰には彼ら以外にも強い生物が居るからねえ。良い物を食べさせて強い子を育てたいのさ」
「自然界も大変なんですねえ」
「そうだね……っとと。話が逸れたね。とにかく今日はたっぷり良い物を食べさせてあげないと」
「具体的には?」
「オアシスの魚と、街の郊外に生息してるサンドワームだね」
魚とミミズ。どっちもヌルヌルしてそうだなあ。
「どうかね? 獲ってこれそうかい?」
「そうですね。やってみます」
オアシスの位置は分かるので、サンドワームの生息地だけ詳しく教えてもらってから、私たちは出発する。
まずは街の北側、オアシスの魚を獲りに行こう。
無事に到着。既にモノッキ市長にも許可は取っているらしいので、早速始めちゃおう。
「おさかなとるの?」
「うん」
ももちゃんは、つい最近まで魚は切り身の状態しか知らなかったんだよね。でも、水族館に連れて行ってあげてから、魚のなんたるかを理解したんだ。
「どうやって?」
「うーん、まあ釣竿かなあ」
「つりざお?」
私はいつもの検索窓から、画像を出す。ももちゃんはピンと来てない様子。そうか、釣竿見たこと無かったっけ。ウチはパパも釣りはやらないしなあ。
「このぼうをつくって、いとをつけるの?」
「そうだね」
「それでどうやっておさかなとるの?」
「糸の先に針がついてて、そこにエサを……」
「……ん~」
分からなさすぎてモヤモヤしてるみたい。ていうか説明しながら、私自身よく構造は分かってないことに気付く。それに仮に構造が分かってても、技術的に扱えるのかという問題があるよね。釣りなんてやったことないし。ああ、でもゲームだから、イージーになるような調整が入るかも?
なんてグルグル考えていると、
「おーい!」
誰かに声を掛けられた。宮殿の正面扉が開いてる。そこからムキムキのおじさんが2人。小船を押している。協力して、ここまで運んできたみたいだ。
「えっと?」
おじさんたちはノシノシと進んでくる。ていうか、この顔は。
「きのう、らくだのおはなししてくれたおじちゃんたち」
だね。
おじさんたち(お名前はティングスさんとフィングスさん。双子の兄弟らしい)の話を聞くと、モノッキさんに頼まれて来たとこのこと。
しかも、船の運搬&貸与までかなと思ったら、どうも魚の捕獲まで手伝ってくれるみたいで。
「この船でオアシスの中央まで行ってだな」
「そこで籾殻を撒くと、魚が寄ってくる」
ああ、なるほど。釣りじゃなくて漁だね。
「ただ銛の扱いには慣れてないからなあ」
「上手く突けるかな」
ティングスさんたちは少し不安げな様子だけど。実際、銛で突く必要は無いかも。水面近くまで魚が上がって来てくれるなら、
「ももちゃん、また網を作ろうか」
「しんきろう、とったやつ?」
「もうちょっと丈夫なヤツだね」
網をつけるリング状の部品を、一回り以上太く作ってもらう形だ。
私は一応、魚網を検索して画像を出力する。ついでに捕らえた魚を入れておくためのバケツも。
「出来そう?」
「うん。よゆー」
ももちゃんはニカッと笑うと、粘土をコネコネ。筋肉おじちゃんたちが不思議そうに見つめる中、成形された網は、たちまち具現化して……
「お、おお!」
「なんだ、これは!」
ティングスさんたちの反応が気持ち良いのか、ももちゃんは「ふふん」と胸を反らしてみせる。
その後、バケツの方も作成し、準備は整った。




