13-1:子ルッフの小屋へ
翌日もブロクエの世界へと飛び込んだ。
今日は前回の報告からだね。ログアウトしたのがモノッキさんの執務室だったので、そこからスタートだ。階下に行って、ギルドを覗く。
「こんにちはー」
「ちは」
挨拶をすると、カウンターの中でしゃがみ込んで作業をしていたバナーリヤさんが顔を上げた。
「ああ、いらっしゃい」
言われずとも、前回の依頼書を引っ張り出してくれる。そこに完了印を押してくれて、報酬もカウンターの上へ。9000Gが入った皮袋と、フラワーコイン1枚。
「はい、確かに」
受け取って、コインはももちゃんのガマ口さんに仕舞った。
「次のクエストは……」
残ってる1枚。前回も見たヤツだね。
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No.13
<子ルッフレース>
依頼者:ルッフ小屋の管理人オロミド
内容:レースの運営補助ならびに子ルッフのケア
報酬:10000G
フラワーコイン2枚
備考:街の南西にある子ルッフ小屋を訪ねよう。
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こちらを剥がして持って行く。バナーリヤさんがハンコを押してくれて、早速クエスト開始だね。
「畜産の小屋が建ってる辺りは分かる?」
「あー、はい。寄りはしなかったですけど、遠目には見たので」
昨日、街をグルッと巡るようなクエストを受けたからね。
「んじゃ、いってらっしゃい」
見送られ、私たちはギルドを後にした。
一路、南へテクテク。今日も中々暑い。
「おっきなとりさんの、あかちゃん?」
「うん。赤ちゃんって程じゃないと思うけど。雛って分かる?」
「ひなちゃん。ほいくえんにいるよ」
陽菜ちゃんという子が居た記憶がある。ただ、そうじゃなくて。
「鳥の赤ちゃんから子供くらいまで、雛って呼ぶんだよ」
「じゃあひなちゃんは、おっきくなったらとりさんになるの?」
「いや。そうじゃなくてね」
思わず噴き出してしまう。人間の保育園児である陽菜ちゃんが、成長したら鳥になる。中々凄い進化系統だね。
「えっとね。音が同じでも、違う意味の言葉って沢山あるんだよ」
道中、そんな話をしてみたけど。あまり分かってくれた感じはしない。まあ、小学校に上がって国語のお勉強して……追々だね。
昨日も歩いた農地の周りの道を過ぎ、更に街の南西へ。
そこには木造の建物がいくつか建っていた。あれらが恐らく畜産場だね。
近づいて行ってみると、青いローブのおばさんが1人、キョロキョロしながら立っていた。私たちに気付くと、口を「お」の形にして、軽く微笑む。
「アンタたちかい? クエストを受けてくれた冒険者は」
「はい。幸奈と」
「ももちゃんです」
「あら、可愛らしい冒険者だねえ」
おばさんは目尻を下げてももちゃんを見る。
「アタシはオロミド。ここの畜産小屋の半分くらいを所有してるよ」
「わあ」
お金持ちだ。
「クエストの内容は見てくれたかい?」
「はい。ルッフの子供を飼ってるんですよね」
「そうだね。正確には預かってるって感じかねえ」
オロミドさんは小さく頷いて、
「ルッフは元々、人の手に余る存在だけど……たまたまこの数百年は友好関係だから、子供を人間に預けて育てさせてるんだよ」
「なるほど。昔は敵対関係だった?」
「敵対という程ではないよ。温厚な鳥だからね。ただ交流も無かった」
オロミドさんは、東の方を指さす。城壁以外に何も見えないけど。
「こっから更に東へ行って砂漠を越えた先に、大連峰がある。彼らはそこを根城にしているんだよ」
ふむふむ。こういう地理も後に役立つことがあるかも知れないし、頭の隅に入れておこう。
「蜃気楼が晴れる時期だけ、山から降りてきて輸送の全てを担ってくれる代わりに、子供たちを育てるという契約なんだ」
「そうなんですね。子供たちって、沢山居るんですか?」
「5羽だね。みんな懐っこくて可愛いよ」
「それは期待です」
可愛い鳥さんは大好きだ。ももちゃんも気に入ってくれるだろう。
「けど子供が育ったら……5羽もあんな大きな鳥が増えるんですよね? いくら大連峰とはいえ、キャパ的に大丈夫なんですか?」
「いや、あそこまで大きくなるのは稀だよ。まあ直接見た方が早いね」
オロミドさんが歩き出す。子ルッフ小屋に案内してくれるんだろう。私たちもついて行く。
「ひなちゃん?」
「うん。陽菜ちゃんじゃないけど、雛ちゃん」
「へんなの!」
ももちゃんは同姓同名(?)に、未だにご執心みたいだね。
「さあ、ここだよ」
オロミドさんが、1つの小屋の前で立ち止まり、そのまま観音開きの扉を大きく開けた。途端に、濃厚な獣臭がする。こういうところも再現されてるんだなあ。
そして。扉の向こうに木枠の柵が見えた。どうやらその中で飼育されているらしい。結構大きな鳥の姿が1,2、3。
「……ぷて……うーん」
プテラノドン認定しかけて、「違うな」と思ったらしい。親鳥の時も遠目に勘違いしてたよね。
まあ恐竜の祖先は鳥という説が有力だし、全くの的外れでもないワケだけど。
「それにしても。おっきいですね」
私より大きいと思う。つまり2メートル近くはあるかと。
体毛は茶色一色で、トサカというか、後頭部に寝グセみたいにピンと跳ねてる毛束がある。瞳はつぶらで、獰猛さは感じられない。柵越しでは胸から上しか見えないけど、そこまで筋肉質な感じもなく。どちらかといと毛がフワフワで、抱き着いたら気持ち良さそうだ。
――ぴゅい~♪♪
私たちに一番近い1羽が鳴く。すると、
――ぴゅい~♪♪
――ぴゅい~♪♪
残り2羽も鳴いた。そして更に、その鳴き声を聞いてか、柵の奥でニョキッと首が持ち上がる。こっちからは見えない奥の方で寝てたのかも知れないね。
――ぴゅい……
――ぴゅい……
寝起きだからか、声に力が無い。思わず噴き出してしまった。
うん、これは。オロミドさんが言う通りの可愛さみたいだね。




