表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第15話:砂漠の蒼光

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
104/107

15-8:ばいばい! マホロバ

 翌日。昨日の感動的な景色の興奮も、まだ胸のどこかに残ったまま。私たちはブロクエの世界へと飛び込んだ。今日はマホロバ最終日になるからね。色々回ろう。

 昨日ログアウトした新聞社前からだった。まずは社屋を覗いて、トロンカさんに挨拶をする。


「そっか。もうこれがマホロバでの最後の日になるのね」


「はい。クエスト5つ達成しちゃったんで」


「まだまだ取材の手助けをして欲しかったんだけど……仕方ないわね。元々、外の人だもの」


 と言いながら、トロンカさんはももちゃんの頭を撫でる。最初に比べて、ももちゃんもスンナリ受け入れていた。


「また来年、遊びにおいでね」


 そんな優しい言葉に見送られ、私たちは社屋を後にした。

 と、そこで。


「ああ、居た居た。幸奈、ももちゃん」


 ルアンミさんと出くわした。というより、私たちを探していてくれたみたいだ。


「今日、発つんだろう? アンタたちに一言礼を言いたくてね」


 朗らかに笑う。


「おむね、もういいの?」


「ああ、すっかり治ったよ。フジョルが少し拗ねてたけどね」


 彼も納得済みではあったけど、こうも簡単に治っちゃうと、やっぱり複雑なのも分かる。


「でも、あの子にも、もちろん感謝さ。今までの治療が無かったら、ここまで持ちこたえてたか分からないんだから」


「はい」


 絶対に意味はあったよね。

 

「ああ、そうだ。これ」


 ルアンミさんが何か渡してくる。受け取って見てみると、


「ふらわーこいん!」


 1枚、貰ってしまった。


「感謝の印だよ。受け取っておくれ」


 一瞬、遠慮しそうになって。彼女の優しい笑みに、言葉を引っ込めた。代わりに、


「ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」


 そう告げて、彼女ともお別れをした。






 南へと下る。城壁が近くなったことで分かったけど……既に少しずつ、景色がボヤけ始めていた。新たな蜃気楼が広がっているんだ。

 

「こんどは、こるっふちゃん?」


「うん。子ルッフと、オロミドさんたち」


 農地に踏み入り、どんどんと進む。私でも覚えられるくらい簡単な道のり。やがて小屋に着くと、ちょうど散歩させようとしていたのか、子ルッフたちを連れたオロミドさん&旦那さんの姿が見えた。


「おや。幸奈にももちゃん」


「挨拶に~来てくれたのか~?」


「はい。今日で出発なので」


「おうとにかえっちゃうの」


「そっか、まあ仕方ないね。ほら、子ルッフたちに触っていくかい?」


 近くの子ルッフが寄ってきて、ももちゃんを見つめる。抱き上げて、顔に近付けてあげると、幼児と幼鳥が頬擦りをした。癒やされる光景だね。

 結局、ももちゃんも私も全羽とチークを交わして挨拶とした。


「次来た時は、何羽かは倍くらいの大きさになってるよ」


 そんなことを教えてもらって、度肝を抜かれたよね。


 ………………

 …………

 ……


 街の東も回ってみると。観光客の姿がほとんど無く、数日前より落ち着いた雰囲気だった。売り子さんも声を張り上げていない。人々が顔見知りの店で日用品を買う、地元民だけの市場。貸絨毯屋さんのテントは大きさが半分くらいになってたよね。


 そのまま私たちは回廊へと向かう。庁舎に入る手前で、また侍女さんたちのお喋りが聞こえてきた。モノッキさんのマザコンエピソードかな。真相を知ってる私とももちゃんは顔を見合わせ「にしし」と笑った。

 靴の中の砂を落として、東口からお邪魔する。このマナーも、これで最後だね。


「お、幸奈にももちゃん」


「挨拶回りか?」


 ティングス&フィングスの双子と会った。大きな荷物を抱えている。聞けば応接室の模様替えをしているんだとか。応接室なんてあったんだね。


「昨日は凄かったな」


「中々できねえ体験だったぜ」


 嬉しそうな2人。なんだかんだ、一番お世話になったかも知れない人たちだけど、恩着せがましさは皆無だ。本当にナイスガイ兄弟だね。


「次来た時は、美味い飯屋に連れてってやるよ」

 

 そう言えば、ぼったくりに辟易して、この街ではグルメ探訪はしなかったね。ももちゃんの目がキラキラ輝く。


「サソリ料理の名店があるんだ。行こうぜ」


「……」


 輝きが消えるももちゃん。

 それを見て「わはは」と豪快に笑うオジサンたちは最後まで気の良い兄弟だった。

 2人と別れ、中央階段を上るも……モノッキさんは今日も姿が見えなかった。仕方ない。最後のご挨拶にギルドを訪れる。


「こんにちは」

「ちは」


「よく来たね。待ってたよ」

「こんにちは、幸奈さん。ももちゃんさん」


 バナーリヤ&フジョルの幼馴染ペアが待っていた。カウンターの中には入っておらず……手を繋いで立っている。


「あ、おててつないでる!」

「もしかして」


 私たちが囃し立てると、2人ははにかむように笑った。


「結婚することになったよ」


「あはは。お付き合いをすっ飛ばしてしまいました」


「ええ!? あ、でも。良いかも」


 お母さんのことがあったのは分かるけど。それにしたって煮え切らなかった2人。もう婚姻で縛るくらい強引に進んじゃった方が良いのかも。


 それから、2人とは少しだけ話した。あの美しい蒼光の舞う中、フジョルさんからプロポーズが行われたとのこと。ご馳走様だね。

 最後に昨日のクエストの完了印を押してもらって、報酬も受け取って。


「寂しくなりますね」

「また来てよ。今度は美味しい店で一緒に食べよう」


「さそりさんはいらないよ」


「え? サソリ?」

「肉料理のつもりだったんですが……」


 先程からかわれたことを話すと、2人は大笑い。ももちゃんは少しだけむくれていたけど、最後に2人に抱っこされた時は満面の笑顔だった。

 

 怪鳥ルッフの復路便、その出発時刻が迫っていた。みんな仕事の手を止めて、駆けつけてくれていた。オロミドさん、旦那さん。ルアンミさんとケガ明けのメックオルくんまで。トロンカさんに筋肉兄弟。そして一緒について来てくれた新婚さんたち。


「モノッキさんも来てくれたら良いのにね」


「まあマザコンだから」


 事情を知らない人たちが、そんな話をしているけど。

 きっと……いや、恐らく。彼らは。


「ルッフが出るよー! 早く乗ってー!」


 係の人に急かされ、私たちは慌てて怪鳥の背を駆け上がる。そのままカゴに入った。すぐに往路でも感じた浮遊感。翼の音。みんなの声もかすかに聞こえる。私たちは窓へと張り付いた。

 下を見れば、手を振るみんな。そして少し視線を上げて、北の方を見れば。


「あ。あおいひかり」


 宮殿の屋根の近く、淡い青と、その隣に人影。遠くてよくは見えないけど、手を振ってくれているようだった。

 やっぱり。ちゃんと見送ってくれたね。ももちゃんもニコニコしながら、


「ばいばーい! ばいばーい!」


 繰り返し、別れを惜しんでいた。

 私も一緒に街全体へ手を振って。


「ばいばい、マホロバ」


 お別れを言った。

 怪鳥は高く舞い、最後に美しい街の全景を目に焼き付ける時間をくれてから……反転し、加速したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ