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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第15話:砂漠の蒼光

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15-6:正体見たり

 持久戦開始から、20分ほど経った頃だった。ももちゃんは既に私の腕の中でグッスリ。これは本当に長丁場になりそうだと覚悟を決め始めていたものだけど、


「あ、あれは……?」


 東を見守っていたフィングスさんが小さく呟いた。その声で、ももちゃんもピクリと目を覚ます。おお、凄い。って感心してる場合じゃなかった。

 北を見ていた私も、首を右に向けて東を見やる。


「……」


 一見、星の輝きと見まがうような小さな光。だけどそれは、不規則に動いていた。夜空をジグザグに動く光点。


「ゆーふぉー」


 確かに、そんな動きにも見える。だけど例の円盤型ではないから、やっぱりUFОじゃない。


「俺たちが見たのと、多分同じ光だ! 青いヤツ!」


 西を見ていたティングスさんも、こちら向きに双眼鏡を構えながら、興奮気味に捲し立てる。


「北じゃなかったの!? 発生は別ってことかしら?」


 南を見守っていたトロンカさんが驚きの声。


「こっちに向かって来てるか?」


「はい。段々、光の球が大きくなってきてます」


 正確には分からないけど、200メートルくらい先まで来たかも。ジグザグに蛇行しながら飛ぶ、青い球。

 しかしそれは突然、パッと消失した。目蓋の裏に残像の光が焼き付く。


「「「え!?」」」

「いなくなっちゃったよ?」


 場の全員がロストしたみたい。正真正銘、一瞬で消えたということ。

 5人とも、半ばパニック状態のまま、双眼鏡を右へ左へ。

 と。私の視界の端に美しい青。慌ててそっちを捉え直すと、今度は南側の方に居た。


「こっち! あ、下がった!」


 みんなに伝えている間に、プラズマは急速に高度を落として屋根から見えなくなる。


「きっと窓だ!」


 あ、そうか。窓から家の中に入ったんだ。

 と、同時。


「うわああ!」


「これかい!? ぷらじゅまってのは!」


 中が大騒ぎだ。


「家屋に戻るわよ!」


 トロンカさんが逸早く動き出し、ハッチを開けて家の中へ下りていく。その後にオジサン2人。ティングスさんがももちゃんを抱っこしてくれたので、私も軽快に続く。


 部屋の中には、青い光球が居た。半身を起こしたルアンミさんの胸の辺りにボンヤリと宿っている。さっき見た時より小さい気がするけど、それでも異様な光景だった。

 

 バナーリヤさんは手を中途半端に前へ出したまま、落ち着かなく見守っている。最愛の母に得体の知れない物が貼り付いているのだから、今すぐ剥がしたい。だけど治してくれるという事前情報も信じたい。そういう葛藤から、あの挙動不審になってるんだと思われる。

 逆にフジョルさんは落ち着いていて、だけど油断なくルアンミさんの様子を観察している。急変があれば、多分バナーリヤさんよりも冷静に素早く、プラズマを剥がしにかかるんだろう。


「こ、これ。大丈夫なのか?」


「ルアンミ、なんともねえのか?」


 狼狽える筋肉兄弟とは対照的に、ルアンミさん本人は落ち着いていた。ゆっくりと頷き、


「多分、これは悪い物ではないよ。むしろ……ああ、そうか。ルッフや蜃気楼と同じ類じゃないかね」


 マホロバに益をもたらす存在。そこで不意にピンときた。もしかして、この光って……


「あ。弱まっていくわ」


 点滅を繰り返し、徐々に光度が落ちていく。


「きえちゃうの?」


 ももちゃんの疑問に答えるかのように、そのタイミングでプラズマは消えた。


「「「「「「「…………」」」」」」」


 全員の長い沈黙。それを破ったのはルアンミさんだった。


「かつてないくらいに体が軽いよ」


 言いながら立ち上がり、モモ上げ運動をやってみせる。場が少しだけ和んだ。とにかく、本当にプラズマに害は無かったと、確信が持てた。


「ぷらじゅまは?」


「あ、そうだった!」


「見ろ、やっぱり北だ!」


 ティングスさんの声に、私も窓際に駆け寄る。双眼鏡を構え、遠くを望んだ。すぐに発見する。青い光は来た時と同じくジグザグ飛行をしていた。北の宮殿へと向かっているように見える。


「……やっぱり」


 トロンカさんが言いかけた時、しかし光球は突如として掻き消える。まただ。さっきと同じパターンなら別の方角に出るのか。他のみんなも同じことを考えたらしく、北側の窓から離れていく。そしてあちこちに双眼鏡を向けているけど。


「たぶんね、あのらんぷのせいさんなの」


 ももちゃんの静かな一言。私もさっき、同じ推測をしたばかりだった。

 私たち姉妹は、北側を見張り続けていて……そして見た。

 宮殿のドーム屋根近く、以前私たちが上がったバルコニーのような場所。そこに再びパッと現れた青い光。流石に遠すぎてランプの姿までは見えなかったけど、そこに数瞬留まり、そして宮殿内へと入って行くのは確認した。


「どこ行った?」


「まだ出てきてないわ!」


 大混乱の場を他所に、私たちは静かに振り返る。


「光、見ましたよ」


「ど、どこに!?」

「呼んでくれたら良かったのに!」


 まあ確かに。けどなんか見入ってしまったんだよね。

 私は苦笑しながら、北の窓を指さす。


「宮殿の屋根近くに置いたランプの中に現れて……その後はきっと宮殿内に」


「な、なんと……」


「まあでも、合点のいく話ですね。不思議で強大な力。人々を助けてくれて、街を幸せにする。これはまさに」


「ランプの精の伝承通りだよね」


 幼馴染2人組がセリフを分け合うように言った。


「それじゃあ、次の行き先は決まり……っつーか答え合わせか」


「ああ。まさか自分の職場だったとはな。灯台下暗しだ」


 兄弟が笑い合う。


「僕はここに残ります。ルアンミさんを診ておかないと」


「だったらウチもだね。後で顛末は教えてよ?」


 残る幼馴染2人も、どこか晴れやかな顔をしていた。長年苦しめられてきた家族の不調が消えたんだもんね。


「よし、それじゃあ出発だね」

「だね!」


 ももちゃんと2人、音頭を取った。

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