繋がり
「ハッハッハッ!!」
豪快に笑う金髪の青い目の外人、店長の父親だと言われ翔は開いた口が塞がらない。
「えっ!?店長のお父さん?あの方が……」
後ろで南が祥子に説明を受けている。
同じく驚きの様子。
店長の北見隼人の父もシェフであり北見の師である、日本が好きでそのまま日本名を息子の隼人に付けてしまうぐらいだそうだ。
おかげで店長の見た目は金髪のイタリア人顔なのに北見隼人と言うギャップが生まれている。
しかし、このアルコバレーノを北見に譲り自身は東京で別の店を立ち上げたと聞いていたがどうしてここに?
その疑問は北見の妻祥子が答えてくれた。
「いつまで経っても親は子を心配するものよ」
単純ながらなるほどと納得してしまう。
「でもびっくりしたなぁ……もしかして祥子さん分かっててマルゲリータを?」
「うふふ、お義父さんは一流シェフよ?こんな機会なかなか無いんだからね」
確かに貴重な経験をさせてもらえた。
「へい、南君ペペロンチーノを一つ」
北見が南にオーダーをする、と言う事は流れ的に……
「は、はい!」
南が少しテンパりながらペペロンチーノを作り出す、緊張感が伝わってくる。
北見と北見の父は何やらイタリア語で喋りながら南を眺めている。
これはやり辛い、知らずにマルゲリータを作っていた自分はラッキーだが全てを知った上で作らなければならない南に同情する。
「さあ、夜の営業もオーダーストップね翔君看板入れといてちょうだい」
「あ、は、はい」
祥子に言われ外に出る。
電源を抜いて看板を抱え戻る時に北見と北見父が南を囲みペペロンチーノを評価して居るのが見える。
グッとサムズアップしてるので上手く作れたようだ。
看板を中にしまい最後のお客さんを見送ってテーブルには北見夫妻と翔と南、そして北見の父が残った。
「ハッハ!イイコタチダハヤト!」
「だろう?これからの若者さ」
「お義父さん飲みすぎないでよ、明日東京帰るんだから」
あっ!と北見父は何かに気付いて北見にイタリア語で話している。
「父さんがごめんね!私はインザーギ自己紹介が遅れてすまないだってさ」
「あ、大坂翔です!」
「南才賀です!」
インザーギは何やらまた北見を経由して話す。
「ふむ、二人共一流のプロになるならスキルも勿論繋がりを大切にするんだよ、一人じゃ店なんか持てない何にも出来ないぞ。だって」
「繋がり」……翔と南は二人呟き。
「沢山の繋がりのおかげでここに来れました、忘れられないです」
翔はそう答えた。
「一歩間違えてたらこの道は歩けなかった、先輩と同じ想いですよ」
南も答える。
北見はニコリと笑いインザーギへ二人の答えを返す。
「ハッハッハ!シンパイナイナ!!」
最後に一言北見に何かを伝えて立ち上がった。
「フフ、マタクルヨ!」
そう言い残しインザーギは静かに出て行った。
「店長、最後なんて言ったんですか?」
「ん?私に二人を絶対プロにしろ!だってさ」
期待の表れなのか身が引き締まる。
「さあさあお義父さん来て遅くなったけど片付けて片付けて!明日からも営業はあるのよ〜」
祥子は閉店作業を始め、男三人も片付け始めた。
——退勤して翔はアルコバレーノオープンの一日を思い出しながら歩く。
営業はしっかり出来たと思うし、北見の父インザーギが来たのは驚いたが期待の眼差しを向けられた。
あんな眼差しは初めてだった。
二年間の雑用幽閉から世界が変わり、やっと「歩きだした」と言える自信があった。
もう辛くは無い。
翔は家に一度帰ってタッパーを持ち、また外に出た。
いつもの空き地を通る、もう関係者以外は入れないようだ。
野良猫達も姿を消した。
いつもの空き地からもう少し歩いて小さな公園に辿り着く。
「こんなとこに公園があったのか」
翔は辺りを見渡しながら公園に入る。
ヒソヒソ声が聞こえてきた。
「おい、人間が来たぞ?」
「こんな時間に来るなんて珍しいな」
「ボスに報告するか?」
茂みから聞こえる野良猫の声。
あの日何故か備わった猫の言葉を理解出来る能力。
会話まで出来るのは今のところ一匹だけ、この辺りのボス猫だけだ。
「マサムネ」
そのボス猫を呼ぶ、わかりやすく滑り台の上から翔を見下ろしていた。
「……食い物は持ってきたか」
「ああ、お前の好きなやつだ」
月夜の下、マサムネとのおしゃべりが始まる……




