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月の下、猫が居る  作者: かずや


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オープン!アルコバレーノ!


 アルコバレーノオープンの日。

 店前には立派なフラワースタンドが置かれており、ついに開店するんだなといった雰囲気が漂う。

 オープンは午前十一時から十五時までの昼の部と、午後六時から十時までの夜の部に別れる。

 昨日のプレオープンで忙しくなった時の体験は出来ている。

 今日からは配ったチラシの効果やオープンの噂がどこまであるかの数日になるだろう。

 翔は店構えを目に焼き付けた。

 自身が初めて関われた店、夢の一歩。

 想う事が出てくるし、厳しいトレーニングもやってきた。

 息を吐き店に入る。

「翔君おはよう!アルコバレーノオープン!頑張ろうね〜」

 少しテンションが高い店長の北見が出迎えてくれる。

「はい!よろしくお願いします!」

 不安や緊張を吹き飛ばすように挨拶をした。

 奥では祥子と南が営業前チェックをしている。

「あ、翔君おはよう!着替えたら客席最終チェックお願いね」

 祥子の指示を受け準備していく、すっきりしたデザインのコックコートに身を包み客席へ向かう。

「先輩、店長達から昨日程の一気入りは無いはずだから落ち着けって言われましたよ……でも落ち着かないですよね……」

 南はどうも気が流行りだいぶ早くに来ていたようだ、意外とその辺りは敏感と言うか真面目さが故にプレッシャーを感じやすいのだろうか。

 翔自身もプレッシャーはあるが、どちらかと言うと期待が大きい。

 足掻いたところでもう時間は迫ってくるし、やれる事をやるだけなのだ。

「翔君は少し落ち着けてるね、覚悟決まってるの?」

 北見が話しかけてくる。

「覚悟……と言うかわかりませんけど、必死にやりましたから!」

「はは!そうだよね〜僕ら夫婦が教えたんだ堂々としてれば良い」

 店長北見はイタリアンのコンクール全国優勝者だし、奥さん祥子はピッツァコンクールアジア大会優勝者に加え接客コンクールでも入賞している。

 そんな二人に教われているのだから有り難く、自信はある。

「さあ、時間だよ皆!」

 アルコバレーノが正式にオープンする!

 店長北見自らが看板を出して、この日を迎えた!


 オープンしてすぐに記念すべき第一号のお客さんが来店。

 カップルで来られたようで手にチラシを持っている。

 (あの色は……店長の配ったエリアだな)

 数日前オープンチラシを四人で手分けした時に分けたチラシは、どの地域か目星が付くよう色が付いている。

 初めては店長北見からだった。

「いらっしゃいませ!」

 元気良くお冷をお持ちする、メニューを見ながらカップルはパスタの種類を聞いてきた。

「そうですね、うちのイチオシはペペロンチーノがシンプルなのに驚かれると思いますよ。ピッツァもあちらの石窯で焼き上げが眺めれます!」

 スッと自分で驚く程言葉が出て来た、トレーニングの成果もあるが店に関わってきたからこそ迷いは無かった。

 カップルはじゃあペペロンチーノとマルゲリータで、と初めての注文をキッチンに通す。

「ペペロンチーノ、マルゲリータです!」

「了解〜」

「任せなさい〜」

 キッチンの北見夫妻はアイコンタクトを取り互いのタイミングを合わせて行く。

 これがなかなか凄い、パスタとピッツァは時間差があるのだが基本オーダーに合わせて同時に出して来る。

 作り始めた途中で次々とお客さんが入ってきて南と共に接客していく、昨日のプレオープンみたいに最初から満席にならないので流れが出来ている。

「はい、六番テーブル上がりだよ〜」

 カウンターにペペロンチーノとマルゲリータが置かれる。

「お待たせしました〜ペペロンチーノとマルゲリータでございます」

 机に置くと小さな歓声が上がる。

「うわぁ」

「美味そう……」

「ごゆっくりどうぞ」

 翔は一礼して席を離れ、カップルの一口目を横目で眺める。

「!!」

「あっ美味!」

 どうやらお気に召してくれたようだ、止まらず食べ進めて行く。

 近くのテーブルでは「おお!」と声が上がる。

 祥子が開ける石窯に素早く取り出されるピッツァ、そしてそのピッツァから出る湯気ととろけるチーズの絵面がお客さんを釘付けにする。

「あの、追加でこのクワトロフォルマッジを一枚」

「ありがとうございます!クワトロ追加です!」

 心なしか石窯が開く度に追加ピッツァが頼まれていく。

 オープンしてから時間が経ち、お客さんも二回転くらいした。席は満席に近い状態を保ち続けている。


「ありがたい事だねぇ、もっと始めはスカスカを予想してたよ〜」

 キッチンから北見が笑いながら言ってくる。

 これから名前が広がり人気店になるはずだ、翔はそう手応えを感じていた。

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