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月の下、猫が居る  作者: かずや


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38/45

完成度


 ——全体トレーニング開始から五日目


「南」

「ハイ」

 サッと最低限の言葉と動作で連携を取る。

「うんうんだいぶ馴染んできたね」

 店長の北見は拍手して褒める。

 少しは成長出来たのかもしれない、ただまだ気は抜けない。

 今南と共に作り上げているのはペペロンチーノ、最初に習い以降ずっと作り続けている。

 シンプルなパスタ故に難しい。

 共に同じ材料同じ時間、なのに味が変わる不思議なパスタを規定以上のレベルで安定させるのに苦労……していた。


「出来ました」

「こちらも」

 北見が近付いてフォークを持つ、まずは南のを一口。

「……ふむ」

 続いて翔のを一口。

「……うむ」

 反応からじゃ分からない、キッチンが使えるようになってからは約二週間経つ、その間パスタはずっとペペロンチーノしか作っていない。


「……二人共食べてみて」

 北見は定期的に自身のペペロンチーノをお手本に残す。

 それが毎回美味い、同じ材料同じ時間同じ空間で圧倒的にレベルが違う。

 北見からの指示は「このペペロンチーノを作れるようになる事」だった。

 南と共に自身が作ったペペロンチーノを一口……


「……!」

 (……近い!!)

 一口で分かった、間違いなく北見のペペロンチーノに限りなく近付いた!

 南も自身に満ちた顔だ、そして互いのにも一口。

「間違いない、同じゾーンだ」

「はい!」

 パチパチパチパチ

 北見夫妻が拍手を贈る。

「あんた達やるじゃない、隼人気が抜けないよ?」

「ハハハ!約二週間か!参ったね〜一ヶ月は見てたのに味のレベルは到達して来たか〜」

「……と言う事は」

「合格、しかも二人共にファーストステップクリアだ」

 翔と南は拳を握り喜びを噛み締める!


「……ん?ファーストステップ?」

 南が気付く。

「そうだよーだってまぐれかもしれないでしょ?次は毎日ムラなく出せるかだもん」

 北見は笑っている。

「うへぇ〜まだまだ遠いなぁ!」

 翔は気が抜けた。

「ふふ、でも土台は出来たよ、この技術が他のパスタアルコバレーノの原点だからね〜君達はペペロンチーノしか作ってないつもりだったかもだけど全パスタメニューの基礎技術を学んでいたんだよ」

 翔も南も目を丸くする。

「実感が……」

「そうだなぁじゃあアラビアータのレシピは大丈夫だね?」

 レシピ自体は全て頭に詰めている、問題はない。

 軽やかに北見は食材を操りササっとアラビアータを作った、「食べてみて」北見の促しに南と一緒に食べる。

 トマトの旨味から爆発的な良い塩梅の唐辛子が効いてくる、ペペロンチーノとは違うタイプのトマト系。

「じゃあいこっか」

 北見の意図は確認するまでもない。

 何も言わずに南と並ぶ。

 北見の動きと出来上がり、レシピを頭から引き出してスタートした!

 ——「出来ました」

 二人は揃ってフィニッシュ、後は味だ……

 北見はまた二人のを食べ比べた後、翔と南に食べさせる。

「ぐ!?」

「おお!!」

「一口目はインパクトあるけど全体を感じてごらん」

 全体?食べ進めていくと感じてくる全体のまとまり、ここは大きくブレてない。

「これは唐辛子の熱タイミングですね……」

 南が分析している。

「そうだね、僅かに唐辛子を油に浸からせ過ぎてたね、でも基礎は固まってるから修正すれば近くなるよ」

 翔は教え方が凄いなと感じた、一つ一つでなく基礎を固めた上で修正すれば良いだけ状態にしている北見の計画性を。

「まあ開店は明後日、まだ完全には到達してないけど期待できるね!毎日進めて行こう!」

 北見はそう言って今日の試作を締め括った。

「さあさあピッツァもやるよ、ほら生地伸ばして!」

 次は祥子の番だ、生地伸ばしは祥子には敵わないが合格ラインは貰えた、後は名前に必要な材料をリンクさせて素早いトッピング。

 そして石窯の使い方だ。

 窯の中はもちろんスペースに限りがある上、温度まで変わるクセがあるのだ。

「このクセで一部分だけ焦がすのが泣きそうになる」

「先輩、同じくです。だいぶ慣れましたが忙しいとダメでしょう」

 南ですら手を焼く石窯、ただ焼きたてのピッツァの破壊力はヤバい。

 見惚れてしまう。

「ほらほらお客さん見てるよー!」

 そう、さらに石窯はパフォーマンスも兼ねるので堂々としなくてはならない。

 ここはここで忙しい。


 キッチン一巡すれば全体シミュレーション、南と共にフロアを周る。

 幸い中の使用食材やメニュー説明はキッチンもやるから出来る、アルコバレーノのスタート時の形は店長北見がメイン、ピッツァ祥子でフロアは翔と南コンビになる。

 学ばせてくれながら働かせてくれる事に感謝だ。

「どうしたのニヤニヤして」

 北見に突っ込まれる。


「さあ皆、明後日オープンだよ!……の前に明日プレオープンありまーす」

「へ?」

「プレオープン?」

 驚く翔と南だが北見は続ける。

「僕ら夫妻の友達に声掛けてるから実戦だよふふふ」

 いきなりのイベントにオロオロしてしまう翔だ。

 対して南は気合いを入れてる。

 この辺りは場数の差が出る。


 いくら悩んでも明日は来る!と腹を括って翔は頬を叩いた!

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