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月の下、猫が居る  作者: かずや


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決着


 翔が一日居た洗い場、普段誰も来る事もなく一人閉じ込められた場所。

 店の売り上げが無くなったと騒ぎになり、数分も経たず見つかった。


 翔しか居なかったはずの洗い場から。


「テメェ大坂!やっちゃいけねぇ事やったなぁ!?」

「どう落とし前付けるつもりだ!?」

 先輩スタッフ達が反論前に詰め寄って来る。

 状況的に見れば翔が売り上げを盗み、一時的に自分のエリアに隠していた……そう見るのが普通だろう。


 そう、普通ならば。


「ふーっ、大坂お前辞める前にやらかしたな?」

 ネロの店長、東は歩きながら近寄り翔の目の前に立った。

「拾ってやったのによ、俺は悲しいぜ。だが今まで貢献してくれたんだ、警察には行かないでやるよ」

 東が喋る間のスタッフはどこかニヤニヤとしている、後輩の南だけは青ざめているが。

 翔は何も()()()()()()()()、余りにも稚拙で荒い……子供のやるような謀略は明らかだったからだ。

「おい!大坂何とか言ったらどうだ!!」

 涼しい顔をする翔に苛立ったのか東は壁を叩きながら威嚇する。


「……どうしようと言うんですか?」

 翔は重い空気の中口を開いた。

 ここまでやるには理由があるはず、翔は落ち着いていた。

 東は頭を掻きながら声を荒げる。

「テメェはクビだが迷惑金は払って貰うぞ?勿論給与も退職金も全部無し、懲罰解雇だ!」

 翔はこの一週間辞める宣言をした時から、スタッフ達に付き纏われていた違和感が繋がった。

 後は辞めるだけの下っ端雑用係に掛ける力では無い、おそらくこうなる様に計画していたのだろう。

 店長の東と一部の古参スタッフ共謀で。


「そうですか……わかりました」

 翔は俯きそう答えた。

 東とスタッフは笑みを浮かべる。


 プライドの高さから辞められる選択肢を、雑用係に選ばれたのが許せないのもあったのだろう。

 ならば辞めさせる原因を起こし、クビを宣告。

 それが事件性のモノなら内々に処理して、給与や退職金もカット、迷惑料等といつの時代で何の組織かわからないような事も出来る……そして、それで抑えれる無知な奴だと認識されていたのだろう。

 翔は流石に軽い怒りは湧いたが、「そこまで馬鹿じゃないよ」と心で呟き深呼吸をした。


「警察で話しましょう、店長」

「あ!?俺の話聞いてなかったのか!!」

「聞いた上でですよ」

 チラリと南を見る、ハッとしてゆっくり姿を消した。


「店長、迷惑料はいくらですか?」

「テメェ……五百万用意しろ!これから先逃さない様に印鑑や通帳は置いていってもらう、それでも逃げたら……大切なお母さん泣くだろうなぁ?えぇ?」

 既に一線は越えているが、翔に取って一番のラインを東は踏んだ。

 母を出さなかったら少し抑えれたかもしれない。

 東は翔を服従させてると勘違いの絶頂だった、おそらく迷惑料はスタッフに分配もあるのだろうが……一銭も払う事は無く、じきにこの事件は解決する。

 翔は窓際の時計をチラリと見て、その窓から眺める見知った顔に気付く。

「……ハハ」

「あ?何笑ってんだ!?」


 今日一番の東の怒声が響き、同時に裏口が開いた。


「ハイハイ、お兄さん達通報あったから動かないでね」


 雪崩れ込んできた三人の警官、終わりなんてのは呆気ないものだ。

「は?え?なん……で、サツが」

「え?え?」

「おい誰だ!?」

 スタッフ達の混乱が広がる、主に今回の謀略に関わったスタッフだろう。

 東は目を白黒させへたりこんでいる。

 翔はそんな東に別れの一言を告げた。


「雑用係を舐めすぎですよ」


 キッとコチラを見て拳を振り翳したところを警官に抑えられた。今ので一つ罪が増えたのかもなと、翔は警官にお礼を言い洗い場の最上段の棚からスマホを取った。

 今日までの流れは全て記録してある。

 これがあったから冷静でいられた。

 これは自分を守る為に闘った物だ。

「……南、ありがとうわかってくれたんだな」

「先輩……」

 南に目線を送った意図を理解してくれた、警察は南が呼んでくれた。あのままだと翔が動けなかった。

 唯一の味方、本当に助けられた。

 そして、先程笑ってしまった原因が居た窓の端を見たが何も居ない。

 (心配してくれてたんだなぁ……)


 翔と東、一部スタッフは警察署まで事情聴取の為パトカーに別れて乗せられた。

 これから少し時間がかかるだろう、思わぬ一日。

 イタリアンレストラン「ネロ」との少し早い別れになった夜。

 

 証拠提出や一連の流れ説明、調書を取るのに朝まで時間が掛かったものの、翔は闘いの終わりに晴れやかな気持ちだった。

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