野良猫ガーディアンズ
——翌朝、マサムネの縄張り
「……と言う訳だ、翔を二週間守る」
「任せてください!」「爪がなるぜ!」「連携戦なんていつぶりかしら」
空き地に様々な猫が集まり、ひとによっては楽園と呼ぶだろう。
中心に居るのはマサムネ。
昨晩襲われそうだった翔を守る為に発足された野良猫ガーディアンズだった。
総匹二十匹は居る。
作戦は各地に散りながら翔が街中、特に死角から襲われないように鳴いて知らせるといったもの。
猫達は早速街中に散って行った。
朝八時、翔は店に開店準備で出勤した。
店までは十五分くらいだが住宅地を横切るので死角が増える。
早速後を付ける男が居た、店の匂いがしているネロのスタッフだろう。
第一発見者は翔とも面識あるコテツだった。
コソコソしていた男の後ろに音もなく陣取り……
ミャアーーオ
前を歩く翔も不意の鳴き声に振り返る、すると店の先輩スタッフと目が合う。
「あ……」
「……先輩朝早いですね」
「散歩してるだけだよ!サッサと下準備してろ!辞めるからって適当にすんじゃねえぞ!」
言うだけ言って反対に逃げてしまった。
「……ふ、コテツありがとうな」
言葉が交わせるのはマサムネだけだが、一応礼を言っておく。
コテツは尻尾を振り返してくれた。
「猫に守られるか……凄い事になったな」
翔は頬を掻きながら店に着いた。
翔が店に入ると猫は手出し出来ない、ここは守られてばかりじゃいられないと、翔が一番居る場所の洗い場天井近くにスマホをセットした、本来は良く無いだろうし殴られたりするかもだが記録しておく事で営業中の証拠になる。
(しかし、辞めるだけでなんでこんなになるのだろう?)
少し妙な感じではあった。
営業が始まり時間は過ぎていく、先輩スタッフ達の当たりは明らかにキツくなっているが辞めると分かっていればそう気になるものでも無い。
翔は翔のいつもの役割を全うするだけだった。
閉店を迎え南と掃除を済ませて施錠をする、そして店前で方向の違う南と別れていつもの空き地に向かう……
ニャアオオー
また不意の鳴き声に辺りを見回すと……先輩スタッフが居た。
「……お疲れ様です」
「……ただの散歩だ!くそっ猫が!」
悪態を吐きながら歩いて行ってしまった。
「……ありがとうな、お前も来いよ。飯あるぞ」
翔は助けてくれた猫に声を掛けて再度空き地に向かった。
「いやぁ……凄いなお前達」
「……ふん、野良猫ネットワークを舐めない方がいい」
もう事実三度も、何か未然に防がれた。
「感謝するよ」
そう言ってタッパーから今日はちょっと良いカリカリを出した。
「ん?今日はまた小さなやつだが」
「ああ、カリカリ。これなら皆にお礼しやすいかなって」
パラリと数粒マサムネの前に置く、カリカリカリカリ。
この音由来か正式名称はなんだろうな?とカリカリを掴み少し撒いておく。
本当は完全に餌付けになっているから、ダメなんだろうが今日だけご近所には許して欲しい。
「しかし、何で狙われるみたいな事になってるんだろうな?」
「それは知らん、奴らの匂いや表情からはボスが居そうだがな」カリッ!ガリッ!
ボス、その言葉に浮かぶのは一人だけだ。
「まあ……そうなるか」
事実ネロ内は完全な店長絶対主義である、そこに一番の下っ端が泥を塗る形で「こんな店無理」と低評価したのだ、何かしら怒るだろう。
——数時間前
ネロ店長の東は憤慨していた。
「あのクソガキ拾ってやった恩を忘れやがって!おい!お前ら……事故ってのは何故か起きるもんだよな?」
「ウス!」
「アイツが事故ったら残りの給料も止めれるんだがなぁ?」
「ウス!」
「大坂が怪我しないようにちゃーんと見てやらないとな?」
「ウス!」
「……行け」
——現在、月の下の空き地
「まあ店長のプライドを傷付けるやり方だったよ、確かにそこはもっとやりようがあったかな……」
「……ふん、プライド等生きる為に必要か?俺達は泥水飲んでゴミも漁る、場合によっちゃあざとさで食い物を恵んで貰い生きてるぞ」
「いや、それは野良猫であってな……人間は複雑なんだって」
「人間とは何でも出来るくせに何も出来んのだな」
マサムネの言葉が響く。
「まあ心の方向次第?かな。俺も最近気付いたけど」
「人間は複雑過ぎてよくわからん、だがお前はまだシンプルなアホ人間だから良い」
「それ褒めてるのか……」
胡座をかいた膝にぴょんと一匹猫が乗ってきた、野良猫にしては珍しい。
「人間、ボスばかりズルい。カリカリ寄越せ」
こっちの言葉は通じないが、そっちの言葉は通じる。
お望み通りカリカリを撒く、数匹が取り合いをし始める。
なんだか今が一番平和だなと気が抜ける。
「……もう今日は力を抜け、周りに敵はおらん」
マサムネは言った。
なんとありがたい事かな、翔は月を見て笑った。




