第86話:忙しくて目が回りそうだ~ファラオ視点~
「殿下、どこに向かわれるのですか?ソリティオ様とソフィーナ様が怪我をなされて、公務がこなせないとあって、やらなければいけない事が山ほどあるのですよ。セシル様も、今騎士団の方が忙しいそうで。唯一手伝えるアレック様も、今日はどうしても来られないとあって、殿下お1人でこなさないといけないのです。
とにかくこの書類に目を通してください。この書類に不備がなければ、正式にアラバシア王国と契約を結べるのです。万が一不備があったら大変ですから」
山のような書類を前に、僕は途方に暮れていた。愛するソフィーナとその兄ソリティオが怪我をしてから、早4日。ほぼ1人でアラン殿下とアイリ殿下の相手をしつつ、膨大な契約書に目を通さないといけないのだ。
「さすがに1人では無理だ。ソフィーナは怪我をしていて可哀そうだから無理だが、ソリティオなら問題ないだろう。すぐにソリティオに連絡を入れてくれ。書類仕事ならできるだろうと。そもそも公爵と一緒に、今回の事故の件を調べていると聞いた。そんな元気があるなら、僕の手伝いも出来るはずだ」
そうだ、どうして僕はソリティオまで休ませることにしたのだ?それに既にソリティオは、車いすを使いながら、公爵の仕事を手伝っているのだから、公務もこなせるだろう。
「承知しました。早速ソリティオ様に連絡を入れます」
その後ソリティオから、明日から僕の仕事を手伝いに王宮に来てくれるとの連絡が入った。最初からそうすればよかった。既に4日もソフィーナに会えていないのだ。
明日はソリティオに仕事を任せて、少しだけソフィーナに会いに行こう。
翌日。
有難い事に、この日はファラオだけでなく、アレックとセシルも王宮に来てくれたのだ。
「それでソリティオ、怪我の調子はどうだい?事故の原因は何だったのだい?」
「俺もそれが気になっていたのだよ。まさかあんな場所で、脱輪をするだなんて。ちょっと考えられなくてね」
アレックとセシルが、ソリティオに問いかけている。確かにその点は、僕も気になるところだ。
「どうやら何者かが、車輪に細工をしたようなんだ。ただ、まだ犯人が特定できていなくてね。一歩間違えれば、俺もソフィーナも、もっとひどい怪我をしていたかもしれないと思うと、腸が煮えくり返る思いだ。
今父上とアレソーヌ侯爵、ローディン伯爵とルドルフ殿が調べてくれている。まあ、ある程度犯人の目星は付いたのだが。今決定的な証拠を手に入れるため、陛下にも協力を依頼していると聞いている」
「犯人の目星がついているだと!その話、僕は聞いてないよ。ソフィーナにあんな酷い怪我をさせた奴は、どこのどいつだい?僕が八つ裂きにしてる!」
「ファラオ、落ち着いてくれ。まだ決定的な証拠もないから、今はまだ内緒にしていてくれ。とにかく、今調べているところだから。また進展があったら、きちんと伝えるから」
進展があったらきちんと伝えるだなんて、呑気な事を。僕の可愛いソフィーナが、あんな大けがをしたのぞ。可哀そうに、きっとものすごく痛かっただろうに…
考えただけでも、胸が張り裂けそうだ。
こんな所で仕事をしている場合ではない。一刻も早く、ソフィーナの様子を見に行かないと!もしかしたら僕が来ない事で、寂しい思いをしているかもしれない。
「悪いがちょっと出かけてくるよ。すぐに戻るから」
「ファラオ、どこに行くのだい?まだ確認しなければいけない仕事が、山ほど残っているのだよ。どうせソフィーナの元に向かうのだろう?ソフィーナに会いに行ったら、すぐには戻っては来ないだろうが!」
さすがソリティオ、僕の気持ちを理解している。
「もう丸4日もソフィーナに会えていないのだよ。僕は殿下たちの相手をしつつ、この膨大な書類を1人で処理していたのだよ。本当に死ぬかと思ったよ。少しくらいソフィーナの様子を見に行っても、罰は当たらないだろう?」
そうだ、この4日、ソフィーナにも会えず、1人で頑張って来たのだ。ちょっとくらいソフィーナに会いに行っても、文句を言われる筋合いはない。




