第80話:ファラオ様にも心配をかけました
「随分話に花を咲かせている様だが、そろそろ帰ろう。アレソーヌ侯爵殿、夫人、ルドルフ殿、ソラ嬢、今日は本当にありがとうございました。ソフィーナだけでなく、ソリティオまで手当てをして頂きまして」
お兄様の手当てですって?一体どういうことなのだろう。
「あなた、ソリティオの手当てって、一体なんなの?」
お母様も同じ事を思ったのか、お父様に問いかけている。
「実はソリティオも、足を怪我していて。ソフィーナが大けがをしていたこともあり、自分の怪我の事を隠していたのだよ。それをルドルフ殿が、気が付いて下さって。先ほど治療を受けたのだが、どうやら骨折していた様でな。全治1ヶ月だそうだ」
「全治1ヶ月ですって。私よりも酷いではないですか!お兄様ったら、無理をなさって…」
「ソフィーナもソリティオも、最後の交渉は出られそうにないからな。今王宮に使いを出したよ。ただ、ソリティオは這ってでも王宮に行くと言っていて。本当に責任感だけは非常に強い様だ。ソリティオは既に馬車に乗せているから、私たちも急ごう」
「分かりましたわ。ソリティオったら。でも、あの子らしいわね。アレソーヌ侯爵夫人、楽しいお時間をありがとうございました。また我が家にもぜひ遊びに来てください。ソラ嬢も一緒に」
「ええ、そうさせていただきますわ」
私たちもそれぞれ挨拶を済ませ、馬車に乗り込んだ。とはいえ、私は歩けないため、女性の護衛に運んでもらった。ファラオ様ならきっと、男性に運ばれるのを嫌がるはずだろうから。
これからは出来るだけファラオ様が嫌がる事を避けたい、そう思っている。
ソラ様たち家族、ルドルフ様に見送られ、アレソーヌ侯爵家を後にした。
「お兄様、お怪我をしていたのなら、すぐにおっしゃってください。私よりも酷い怪我をされていたそうですね。本当にお兄様は!」
「そんなに大したことはないよ。それに事故当初は興奮していて、痛みをあまり感じなかったんだ。それよりも、今回の事故の…いいや、何でもない」
「ソリティオ、ソフィーナに隠しても無駄だよ。すべて話しておこう。実はね、公爵家の馬車に、車輪が外れる様に細工がされていたのだよ。御者が馬車の点検をしたときには、何ともなかったとの事だから。その後に何者かが細工をしたのだろう。
まさか我が公爵家に、喧嘩を売って来る人間がいるだなんてな。それも王宮で警備が厳重の中、こんな大胆な細工をするだなんて。この件は、私とアレソーヌ侯爵殿、ローディン伯爵殿とルドルフ殿が中心に調査をする事になったよ。
きっと陛下も、手を貸してくれるだろうし。ただ、今回の細工が特殊な道具を使われていたから、もしかしたら…いいや、何でもない」
お父様が何かを言いかけて、止めた。特殊な道具を使われていたとは、一体どういうことなのかしら?もしかして…
いいえ、そんな事をするメリットはないはず。でも…
何だか一気に不安が襲う。
とはいえ、お父様たちが調査をしてくれるのなら、きっとすぐに犯人は見つかるだろう。
「さあ、屋敷が見えてきた。ソリティオもソフィーナも、今日は大変だったな。ゆっくり休んでくれ…あれ?あの馬車は」
王宮の馬車が我が家に停まっていた。もしかして…
「ソフィーナ、事故に遭ったのだって?大丈夫かい?可哀そうに、足を怪我したそうだね。なんて事だ、やはり僕が送っていくべきだった。すまない、ソフィーナ」
「ファラオ様、わざわざ心配して来てくださったのですか?私の怪我は大したことはありませんわ。それよりも、お兄様の方が怪我が酷くて…」
「何が大したことがないだ!深く足を切って、縫ったそうではないか。可哀そうに、さあ、僕が部屋まで運んであげよう。もしかして君を運んだのは…」
「私を馬車まで運んでくださったのは、女騎士の方なのでご安心を」
「それならいいんだ。さあ、行こう」
私を抱きかかえ、馬車から降りていくファラオ様。あまりの急な出来事に、お父様もお母様も、お兄様までも何も言えずに固まっていた。
とはいえ、ファラオ様はもう家族の様な方なので、お父様たちも何も言わないのだろう。




