第70話:まったく男どもは…
“ファラオ様、ご挨拶を”
「あ…ああ、そうだね。ようこそ我がソフリス王国へ。私は王太子のファラオ・ディア・ソフリスです。隣が公爵令嬢で私の婚約者になる予定のソフィーナ・リレイスト、その隣が彼女の兄で公爵令息のソリティオ・リレイスト。そして同じく公爵令息のアレック・ファリオンとセシル・ラフィスです。
我々5人で、殿下たちをご案内いたしますので、どうぞお見知りおきを」
我に返ったファラオ様が、挨拶をしたのだ。
「ご丁寧にありがとうございます。せっかくなので、この国をゆっくり見させていただきます。それから、我が国の特産品も見ていただけると嬉しいです。ぜひ我が国との貿易も、視野にいて下さい」
「もちろんです、アラバシア王国は資源豊富な、とても素敵な国だと聞いておりますので。立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」
皆で王宮の客間へとやって来た。すると何を思ったのか、お兄様が
「アイリ殿下とおっしゃいましたね。どうぞこちらへ。申し訳ございません、もっと座り心地の良い椅子を準備すればよかったのですが」
なぜかアイリ殿下をエスコートしている。
さらに
「アイリ殿下、お疲れでしょう。すぐにお茶とお菓子を」
「足を少し上げると楽になりますよ。すぐに台を」
アレック様やセシル様まで、アイリ殿下にまとわりついている。確かにアイリ殿下は非常に美しくて魅力的な女性だが、さすがにやりすぎだ。
「皆様、ありがとうございます。ですが私は疲れておりませんので…せっかくなので、兄と一緒に王宮内を…」
「それでしたら俺が案内します!」
「いいや、俺が」
「俺が案内するから、君たちは黙っていてくれ」
お兄様とアレック様、セシル様が次々と手をあげている。ちょっと、いい加減にしてほしいわ。
「お兄様、アレック様、セシル様、いい加減にしてくださいませ。アイリ殿下が困っておられますわ。アイリ殿下、私でよければ案内しますわ。どうぞこちらへ」
すっとアイリ殿下の手を取り、男たちをしり目に歩き出した。本当に何を考えているのかしら?
「アイリ殿下、兄たちが本当に申し訳ございませんでした。いつも冷静なのですが、今日は少し頭がおかしくなっていた様で。お見苦しいところをお見せしてしまって」
申し訳なさすぎて、アイリ殿下に頭を下げた。
「お気になさらないで下さい。いつもの事ですから…」
悲しそうに呟くアイリ殿下。いつもの事とは、どういう意味なのだろう。よくわからないが、まあいいか。
気を取り直して、王宮内を案内していく。そして最後は中庭だ。
「アイリ殿下、ご覧ください。この花は我が国でしか咲かない虹色に輝く花なのです。昼間はあまり分かりませんが、夜にはとても綺麗に光るのですよ。もしよろしければ、自国に持って帰って頂いてもよいかと。
我が国では特殊な液に付ける事で、最長1ヶ月持つのです。今他国に輸出するために、栽培にも力を入れておりますの」
「そうなのですね。とても綺麗な花ですね。この花を見ていると、なんだか幸せな気持ちになりますわ」
「それは良かったです。それでは今日のお土産に、1本どうぞ」
庭師からハサミを借り、1本切ると、アイリ殿下に渡したのだ。すると、大きく目を見開くアイリ殿下。そして、なぜか泣きだしてしまったのだ。
嘘…どうして泣くの?私、何かやらかした?
「も…申し訳ございません。もしかしてこのお花、お気に召しませんでしたか?」
どうしよう、私、何を間違ったのかしら?オロオロする私に
「違うのです。こんな風にご令嬢の方に優しくされたのは、初めてで…私、いつも令息を虜にしてしまうせいで、令嬢たちから目の敵にされることが多くて。貿易先でも、親切心に見せかけて、嫌がらせをされたりすることも多々ありまして。
そんな中、ソフィーナ様は私の為に、一生懸命宮殿や中庭を案内してくださりました。それが嬉しくて。こんな高価なお花まで頂けるだなんて」
なんと!そんな事があっただなんて。




