第68話:疲れました
「ソフィーナ、今回はこの程度で許したけれど、次はないからね。分かったかい?」
「はい、承知いたしましたわ。本日は本当に申し訳ございませんでした」
既に魂が抜けている私は、とりあえずファラオ様に謝る。そもそも、あんな恥ずかしい事を長時間させるだなんて、ファラオ様は鬼だわ。何てこと、もちろん言える訳がない。
とにかくもう二度と、ファラオ様を怒らせないようにしないと、私の体が持たない…
「それじゃあ今日は、ゆっくり休むのだよ。明日はアラバシア王国の王太子殿下と王女殿下が来る日だ。君には僕のパートナーとして、一緒にもてなしてもらう事になっているからね。本当はソフィーナを、アラバシア王国の王太子になんて会わせたくはないが、貴族たちがうるさくてね。
本当に嫌になるよ。いいかい、分かっていると思うけれど、明日は絶対に僕から離れてはいけないよ。分かったね」
「はい、分かっておりますわ」
お願い、今日はもう疲れたから、どうか解放してください。明日はうまくやりますので。と、都合の悪い事はそっと心の中で呟く。
「それじゃあ、また明日。おやすみ、ソフィーナ」
「おやすみなさい、ファラオ様」
私に口づけをして、馬車に乗り込んでいくファラオ様を、笑顔で見送った。やっと解放されたわ。
既にぐったりになりながら、屋敷に入る。
「あれ、ソフィーナ。随分帰りが遅かったね。俺よりも早く、会場を後にしたのではなかったのかい?」
涼しい顔で話しかけてくるのは、お兄様だ。お兄様のせいで、私がどんな目に遭ったか!お兄様め!
何て事は言えない。
「ええ、ちょっと色々とありまして。今日は非常に疲れましたので、ゆっくり休みますわ」
「もしかして、ファラオに怒られたのかい?ファラオはちょっと嫉妬深すぎるところがあるからね。本当に困った奴だよ。明日もあるし、今日はゆっくり休むのだよ」
ファラオ様が嫉妬深い事を知っているのなら、もう少し行動を自粛して欲しいわ!そう言いたいが、今まで散々迷惑をかけてきたお兄様に、そんな事が言える訳がない。
「はい、ありがとうございます。それではおやすみなさい」
今できる私のありったけの笑顔で、挨拶をしてその場を後にする。
部屋に戻ると、すぐにドレスを脱ぎ、湯あみをする。メイドたちが奇麗に体を洗ってくれるのが、とても気持ちがいい。
「…様、起きて下さい、お嬢様」
「んん?ここは?」
「お嬢様、浴室で眠ってはいけません。すぐにお着替えを行いますので、浴室から出て下さい」
あまりにも疲れすぎていたせいで、どうやら浴室で眠ってしまったようだ。急いで浴室から出て、髪を乾かしてもらった。
そしてベッドに入る。これでやっと眠れるわ。
今日は本当に色々とあった。せっかく大切な友人、ソラ様の婚約披露パーティだったのに、ろくにお祝いが出来なかった。それどころから、ファラオ様には怒られるし、散々だったわね。
それでも、ソラ様の幸せそうな顔が見られたから、まあいいか。
明日はいよいよ、アラバシア王国から王太子殿下と王女殿下が来国させる。一体どんな方たちなのだろう。
確かお2人は、双子の兄妹だと聞いている。王太子殿下はともかく、王女殿下とは仲良くなれると言いな。
そんな事を考えながら、眠りについたのだった。




