第67話:恥ずかしすぎます
そっとファラオ様の顔を見ると、真っすぐこちらを見つめていた。今度は真顔だ。既に笑ってすらいないファラオ様。
「ソフィーナの気持ちは分かったよ。でもね、僕が非常に嫉妬深い性格なのは、君だって知っているよね。それなのに、僕に内緒で他の男に会いに行った上、ダンスまで踊るだなんて、到底許せることじゃないな」
え~ん、やっぱりまだ怒っているわ。どうしよう。
「ファラオ様、本当にごめんなさい。私の配慮が足りなかったですわ。どうかお許しを」
必死にファラオ様に謝った。こんな時はどうすればいいのだろう。恋愛経験ゼロの私には、どうしていいのか見当もつかないのだ。
「ねえ、ソフィーナ、僕に口づけをしてくれるかい?それから、僕の事をどれほど愛していか、僕が納得するまで語ってくれ。君が本当に僕の事を好きなのか、ここで証明してくれるかい?」
なんと!その様な恥ずかしい事を私にしろと?でも、ここでやらないと、ファラオ様のご機嫌が悪いまま。
恥ずかしいが仕方がない。ゆっくりと顔を近づけ、ファラオ様の唇に自分の唇を重ねた。はぁ、なんて恥ずかしいの。一気に顔が赤くなるのを感じる。
「ソフィーナは可愛いね。顔が真っ赤だよ。それじゃあ、次は僕の目を見て僕の事がどれほど好きか、語ってくれるかい?」
既に恥ずかしくて死にそうなのだが、もちろん今の私に拒否権などない。いわれるがまま、行動に移す。
「私が愛しているのは、ファラオ様ただ1人ですわ。ファラオ様はお優しくて、いつも私の事を考えて下さって。それからお顔も美しくてこの硬くてがっちりとした胸板も、とても素敵ですわ」
「ソフィーナは僕の顔も、この胸板も気に入ってくれていたのだね。まさかそんなところまでしっかりチェックしてくれていただなんて、なんだか嬉しいな」
ニヤリと笑ったファラオ様。この人、私をからかっているわ。
「他には?まだ許していないよ」
「ファラオ様、どうかもう許してください」
恥ずかしくて死にそうだ。これ以上私にどうしろと言うのだろう。あまりの恥ずかしさに、瞳からポロポロと涙が溢れだす。
そんな私の頬を、ペロリとファラオ様が舐めたのだ。
「ソフィーナ、泣いても許さないよ。ほら、まだ僕への気持ちは十分伝わっていないよ。ねえ、ソフィーナ。もっともっと僕に口づけをして、態度でも示してよ。それとも、僕の事を愛していないのかい?」
「愛していますわ。ただ、恥ずかしくて…」
上目使いでファラオ様を見つめるが、この目はまだ許していないといった目だ。再び自分の唇をファラオ様の唇に重ねた。
「ソフィーナ、そんな唇を重ねるだけの口づけではなくて、最近僕がやっているみたいな口づけをしてみて。もちろんできるよね?」
ファラオ様がやっている口づけとは…濃厚な口づけの事?あんな恥ずかしいこと、私には…
“ソフィーナ、早くやって”
耳元でささやかれたらもちろん拒むことなど出来ない。こうなったら腹をくくるしかない。恥ずかしくて死にそうだが、言われた通りにする。
「ソフィーナ、君から僕を求めてくれるだなんて嬉しいよ。初めてにしては、とても上手だね。今度は僕の好きなところを僕の目を見て語ってくれるよね」
まだまだお怒りのファラオ様。もちろん拒否する事など出来ない。
結局その後、ファラオ様のご機嫌がなおるまでずっと、私はファラオ様をどれほど愛しているかを語り続けたのだった。




