第63話:話はまとまりました
着替えを済ませ、昼食を家族で頂いた後、両親とお兄様と4人で馬車に乗り込んだ。家族全員で出かけるのは、いつぶりだろう。
「ソフィーナ、本当に殿下との話を進めてもいいのかい?引き返すなら今だよ」
お父様が真剣な表情で、問いかけてきた。
「ええ、進めていただいて大丈夫です。私はファラオ様の事を、お慕いしておりますので」
1日たった今も、もちろんファラオ様の事を愛おしく思っている。だからこそ、アレック様とセシル様に、きちんと話をして来たのだ。今更気持ちが変わる事などない。
「あなた、いくら何でも見苦しいですわよ。ソフィーナが決めた事なのですから、いい加減あなたも腹をくくったらいかがですか」
お母様が、ハァっとため息をついている。お父様は、私がファラオ様に嫁ぐのが嫌なのかしら?
たとえお父様が嫌だと思っていたとしても、私はファラオ様の元に嫁ぎたい。申し訳ないが、ここはお父様に我慢してもらおう。
しばらく進むと、王宮が見えてきた。馬車から降り、陛下たちが待つ部屋へと向かった。
部屋に入ると、そこには陛下や王妃殿下、ファラオ様、さらに侯爵以上の貴族たちが満面の笑みを浮かべて待っていたのだ。どうして彼らまでいるのだろう…
「ソフィーナ、待っていたよ。さあ、こっちに座って」
ファラオ様にエスコートされ、彼の隣に座る。
「ソフィーナ嬢、やっと決心してくださったのですね。今朝陛下から聞いて、どうしても私たちも同席したくて、無理を言って同席させていただいたのです。リレイスト公爵も、よろしいですよね?」
「…ええ、別に構いませんが…」
“どうしてこいつらまで来ているのだ?本当に図々しい奴らめ”
お父様が小声で呟いたのを、私は聞き逃さなかった。お父様ったら、もし他の方たちに聞こえたら、どうするつもりなのかしら?ハラハラする私を他所に、お父様が陛下を睨みつけている。
そんなお父様に気が付いた陛下が、冷や汗をかきながら遠くを見つめていた。そういえば陛下とお父様は、幼馴染で大の仲良しだったらしい。
今はそんな事は、どうでもいいが…
「それで陛下、できるだけ早く、お2人の婚約を進めた方がよいかと」
「そうですな、殿下ももう15歳、ソフィーナ嬢も13歳です。出来るだけ早く婚約を結び、王妃教育を進めた方がよろしいでしょう。それにしても、めでたいですな。天下のリレイスト公爵家の令嬢と殿下が、婚約を結ぶだなんて。
これでまた、王族の地位も安泰かと。そうでしょう、レイリスト公爵」
「…ええ、そうですね」
なぜかお父様が、苦笑いをしている。
「皆の者、落ち着いてくれ。私としてもすぐにでも2人を婚約させたいのだが、来月にはアラバシア王国から王太子殿下と王女殿下が来国される。その準備で今はバタバタしていて、とてもファラオの婚約の準備など手が付けられない。
その為、アラバシア王国の殿下たちが帰国してから正式に婚約、その後婚約披露パーティという流れを考えているのだが」
来月にはアラバシア王国の王族が来ると、お兄様も言っていた。今は私達の婚約どころではないのだろう。
「お言葉ですが陛下、確かに準備などは大変ですが、婚約を結ぶだけならすぐにでもできるのではないでしょうか?」
「確かに婚約だけ結び、アラバシア王国の王族たちが帰国してから、改めて婚約披露パーティを行えばよいのではないですか?」
他の貴族たちが、異論を唱えだしたのだ。
「皆様、落ち着いて下さい。王太子殿下が婚約する場合、他の国達にも知らせないといけません。それと同時に、婚約披露パーティのお知らせも同時に行います。アラバシア王国の王族を招き入れる準備もある中、さすがに婚約も同時進行は無理があります。
それに1~2ヶ月彼らの婚約が遅れたからと言って、大きな問題がある訳ではありませんから。アラバシア王国の王族たちの件が片付いてから、ゆっくり婚約を結んでも遅くないはずです」
お父様が貴族たちに語り掛けた。
「確かに、公爵殿の言う通りですな。嬉しくてつい先走り過ぎた様です」
「私もです、よく考えたら、現実的に厳しいですな。それでは、アラバシア王国の王族たちをもてなしてから、改めてお2人の婚約を進めるという形にしましょう」
こうして私たちは、アラバシア王国の王族たちをお迎えしたのちに、正式に婚約を結ぶことになったのだった。




