第60話:私の気持ち
「ファラオ様、見て下さい。我が家のお庭もとても綺麗でしょう?使用人たちと一緒に、私が手掛けたのです。いつかファラオ様にも見せられたらと思っていたのですが、今日見ていただけてよかったですわ」
「ソフィーナがライトアップしたのかい?君は何でも器用にこなすのだね。本当に綺麗だよ」
「ファラオ様に褒めていただけると、嬉しいですわ。こちらでお茶にしましょう」
開けた場所で、ティータイムだ。
相変わらず、私の隣に座るファラオ様。それがなんだか愛おしい。
早速使用人たちが、お茶とお菓子の準備をしてくれた。
「ソフィーナとこんな風に、月を見ながらゆっくりとお茶が出来るだなんて、幸せだな…ソフィーナ、ずっと僕の傍にいてくれるかい?君がいてくれたら僕は、何もいらないよ…」
月を見なら、悲しそうに呟くファラオ様。そんなファラオ様の手を、ギュッと握った。
「ええ、もちろんですわ。この命が尽きるまで、ずっとあなた様の傍にいます。これからもずっとずっと」
「えっ?ソフィーナ?」
ビックリした顔のファラオ様が、こちらを見つめている。目を大きく見開き、口も開いている。
「ファラオ様、どうされたのですか?お口が開いておりますよ」
「だって今、ソフィーナが言った事…」
「あら、ファラオ様が望んだのではないですか?だから私は、ずっと傍にいますと伝えただけですよ」
私、何かおかしなことを言ったかしら?
「ソフィーナ、意味を理解して言っているのかい?僕の傍にずっといるという事は、僕と結婚してずっと傍にいてくれるという事だよ」
「ええ、理解しておりますわ。ずっと私、ファラオ様の事が気になっていたのです。きっとあなた様と出会った時から、ずっと好きだったのかもしれません。ですが私は、自分の気持ちに気が付く事が出来なくて。
ですが今日、やっと気が付いたのです。ファラオ様の事が好きなのだと。ファラオ様の事を考えると、幸せな気持ちになります。ドキドキもします。もっとファラオ様に喜んでもらいたい、傍にいたい、そう強く思うのです。
これからもずっと、ファラオ様の傍にいたいです。ファラオ様、お待たせしてしまいごめんなさい。私をあなたのお嫁さんにして下さいますか?」
真っすぐファラオ様を見つめ、はっきりと伝えた。これが私の、今の素直な気持ちだ。
「これは夢なのかい?本当にソフィーナが、僕の事を…」
真っ赤な瞳から、ポロポロと涙が溢れだす。そんなファラオ様の涙を、そっと拭いた。
「夢だと思うほど、今まで私を思っていて下さっていたのですね。たくさんお待たせしてごめんなさい。これからはファラオ様に負けないくらい、私もあなた様を愛しますわ。ですから、どうか泣かないで下さい」
ファラオ様にギュッと抱き着く。大きくて温かい体。この温もりをずっと感じていたい。
「ソフィーナ、ありがとう。僕の事を受け入れてくれて、本当にありがとう。もう二度と、君を離さないよ。ずっとずっと一緒だ」
「ええ、もちろんですわ」
感極まり、私の瞳からも涙が溢れだす。でもこの涙は、間違いなく幸せの涙だ。そっと私の涙に口づけをするファラオ様。その口づけはどんどん下がっていき、唇に柔らかくて温かな感触が。
何度も何度も唇に感じる温もり。このまま身を任せて…
という訳にもいかない。そもそも私たちは貴族だ。貴族たるもの、結婚するまでは一線を越えてはいけない。それがこの国の掟だ。まだ私たちは結婚どころか、婚約すら結んでいないのだ。それになにより、ここは中庭。
「ファラオ様、冷えてきましたね。そろそろ戻りましょうか」
まだ私の顔じゅうに口づけをしているファラオ様を、そっと引き離した。恨めしそうに私を見つめるファラオ様に、困り顔の私。
「すまない、まだソフィーナと離れたくなくて。そうだ、君の気持ちが変わらないうちに、君の両親とソリティオに話しをしないと!」
「えっ?今からですか?」
「そうだよ、善は急げというだろう。早速行こう」




