第6話:お兄様と仲良くなりました
「急に笑い出してすまない。あまりにもソフィーナが得意げに話すものだから、なんだか可笑しくなってしまって。ソフィーナはすっかり変わってしまったようだね。もちろん、いい意味で」
「ですからそう言っているでしょう。いい加減信じて下さい」
「すまない、それにしても、今のソフィーナは見ていて飽きないな。さっきまで笑っていたかと思うと、急に得意げになったり、かと思ったら怒ったりと。クルクルと表情が変わる。まるで昔のソフィーナみたいだよ」
「昔の私ですか?」
「ああ、そうだよ。幼い事は、今の君みたいに表情がコロコロ変わる子だったんだ。多少我が儘ではあったが、愛くるしくてなんだか憎めない子だったよ」
「そうだったのですね。昔の事は、あまり覚えていなくて…」
幼い頃から、結構我が儘だった様な気がするのだけれど…
「年齢が進むにつれて、すぐに癇癪を起すようになってしまって。そんなソフィーナを見るのが嫌で、俺も君を避けるようになっていた。だが、それは間違いだった。もっとソフィーナに向き合い、間違っている事は強く指摘すればよかったよ。俺はソフィーナから逃げていたのだ。すまなかったな、ソフィーナ」
「そんな、お兄様が謝る必要はありませんわ。少し前までの私は、本当に最低な人間だったのです。全て自分が中心にいないときがすまない、ちょっとでも気に入らないと癇癪を起して…使用人の方たちにもたくさん酷い事をしましたわ。
それなのに皆、私に優しくしてくれて。お兄様だって、私が完全に悪いのに、私を責めるどころか気にかけて下さって…」
こんなに素敵な人たちに囲まれていたのに、私は皆に酷い事を…そう思ったら、涙が溢れて来て止まらないのだ。
「ソフィーナ、泣かないでくれ。君は自分の過ちに気が付き、今その過ちを正そうとしているではないか。それにきちんと謝罪もした。もうそれだけで、俺も使用人たちも十分だよ」
「お兄様!!」
心配して駆け寄ってきてくれたお兄様の胸に飛び込んで泣いた。そんな私の頭を、優しく撫でてくれる。13歳にもなって、兄の腕の中で子供の様に泣くだなんて、本当に情けない。
でも、お兄様の腕の中は温かくて落ち着く。
「もう泣かなくていいのだよ、ソフィーナ。君が過去の自分の行いで、十分後悔し、今必死に変わろうとしている事を、俺たちは知っているから。ほら、涙を拭いて」
お兄様がハンカチで涙を拭いてくれた。
「ありがとうございます、私、公爵令嬢として恥ずかしくない様に、これからも精進して参りますわ。お兄様、大好きですわ。これからも私の傍にいて下さいね」
こんなどうしようもない私を優しく受け止めてくれたお兄様が、大好きだ。せっかく元気な体を手に入れたのだ。これからは、兄妹仲良く公爵家を守っていきたい。今まですれ違ってしまった時間を、取り戻したい。
たった2人の兄妹なのだから。
「ソフィーナ、君って子は。俺もソフィーナの事が大好きだよ。これからはどんなことがあっても、ソフィーナを守るから。もし今後、社交界で君を虐める不届き者が現れたら、すぐに俺に言ってくれ。俺が退治してやるからな」
「まあ、頼もしいですわ。ですが私は今まで、散々社交界でやらかして来ましたから…どの面下げて社交界に出たらよいのでしょうか…」
散々令嬢たちに嫌味を言い、令息たちをこき使って来たのだ。もし今後社交界に行く事があれば、まずは謝罪まわりからしないと…
「確かに君の行いは酷かったが…まあ、そんなに気にしなくてもいいよ。もしソフィーナが謝りたいと思うなら、俺も一緒に頭をあげるから。だからあまり不安に思わなくても大丈夫だよ」
「ありがとうございます、お兄様。でも、次期公爵のお兄様に頭を下げさせるわけにはいきませんわ。その時は私が1人で、ちゃんとケリを付けますので」
任せておいてください!そう言わんばかりに、胸を叩く。すると、再び笑い出したお兄様。そんなお兄様の笑い声につられて、私も笑い出す。
その後も久しぶりにお兄様と話をした。こんなに話したのは、初めてかというくらい、色々な話をしたのだ。
この一日で、すっかり兄妹仲も改善されたのだった。
※次回、ソフィーナの兄、ソリティオ視点です。
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