第51話:どうされたのですか?
「それでは私はこれで、失礼いたしますわ」
「待って、今日は君の家まで送らせてくれないかい?」
「私の家までですか?それは申し訳ないですわ。1人で帰れますので、大丈夫です」
「いいや、送らせてくれ。今日は少ししか、君との時間をとれなかっただろう?だから送っていくよ!」
すっと私の手を取り、ファラオ様が歩き出す。そこまで言って下さっているのなら、まあいいか。
馬車に2人で乗り込んだ。
「ファラオ様と馬車に乗るの、初めてですね。なんだか新鮮ですわ」
「確かにそうだね。ソフィーナとどこかに出掛ける事も、なかったものね。アレックやセシルとは、2人で出かけたのだったね」
「はい、お2人ともとてもよくしてくださって。そうそう、ちょうどあのあたりを、アレック様と出掛けましたの。私、街に出たのが初めてで。とても楽しく過ごせましたわ」
「…そう、それは良かったね…」
あら?何かまずい事を言ったかしら?声のトーンが低くなった様な…
「それで、セシルとはどうだったのだい?」
「えっと…セシル様と行った山は、とても綺麗な湖がありました。ボートに乗ったり花冠を作ったり。私、不器用でうまく花冠を作れなかったのですが、セシル様が丁寧に教えて下さって…それで…」
「そう、セシルが手取り足取り丁寧に教えてくれたんだ」
「ファラオ様?」
いつもニコニコしているファラオ様が真剣な顔で、私の隣に座ったのだ。そしてそっと私の髪に触れる。なんだか怒っているみたいだけれど。他の殿方の話をしたのがまずかったかしら?
「ソフィーナは僕がソラ嬢の件で動いている間に、楽しい事を沢山したのだね。アレックやセシルとも随分仲良くなっているみたいだし…」
「あの…私は…」
その瞬間、がたんと馬車が停まったのだ。窓の外を見ると、見慣れた我が家が。御者が扉を開けてくれた。
「ファラオ様、屋敷に着きましたわ。今日は送って下さり、ありがとうございます。それでは、私はこれで失礼いたします」
馬車の中で挨拶を済ませると、急いで降りる。
「待って、屋敷まで送っていくよ」
ファラオ様も一緒に降りてきたのだ。
「お帰り、ソフィーナ」
「「お帰り、ソフィーナ嬢」」
「アレック様、セシル様!」
なぜかお兄様と一緒に、アレック様とセシル様も私の事を出迎えてくれたのだ。
「どうしてアレックとセシルが、ソフィーナの家にいるのだい?まさか、ソフィーナを誘いに来たのか?」
「俺が2人を呼んだんだよ。領地の事で、2人に相談したい事があってね。それで今日はお昼にソフィーナが帰ってくることを話したら、2人も出迎えたいというから3人で待っていたのだよ。ファラオ、久しぶりだね。元気そうで何よりだ」
「そうだったのですね。アレック様とセシル様がいらっしゃるのなら、教えて下さればよかったのに。アレック様に教えてもらった本、とても面白くてすぐに読んでしまいましたわ。セシル様に頂いた木の実もとても美味しいかったです。その件でお礼も言いたくて」
「本を気に入ってくれてよかったよ。あの作者のお話しは、どれも面白いよ。また本屋に見に行こう」
「はい、ぜひ行きたいですわ」
「木の実も気に入ってくれてよかったよ。今度一緒に取りに行かないかい?とっておきの場所があるのだよ」
「そうなのですか?ぜひお供したいですわ」
ここ最近王宮にばかり足を運んでいて、2人に中々会えていなかったのだ。まさかこんなところで会う事が出来るだなんて。




