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幼なじみ未満。こじらせ初恋に決着を  作者: 阿衣真衣


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8/22

急接近の夏休み

高校に入って顔を合わせることが増えた二人だが、さすがに夏休みに入ると顔を見る回数もグッと減り、

柊斗(しゅうと)麻琴(まこと)の顔を見たのは、体育祭の練習で麻琴が学校に来た二回だけ。


そうして、あっという間に夏休みも後半戦へ突入していた。



部活を終えた柊斗が家に向かっていると、電話をしている麻琴が前を歩いていた。

(ラッキー 久しぶりに顔見れた)

家が隣といっても、タイミングが合わないと滅多に会うことはない。

久しぶりに見れて嬉しいなと思いながら、気付かれないように自転車を降りる。


距離を保ちながら歩いていると、電話をしている声が聞こえてきた。

「―…うん。 車…ありがと… お兄ちゃん… ―さんと出かけるの… はい。

 それじゃあ、明日9時… よろしくお願いします。 …またね」


所々聞こえなかったが、嬉しそうな表情で電話を切り、軽い足取りでアパートの階段を駆け上がる麻琴の姿を見て、これは…と思った柊斗は、朝陽に電話した。


「俺明日部活休むから」


―「…何だったんだ今の… まあ、いっか」

用件だけ言って切られた電話を特に気にしない朝陽。


「おかえり~」「柊斗おつかれ~」

遊びに来ていた颯汰(そうた)(みなと)に返事もせず、部屋へ上がる。


「…今、すごい顔してなかったか?」

二人が心配するなか、柊斗は頭を冷やすためとりあえずシャワーを浴びることに。


冷たいシャワーのおかげで、冷静さが戻ってきた。

さっき聞こえた麻琴の電話の言葉を落ち着いて思い出す。

(敬語だったけど、時々タメ口だったな…

 ということは、年上だけど親しいとか、同じ年だけど、まだ関係性が薄いか。

 なんか、颯汰さんのことも言ってたな。親戚?

 車で出かけるっぽかったよな… 大人数? 待てよ、もしも二人とかだったら? それが、男だったら…)


「柊斗?大丈夫か?」「何かあった?」

気にしている二人に、さっきの麻琴の電話のことを話した。

柊斗の話を聞きながら、颯汰と湊も考える。

「よし、俺たちで尾行しよう!」


翌朝8時30分。颯汰は湊と約束があると行って家を出た。

(こんな朝早くから珍しい… でも、よかった~

 これで、お兄ちゃんに邪魔されない)


藍葉家の二階からアパートを見張る三人。

9時前になり、一台の車がアパートの前に停まった。

(なんか見覚えが…)


その時、麻琴がアパートから出てきて、三人は急いで玄関へ向かう。

玲華(れいか)さん!」


(((玲華?)))

「麻琴ちゃん!久しぶり~」

二人の会話が聞こえて、三人がバタバタと外へ出て行く。


「げっ…」

玄関から出てきた三人を見て眉をひそめる玲華。

「玲華!何で」

(何で三人が!? てか、こうなるから、お兄ちゃんに黙ってたのに…)


麻琴の約束していた相手は、柊斗の四つ上の姉、玲華。

大学2年生で、一人暮らしをしている。

クールな顔立ちながらも柔らかさを感じる目元に、人目を惹く美しさ。黒髪のロングヘアはゆるく巻かれている。


颯汰は玲華のことが好きで、中学生の時から告白し続け、麻琴と玲華が電話をしていると入ってきたり、一緒に遊ぶと聞くと付いてきたり…


(約束してたの玲華か…)

麻琴は玲華に憧れていて、玲華も麻琴のことを妹のように可愛がっている。

柊斗は相手が姉であったことに安心したが、同時に申し訳ないと思った…

(出かけるの楽しみにしてたのに、俺が二人に言ったから…)


騒ぐ三人に、湊が一つ案を出した。

「それなら、五人でどっか行かない?」


「二人とも高校はどう? 麻琴ちゃんは彼氏できたんじゃない?」

「いないですよ。 学校は楽しいです」

「そう。 もしかしたら、どっかの超ヘタレ君から想われてて、麻琴ちゃんに言えないだけかもよ~」

ミラー越しに柊斗を見ながら言う玲華。


(…それは、俺に言ってるよな)


「あはは~ もしそうなら、ありがたいですね」

(((え?)))


「それって、告られたら付き合うのか!?」

後ろの座席から颯汰が身を乗り出して助手席の麻琴に聞く。

「いや、それは分かんないけど、確実に意識はすると思う」


「だよね~ ヘタレ君に頑張って欲しいね~」

「ま、そんな人いないと思います」


真ん中に座る颯汰は柊斗の頭をポンポンと叩き、運転席の後ろに座る湊も腕を伸ばし肩を叩く。

(言いたいことは分かるけど…)


玲華の運転で五人で来たのは、遊園地。

「はい、着いたよ~」

「「「「ありがとう」」」ございます」


五人で遊ぶのは初めて。

玲華を先頭に、ジェットコースター、コーヒーカップ、空中ブランコなどなど次々アトラクションへ


「さて、そろそろ()()行きますか!」

そう言って玲華がパンフレットで指したのはお化け屋敷。

「三つ制覇しよ!」

お化け屋敷はレベル別、三種類あった。


(……うっ ()()だけは……)

お化け…というより驚かされるのが苦手な麻琴。


「無理無理!」って言いながら入って、怯えながらゆっくり進み、キャーキャーと怖がって出てくる。

…そんな可愛いことできない。

というか、まず入らないけど。

もし、無理矢理入れられたとしたら全力で走る。驚かされる前に走る。ゆっくり進んだら相手の思うつぼ。


ましてや、驚いて「キャー」なんて絶対言えない。

「う゛っ」って可愛くない声を出すか、声が出せず手が出るか…だと思う。

…入ったことないけど。


玲華がお化け屋敷に向かうと言った瞬間、さっきまで楽しそうにしていた麻琴が固まり、頭を抱えていた。

(そういえば、ホラーとかドッキリ系苦手だったな)

―「俺パス」


「なんだ柊斗、もしかして怖…(あ、そっか)」

颯汰は頭を抱える麻琴を見て、柊斗の言った意味が分かった。


「麻琴、ホラー無理だから行けないだろ。 柊斗と二人で待っとくか?」

「そっか!麻琴ちゃん、ホラーとか驚く系苦手だったね。 ごめんね。はしゃぎ過ぎちゃった。」


「いえ、私のことは気にせず楽しんできてください。 柊斗はホントにいいの?」

「興味ないから」

「そういうことなら、麻琴ちゃんは柊斗に任せて、俺らは行こうか。」


三人がお化け屋敷に行ったあと…

(どうしよう…柊斗と二人でどうやって待とう…)

(せっかく二人になれたんだ。一緒にいて、つまらないとは思われたくない… 何か… そういえば…)

「もし、高いところ大丈夫だったら、()()は?」


柊斗が指さしたのは観覧車。

(前にHaruがブログで乗ったって言ってたけど、どうだ…?)


「観覧車… そういえばHaruも乗ったって言ってた… 乗りたい!」

(よかったぁ…)「じゃあ」

そう言って歩き出す。


「観覧車に乗るのなんて小学生以来かも… 思ったより揺れるね。ちょっと怖いかも…

でも、Haruと同じ経験をしていると思えば…」

怖さを紛らわすためなのか、ブツブツと独り言を言う麻琴。

両手は観覧車の手すり部分をぎゅーっと力いっぱい握っている。


「…大丈夫?」

「ちょっと怖いけど大丈夫。だんだん慣れるはず…」

苦笑いの麻琴に、柊斗は自分の情けなさを感じていた。


(漫画の男だったら、こういうとき隣に行ったり、手を握って「大丈夫だよ」とか優しく言うんだろうな… 

 てか、あいつら付き合ってない段階でもそういうことするけど、女子はそれでもいいのか? 

 いや、女側も相手の男に気持ちがあるからいいのか… 俺は… せめて…)


「あ!Haruだ。 流してくれたの?ありがと!」

せめて少しでも気分が紛れるようにと、麻琴の好きなHaruの曲を流す。

(よかった。 少しは役だったかな…)


(柊斗優しいな。おかげでちょっと緊張解けてきたかも。

にしても、こんなに自分が怖がりだったとは… 本当は写真撮りたいのに、手離せないし…)

「ねぇ柊斗、お願いがあるんだけど…」

「ん?」


「私のスマホで写真撮ってくれない?

 撮りたいんだけど、まだ手が離せそうになくて…」

(恥ずかしい… でも、お願いできるのは柊斗しかいないし…

 あぁ…面倒くさいって思われたかな)


恥ずかしそうに笑いながら言う麻琴の衝撃に、柊斗は耐えていた。

(うっ……… 可愛すぎる… 心臓が… 大丈夫か?麻琴に気付かれてないよな?)

心の中で何度も深呼吸をして、落ち着かせる。


「いいよ。どこら辺?」

(麻琴からのお願いだったら何枚でも撮るし)


(よかったぁ… 何か震えてたけど大丈夫かな?)

「ありがと。あのメリーゴーランドとか、あと…」

(これ以上柊斗に手間をかけさせないように、早く手を離さないと)



観覧車もてっぺんに近づく頃には麻琴も慣れてきて、自分で写真を撮り始めていた。

片手は変わらず手すりを握っているが…

「もうすぐ一番上だ!」

ワクワクと嬉しそうに上を行くゴンドラを覗き込んでいる。


時々歌いながら、窓の外を笑顔で見る麻琴。

(だいぶ緊張なくなったみたいだな。 Haruパワーか?)


「おっ、一番上になった」

そう言って楽しそうに写真を撮る麻琴は、いつも以上にキラキラして見えた。

まるで夢なんじゃないかと思う、制限つきだけど魔法のような時間、二人だけの小さな世界。


「あと半分だね…」

外を見ながら呟く横顔は、少し残念そうだった。


ガコン

てっぺんを少し越えたあたりで観覧車が止まった。

「あれ?止まった?」

「もしかしたら、乗り降りで何かあって止まってるだけかも。すぐ動くよ」

「そっか…」


急に止まって不安になったのか、緩んでいた手すりを掴む手に、また力が入る。

一分ほどすると、無事動き出した。


「もう終わりかぁ…」

「…」

正直、向かいに座る麻琴ばっか見て、外の景色は見てなかった。


―「柊斗、ありがと」


お化け屋敷に行っていた三人と合流する。

「お待たせ~ 二人で大丈夫だった?」

「柊斗が観覧車に誘ってくれて、とっても楽しかったです! 写真もたくさん撮ってくれて」


麻琴の言葉に三人は驚いていた。

「そうだったの~ よかったね~」よしよしと麻琴の頭を撫でる玲華。

(へぇ~ 柊斗、頑張ったんだ)


「柊斗も楽しかった?」(聞かなくても分かるけど)

湊が柊斗の肩に手を回し聞くと、いつもは嫌がるのに、少し微笑んで「ああ」と頷く。

その目は、じっと麻琴を見ていた。



「なるほど。お前が昨日部活休んだのはそういうことね」

「ん」

昨日のことを話す柊斗の顔と声から、どれだけ嬉しかったかが伝わる。

「ま、いい思い出ができてよかったな」

(それにしても、まじでいい感じに進展してくじゃん。

 柊斗も頑張ってるし、麻琴はどう思ってるのかな…)


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