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幼なじみ未満。こじらせ初恋に決着を  作者: 阿衣真衣


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6/22

連絡先


隣で歩いている麻琴(まこと)を見て、柊斗(しゅうと)はホッとした。

(ダメもとで思い切って一緒に帰らないか麻琴に言った時、心臓が口から飛び出すんじゃないかってほど緊張したけど、言ってよかった。)


二人が並んで歩くのなんて、誰も見たことないと思う。


(誘っといて何も話さないってのは…そうだ)

「さっき、何聴いてたの?」

何とか会話をしたくて振り絞った一言…


「Haruの新曲だけど…」

「それって、先週リリースされた?」


「え! 知ってるの?」

パーッと嬉しそうな麻琴の笑顔に、心臓ぎゅんとなり、膝が崩れるのを何とか耐えた柊斗。

(可愛すぎる!? 曲聴いててよかったー!)


麻琴がHaruを好きなことは知っているので、全曲聴いている。新曲ももちろんチェック済み。

他にも、麻琴の好きなもの、興味があるものなどの情報は、共通点が欲しくて、いつか会話のきっかけになればと思い、その都度調べている。


(柊斗、音楽に興味なさそうなのに知ってるんだ… たまたまかな?)

「私Haruが一番好きなんだよね~」

(知ってる)「俺もよく聴いてるよ」


「うそ!ホントに!?」

コクンと頷く柊斗。

(意外。柊斗がHaru聴いてるなんて知らなかった。そんな話聞いたことなかったし。共通点あったんだ。)


(何の曲が好きなんだろう?きっかけは?いつから? 周りで話せる人少ないから色々聞きたいし、話したくなる!でも、ウザいと思われないようにしないと)

「私はデビュー曲の『You and dream』が好きなんだけど、ちなみに柊斗は好きな曲とか…」

「『I know』かな」

(アルバムの曲だ! バラード系が好きなのかな)「癒やされるよね~ 聴くと落ち着く」


「あのさ…」

そこから、あの曲の~、MVの~など、目をキラキラさせHaruの話をしている麻琴の横顔を見て、高鳴る心臓、熱くなっていく顔、緩む頬を抑えながら柊斗は頑張って歩いた。

(本当にHaruが好きなんだな~ 可愛い。幸せすぎる)


麻琴の楽しそうな様子を見ていると、あっという間に家の前に着いた。

(もう終わりか…それにしても、こんなに話をしたの初めてだな…)

(もう着いちゃった… それにしても、柊斗とこんなに話したの初めてかも)


(ほとんど私が話してたけど、柊斗も話してくれたし、歩くのも合わせてくれて嬉しかったな。)

「一緒に帰ってくれてありがとう。楽しかった。

 柊斗がHaruを聴いてるとは思わなかったから嬉しくて、私ばっか喋ってたね… 

 委員会も一緒だし、改めてよろしくね。 じゃあ、また明日…」

手を振り、アパートに向かう麻琴。


(はぁ…せっかく話せたのにな…)

名残惜しく麻琴の後ろ姿を見ていると、何かを思い出したかのように、急に振り返りトコトコと近づいてきた。

(? 何だ?)

「あのさ、ライン交換しない?」


(楽しかったから、つい言っちゃったけど、一回話しただけで調子乗ってるって思われたかな…)

「委員会一緒だから交換しておいたら、何かあったときいいかな…と思ったけど…

(でも考えたら、朝陽くんいるし、お兄ちゃんもいるから別にする必要ないって思うよね…)

ごめん。やっぱ…」


「これでいい?」

柊斗は画面に表示されているコードを見せてきた。

「あ、うん。ありがと…」


(危なっ… いきなりすぎて一瞬固まったけど、そのまま固まってたら「やっぱなし」って言いそうだったよな。)

お互い交換し、今度こそ麻琴はアパートの階段を上がっていった。


スマホの画面に映し出される名前を見る二人。

―なんか不思議…

―名前見るだけで幸せってあるんだな…



翌日昼休み―


「二人は部活決めたの?」

「私はダンス部に入ろうかなって思ってるよ」

「いいね!似合う! ゆづは?」

「私は弓道やってみようかな。こんな機会でしか触れなさそうだし」

「たしかに! いいね。かっこいい」


「麻琴は本当に部活入らないの?」

桃花(ももか)が聞くと、麻琴は笑いながら

「うん。中学の時、部活の人間関係が面倒くさかったから、いいかな~って。

 興味あることもないし。 その代わり歩いて帰るからさ。」

「そうなんだ。 まあ、散歩がてらいいかも。」


柊斗が教室に入ってから、何人かがチラチラとこちらの様子を伺うような視線を送ってくる。

柊斗が来た理由は一つ。

今日は結月(ゆづき)と桃花が3組に来たから。


朝陽(あさひ)は、正面に座る整った顔を見ながら、少し声を抑え昨日のことを聞いてみる。

「それで?昨日は一緒に帰れたのかな?」

そう言うと、弁当に箸を伸ばしていた柊斗の手がピタッと止まる。


(まあ、柊斗のことだから少し後ろを歩くか、横を通り過ぎるだけで…)

「―……った」

「? ごめん、聞こえんかった。なんて?」


周りの話し声で聞き取れず聞き返すと、柊斗は照れくさそうに目線を逸らした。

「……一緒に帰って、ラインも交換した」

「は!? えっマジで?」


教室中に響く朝陽の声。教室中が「何だろう…」と朝陽を見る。


「びっくりした~ 矢野くん、どうしたんだろ?」

「さあ?」

桃花と麻琴はすぐに話に戻ったが、結月はしばらく朝陽と柊斗を見ていた。

(何があったんだろう…)


「声がでかい」

「悪い… それで?」


どういう流れで一緒に帰り、ライン交換をしたのか聞き出す。

昨日のことを話す柊斗の顔は、少し和らいでいて、声からも嬉しかったことが伝わってきた。

そして時々麻琴を見る。

(うん、うん。 いいねぇ~)


「そうか~ ホントよかったな!」

柊斗はコクンと頷く。

「…ありがと」


(本当に素直になったな… 嬉しいと人間素直になれるんだな~)

クールな顔からはわかりにくいが、ずっと嬉しそうな親友の表情を見て、これからもできることは協力してあげたいと思った。


(…麻琴関係か!)

二人の様子と、時々麻琴を見る柊斗の視線からピーンと来た結月。

(え?なに? もしかして委員会終わったあと何かあった?)


「麻琴、委員会終わった後って何かあった?」

結月が聞くと、麻琴は昨日のことを話し始めた。


(えぇー! いつの間にそんなことに… というか)

「何で私に言ってくれなかったの?」

「…ごめん、別に言うほどのことでもないかと…」

藍葉(あいば)くんと一緒に帰ったなんて知られたら、色々大変そうだもんね」


(そうだった。 言うほどのことではないというか、柊斗くんのことはなるべく話さないようにしてるから、言わなかったんだろうな…

麻琴から柊斗くんの話をする事はないし。)


「でも、好きなアーティストが一緒っていいよね。私も彼氏と趣味が一緒で付き合ったもん」

「ももちゃん彼氏いるの! すごーい!」

それから話題は桃花の彼氏の話へ―


(でも、麻琴から柊斗くんに近づくって… これは、もしかしたら…)

桃花の彼氏の話を楽しそうに聞いている麻琴と、柊斗の顔を見て結月はそんなことを思った。


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