仲がいいのが一番
年が明け、今日から学校もスタート。
「あけおめ~ことよろ~」と軽い挨拶が始業式前の体育館に響く。
「なんか元気なくない?」
「まさか彼氏と喧嘩でもした?」
「………まあね~…」
「「マジで!?」」
驚いている天音ちゃんとももちゃんに、ゆづは苦笑い。
私もゆづから話を聞いたとき、二人と同じリアクションをした。
少し離れたとことで友達と話をしている朝陽くんを見ると、ゆづを見て寂しそうな顔。
なんでこうなったかと言うと……
ゆづが朝陽くんと初詣に行く約束をしていたその日、朝陽くんが体調を崩しちゃってキャンセル。
まあ、これは仕方ない。もちろん、そんなことでゆづは怒らなかった。
二日後、また初詣に誘ったけど、この日朝陽くんはサッカー部との約束があった。
「そういえば前から約束してたっけ」とこれも仕方ないってなった。
でも問題はこのあと。
まさかのサッカー部と一緒にいた朝陽くんとゆづが遭遇。しかも、カラオケに行くって聞いていたのに初詣に行っていたと――
「それはない! こっちはドタキャンしといて、自分は友達と行くとか。
いや、体調悪かったのは仕方ないよ。でも、そしたら彼女優先してほしくない?」
「矢野くん全部タイミング悪すぎ…。私もそんなとこに遭遇したらショックだわ」
話を聞いたももちゃんと天音ちゃんは驚き、呆れ、怒りが混ざったような声で「ないない」と言いながらゆづの味方。
そりゃあそうだよね。
たしかに体調不良は仕方ないし、約束も大事、全部彼女ファーストにしてとは言わないけど、ちょっとね……。
やっぱ、彼女としては寂しいよ…。
私ももし柊斗にされたら………って思ったけど、柊斗はしないな。そもそも今回のに参加してなかったし。
(…うまく仲直りできるかな――)
◇
「それは確実にお前が悪い」
今まで見たことのない焦り方で、突然家に来た朝陽。
昨日のことを聞いたけど、結月が怒るのも当然だな。
もし俺が麻琴にされたら……いや、そんなことしないとは思うけど…ダメだ。想像しただけで心臓が痛い。
「わかってるよ!
でも最初は初詣行く予定じゃなかったんだぜ? それなのに急に行くってなって。
そこで俺が行かないってのも変な空気なるじゃん? ましてや彼女と言ってないから行けないとか、絶対揶揄われるし。
つーか、風邪なんて滅多に引かないのに、タイミング悪すぎ……」
「なら部活の方断ればよかっただろ」
「……でも年末から約束してたし。ゆづのことは大事だけど、友達も大事じゃん?
って言っても、お前には分かんねぇよなぁ………」
「ああ」
「…………はぁ~…なんでこんな奴なのに、嫌われないんだ?」
別に、麻琴以外に嫌われても困らないし。
でも、俺が人から嫌われて麻琴が困るなら、まあそれなりの人付き合いはするけど。
「結月には謝ったんだろ?」
「当たり前だろ! でも全部無視されてるんだよ! ラインも既読スルー、電話も出ない……
どうやったら許してもらえると思う? 明日から学校なのに……」
「知らねぇよ」
「おまっ…ちょっとは一緒に考えてくれてもいいだろ! 薄情者! 俺はあんなに協力してやったのに!
もしお前が麻琴と喧嘩しても助けないからな!」
たしかに、朝陽には色々やってもらった。
それに、二人がこのままだと麻琴も困るかもしれない。
「わかった。もし明日学校でも結月の態度が変わらないなら――」
◇
今日は始業式とホームルームだけやって午前中で学校は終わり。
しかも部活もほとんどが休み。
ということでゆづを誘って一緒に帰ってるんだけど…
(……やっぱ、ちょっと気まずいなぁ~…)
前には自転車を押しながら歩く柊斗と朝陽くん。その後ろをゆづと一緒に、二人から一定の距離を保って歩く。
「ねえ、ゆづ。まだ朝陽くんと話ししてないの?」
「うん……。
その…朝バスで話したけど、冷静になったら自分でも器小さいなって思ったし、今日はちゃんと話して仲直りしようと思ったんだよ?
でも連絡も全部無視してたし、それに、いざ顔見たらどういう風に接したらいいのか分からなくなちゃって」
前を歩く朝陽くんを気にするようにチラッと見ると、ゆづは気まずそうに苦笑いする。
「ねえ、もし麻琴が私と同じことされたらどうする? すぐ許してた?」
「ん~………
ねえ柊斗! もし私が柊斗と約束していた日に体調崩して、で、元気になって柊斗も暇だったけど玲華さんと遊びに行って、しかも行ったのが柊斗と約束してたところだったらどうする?」
「え!? ちょっと、何で柊斗くんに聞くの? 私は麻琴に聞いたんだけど?」
「いや。柊斗がそういうことする想像ができないから。どっちかっていったら私がやりそうじゃん?
それで、他の人の意見聞きたいっていうことなら柊斗が適任かと」
正直、本当に想像できなかったんだけど、柊斗に話しかけて朝陽くんも入ってきてくれたらなぁ…って思ったり。
そもそも、それが狙いで一緒に帰ってるし。
それに、少なくともこの距離で一緒にいて大丈夫なら、話せれば絶対――
「麻琴? 柊斗くんすっごい悩んでるけど、大丈夫そう?」
「あ、ごめん。玲華さんだとちょっとあれか…マリちゃんの方がよかったかな?」
そう言うと、朝陽くんから「いや、そこじゃないだろ」とツッコミが。
そしたらゆづからも「うん。人を変えたらってことではないよ? 相変わらずズレてる」と。
「そういえば、前にもあったよな」
「あった。あった! あっ――」
(話せたら~とは思ったけど……うん。まあ、いいか)
私にツッコミを入れて、いい感じに二人が顔を合わせたので、気付かれないように静か~に柊斗と一緒に先を歩く。
「……結月、初詣一緒に行けなくてごめん。しかも結月断ったのに他の人と行って……」
「ううん。体調悪かったのは仕方ないし、友達も大事だもんね。
ただ、楽しみにしてたから、他の人と行ったって知って悔しかっただけというか、面白くなかっただけ。
私も変にムキになっちゃって。無視してごめんね」
喧嘩とかムカつくことって、他人から見たら「くだらない」とか、「たったそんだけで?」って思われることが多いかもしれない。
落ち着いたら自分でもそう思うことあるし。
でも、最初に受けるショックって大きかったり、着いちゃった火が自分でも知らないうちに広がって、消すのに時間がかかったりする。
それに喧嘩って、人が間に入ってこじれることもあるけど、逆に人が間に入ることで解決することもあるはず。
「よかった。仲直りしたみたい。柊斗が一緒に帰ろうって言ったお蔭だね」
「二人が話せるように麻琴がうまくやってくれたからだよ」
昨日柊斗から、ゆづと朝陽くんを仲直りさせるために四人で帰ろうと連絡があった。
ゆづには内緒だけど。
まずは近くにいても大丈夫か。私達から二人を無理に話させるんじゃなくて、あくまでも自然に。
朝陽くんはゆづの反応を見ながら話しかけること。
と約束事を決めて、一緒に帰ろう作戦を決行。
無事成功してよかった。
「柊斗、麻琴ありがと!」「ありがと!」
後ろを向くと、いつもの笑顔に戻った二人が繋いだ手を上げていた。
「うん」
「やっぱ、仲がいいのが一番だね!」




