色々あった一年
クリスマスは、今までで一番緊張した一日だったけど、それと同じくらい幸せな一日だった。
あれから一週間経って、今日は大晦日。
「今回もお邪魔しちゃって……。 まあ、うちには柊斗たち家族招待出来ないんだけどさ。
毎回甘えていいのかと……」
「逆に母さんが脅したみたいになって申し訳ないけど、俺は来てくれたら嬉しいよ」
「あはは~。あの後すごかったもんね」
クリスマスパーティーが終わって帰ろうとしたとき…
「大晦日も同じように集まりましょうよ!」
パンッと手を叩きながら、ノーと言わせないニコニコ笑顔で柊斗のお母さんがみんなに声をかけた。
マリちゃんたちは従兄弟だからいいけど、さすがに私たちは…とうちの家族(一名除いて)が遠慮すると、
「もしかして今日楽しくなかった?
でもそうよね…白木さんたち、いつも料理や飲み物持ってきてくれて……。気を遣わないでって言っても、遣っちゃう優しい人たちだもの…本当は大変よね……」
ぶっちゃけ演技と分かっていても、目をウルウルさせて、そんな寂しそうに言われると、可愛い人を泣かせたという罪悪感がうちの家族みんなに刺さる。
「……わかりました。ありがたく参加させていただきます」
「そうね…。藍葉さん、いつもありがとうございます。今度、料理の打ち合わせしましょう」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「はぁ~よかった。これで断られたら私具合悪くなってたかも。 ありがとうございます」
私たちが頭を下げると、一瞬でケロッと笑顔に切り替わり、さっきとは全然違う明るい声。
この人になら、操られてもいい。そう思えてしまう不思議な魅力が柊斗のお母さんはある。
もしかしたら、柊斗のお父さんもこの魅力にやられたのかな?
ってことで、今日も柊斗の家にお邪魔する。
(こんなに柊斗の家に行くことになるなんて、去年は考えもしなかったな…)
リビングにはお出汁のいい香りと、天ぷらを揚げている音が聞こえて、大晦日って感じ。
「おかえり~。イルミネーションどうだった?」
「綺麗でした! まだ人そんなにいなくて、写真もたくさん撮れました!」
先週よりは小規模だけど、ゆっくり見られて、写真も撮れてよかった。
てか、柊斗と行けたら場所はどこでもいい。実際、先週は柊斗の家でもイルミネーションの写真撮ったし。
文化祭の時もそうだったけど、美形に見られながら写真撮られるの緊張しかない。
そっちがモデルじゃないの?って何度思ったことか……。
母さんたちに撮った写真を楽しそうに見せる麻琴の横顔を見ながら、家に向かっている時の会話を思い出した。
「今年は予想外の連続っていうか、色々あったな~」
「うん。俺も」
「バレンタイン渡して…まあ、直接ではなかったけど…。それから――」
一年を振り返る麻琴の話に頷きながら、自分でも振り返る。
今年こそはって決めて、そしたらバレンタイン貰って、それがマジで嬉しくて、ホワイトデーに告白して付き合って……。
告白はかっこよくは決まらなかったし、初デートも照れまくって後悔もあったけど、そのお蔭で色々話せて、少しずつ二人で進んで。
一緒に帰ったり、手を繋いで歩いたり、付き合ってたら普通じゃね?ってことも、俺にとっては全部が特別で夢みたいなこと。
焦ったり、苦しくなったりもあったけど、それ以上に嬉しいことや、幸せだと思えることが多かった。
色々あったけど、間違いなく今までで一番笑った一年だ。
付き合ってから、どんどん好きになっていく。
たまに俺よりかっこいいし。かと思えば、やっぱり可愛くて。
俺だけが好きだと思っていたけど、嫉妬してくれたり、俺のこと考えてくれたり。
こんな最高の彼女いない。マジで、捨てられないようにしないと。
麻琴と一緒に料理を並べていると、玄関から「お邪魔しま~す」と声が聞こえた。
その瞬間、すぐに麻琴の隣に立つ。
入ってきたのはレオンたち家族。
「こんばんは~」
俺の後ろから顔を出して麻琴が挨拶すると、レオンがヘラヘラ笑って手を振る。
「麻琴さんそこにいたんですね。こんばんは。
それにしても、俺すっかり警戒されてるな~」
(当たり前だろ)
こいつが先週、麻琴に何をしようとしたか…思い出すだけでも腹立つ。
「半径2メートル以内に近寄るなよ」
「はいはい。まったく、あれはちょっとしたジョークだったのに」
「ジョークにしてもやりすぎだから。でも、ヤドリギも知らなかったなんてね」
「うっ……。クリスマスなんて、ごちそう食べてプレゼント交換するイメージしかなかったよ。
日本から出たことないしさ…。世界にそんな恐ろしいルールが存在してたなんて……。
って!まさか大晦日も何かあるとか言わないよね!? 調べるの忘れた!ちょっと調べる」
「やっぱ、調子狂うんだよね…。
とにかく、今日もヤドリギ注意しな。まだ飾られてるから」
「えっ!? あ、ホントだ。教えてくれてありがと~」
「別に。もう電気消したりしないからね。やるならご勝手に。
てか、大晦日といえばカウントダウンと一緒にキスでしょ。調べるまでもない」
「キッ――…」
キスって聞いて顔が赤くなる麻琴を見ると、こっちまでつられてしまう。
なんせ、家に入る前にしたし。
「そういえば、何時までいるの?家隣だから居ようと思えば年越しまで居られるでしょ?」
麻琴が気にしていないとはいえ、マリのキツめの言い方は、もう少しどうにかならないのか?
でも、そういえば何時まで居るか聞かなかったな……
「――いやいや、そんな遅くまで居ないよ!」
(…まあ、そうだよな。それに、居てくれたとしてもさすがに――)
「「残念だったね~柊斗」」
二人は、同じような顔を俺に向けて声をハモらせた。
こういうところで双子を発揮してくる。
(………ウザっ)
少しすると玲華たちが帰ってきて、また颯汰さんが乾杯の音頭をとる。
もちろん俺は、麻琴から貰ったマグカップで。
「今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします」
「こちらこそ」
◇
母さんは寂しがってたけど、さすがにってことで、麻琴たち家族とレオンたちは21時すぎに帰った。
ただ、颯汰さんはうちで年を越すと言って、うちに残っている。
風呂から上がって、あとは部屋で過ごそうと思ったけど、柄の悪い三人に捕まり、麻琴とのことを色々聞かれた。
ほとんど答えないけど、それでも何か勝手に盛り上がる。
てか、母さんまで三人と同じテンションで話に入ってきたし。父さんは、話はしないけどガッツリ聞いてた。
こういうのって、親は聞き耳を立てるだけで話に入って来ないのが普通じゃないのか?
そうこうしているうちに今年も終わり、0時になったと同時にラインが。
〈あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします〉
「あ~、こちらこそ。だけじゃダメだからね!柊斗もちゃんと返さないと」
「そうそう。いっそのこと電話してみたら~?」
「どうせならテレビ電話しようぜ~」
ってことで、麻琴とテレビ電話することに。
本当は一対一がよかったけど、みんなの顔も見れて嬉しいと麻琴が言ったので、まあいいか。
今年もみんなと楽しく過ごせますように。柊斗ともっと一緒にいられますように。
今年も麻琴と一緒にいられますように。
――あと…今年こそ(柊斗・麻琴)と同じクラスになれますように!!
今年最初の願い事をして、二人は夢の中へ――




