遂に……
12月24日。
「髪オッケー、服オッケー、持ち物オッケー。
……リップ…よしっ!いってきまーす」
すぐ隣だけど、連絡をしてから家を出るのがお馴染みになってきた。
そうしたら、アパートの階段を下りた私と家を出た柊斗が同じタイミングで会えるから。
今日は、遠出のデートも久しぶりだし特別な日だから、ウキウキしている私の心に反映して全部がキラキラして見える。
特に、階段を下りた先にいる人の周りは、異常に輝いていて眩しい。
長めのグレーのコートに白セーターと黒のパンツ。首には赤のラインが入った黒とグレーのチェックのマフラーが暖かそうに巻かれている。
私だったら地味になりそうな色味だけど、柊斗だとシンプルにまとめましたってファッションに。
「柊斗おはよ。そして、誕生日おめでと!」
「ありがと。これで三回目だね」
「顔見て言うのは一回目だよ。そうだ!せっかくだから17回言う?」
0時におめでとうラインを送ったら電話がかかってきて、直接お礼を言ってくれた。
電話だったから顔見えなかったけど、こんな顔してたのかな?
クスッと笑う最上級の笑顔に、私の胸もきゅんと喜んでいる。
私の嬉しいフィルターと、柊斗の笑顔でキラキラがさらに増した。
(キラキラめっちゃ飛んでる! 眩し過ぎっっ!)
……にしても、し過ぎじゃない?
「……柊斗の家、気合い入ってるね」
チラッと目線を柊斗の後ろに向けると、門の前では雪だるまが、郵便受けの上には小さいサンタがピカピカ光っていて、ドアにはクリスマスリースとツリー。もちろんツリーもピカピカ。
花壇の方にも電飾がされていて、心理的にそう見えてたのもあるけど、どうやら本当にキラキラしていたみたい。
「あぁ……これは母さんが。今日は一日中点けとくって。昨日から家の中もすごいことになってる」
「おぉ~。めっちゃ楽しみ!」
今日は、まず水族館に行って、軽くお昼を済ませたあとイルミネーションに。そして柊斗の家でパーティーをする予定。
私の誕生日に来たときとは違って、水族館もクリスマス仕様になっていた。
入り口で写真を撮って、二人で話しながらゆっくり見て回る。もちろん手を繋いで。
「白と青のツリー綺麗だったね。トンネルのとこも飾り付けされてたし、水槽にもツリーとかサンタあって可愛かった~」
お昼を食べるために入ったファストフード店で、お互いに撮った写真を見せ合う。
前来たときの写真フォルダーは水槽の魚ばっかりだったけど、今日はその分も取り戻そうと、二人の写真もたくさん撮った。
ピッタリくっついた肩、引きつっていない自然な笑顔。
初めて撮った時より距離も顔も、かなりカップルっぽい。
これも、あの練習のお蔭かも。
お店を出たあと、イルミネーションの時間までまだあったので、散歩がてら公園に。
隣に座っている麻琴の、グレーのチェックのスカートとヒールのブーツがブランコを漕いでいるように動いている。
上は白のセーターカーディガンで、首には俺が上げた桜のネックレス。
着けてくれているのを見る度に嬉しくなる。
「柊斗、誕生日おめでと! これ、誕生日プレゼントです」
「ありがとう」
本日六回目のおめでとう。本当に17回言うのかな?
受け取った箱を開けると、シルバーのブレスレットが。
「こういうの着けるかなって悩んだんだけど、私がネックレス貰ったから、柊斗にも何か身につけるもの渡したくて…。
柊斗はゴールドよりシルバーっぽいし、ごついのよりは、こういう細めがいいなって。
それでこれを見たとき、柊斗に似合いそうって思って……」
プレゼントを貰えるだけでも嬉しいけど、俺のこと考えてくれていたり、選んだ理由を聞くと、より嬉しくなる。
「ありがと。今着けていい?」
「あ! それなら私が着けたい!…です」
勢いよく言ったのに照れて、それが最高に可愛い。
そんな麻琴に着けるのをお願いすると、照れながらも明るい笑顔で、俺の左手首にブレスレットを着けてくれた。
「ありがと。どう?」
「めっちゃいい感じ! さすが。何でも似合うね!」
そう言う麻琴の足は、少しだけ落ち着かなさそうに小さく動いていた。
(柊斗が喜んでくれてよかったぁ~)
ブレスレットを大事そうに撫でているのを見ると、胸がきゅんと喜ぶ。
もう、今日だけで何回この気持ちになったのか数え切れない。
「これ…俺から麻琴にクリスマスプレゼントなんだけど……被ったな…」
そう言って柊斗が箱を開けると、ピンクゴールドにハートのチャームが付いているブレスレットがキラッと光っている。
「かわいい……。へへ、交換したみたいになったね」
「交換なら、俺も麻琴に着けないと」
スッと私の手を取って上げておくように言うと、楽しそうな顔をしてブレスレットを着けてくれた。
(私をキュン死にさせるつもりですか!?)
「できた」
「ありがと! かわいい…。どうですか?」
「うん。思った通り似合う。かわいいよ」
「っ!! ………ありがとうございます」
(何!? なんか今日甘くない? てか私も、似合うじゃなくてかっこいいって言えばよかったー)
いつもよりキラキラして甘い柊斗の隣で、私は醜態を晒さないように必死だった。
◇
あたりが薄暗くなってきた頃、イルミネーションスポットへ。
キラキラ光るライトに負けないくらい、キラキラの笑顔で歩く人たち。
私たちもそうだけど、周りはカップルだらけ。それでも柊斗はチラチラ注目を浴びていて…
柊斗と同じ画角に入っていない私のことは見えていないみたいで、
「声かけてみる?」「写真お願いして、誘っちゃおうよ」とか聞こえる。
そして、そのたびに大袈裟に柊斗に話しかけて、いますよアピール。
(だろうなとは思ったけど、やっぱ人が多いとこうなるよね……)
見られたり、言われたりも慣れてきはしたけど、何も思わないわけじゃない。
かわいい人とか綺麗な人が柊斗に声をかけようとしていたら不安になる。
「大丈夫?寒くなった?マフラーとコートどっちがいい?
それとも疲れた? 人が少ないところ移動しようか?」
私が俯いていたからか、心配そうに覗き込むと、キョロキョロ見渡して休憩できそうな場所を探してくれる柊斗。
柊斗が鋭いのか、私が分かりやすいのか、ちょっとシュンとなっただけでも、いつも気付かれる。
せっかく来たのに、気遣わせちゃった…。
「……ううん。大丈夫だよ! それより、あそこの――
…やっぱ、人が少ないところ行きたい……です…」
ここで写真を撮りたい。と思っていたけど、その前にできた人だかりを見ると、気持ちが乗らなかった。
それでも、前の私だったら行ってたと思う。
でも今は……
「うん。行こうか」
柊斗に優しく手を引かれ、イルミネーションの光があまり届かない、人がまばらなところに来ると、何だかホッとした。
「ありがとう…ございます…」
「いや。実は俺も、人混みそろそろ限界だったから」
「どうする? 少し早いけど帰る? イルミネーションは今日までじゃないし。
見たかったらまた一緒に来よう」
柊斗はいつも優しいし、時々私に甘すぎる。
ぶっちゃけそれは嬉しいけど、このまま甘えたり頼りっぱなしだと、本当に……。
「ぁ…のさ…。5秒、そのまま立っといてもらっていいですか?」
「ん?うん…」
ヤバい。心臓が破裂しそう。
でも、それでも今伝えないと……
ギュッ。手は繋いだまま、柊斗の前に立って背中に手を回す。
「いつもありがとう…。でゃっ、だ…ぃ…好きです……」
(噛んだっ! 恥ずい、恥ずい!)
「……っ、お願いきいてくれてありがとう! じ、じゃあ、イルミネーションはまた今度おね――」
心臓破裂寸前で、柊斗の背中に回していた手を下ろして後ろに下がろうとすると、グッと引き寄せられた。
自分で抱きついたときよりも、ギューッと苦しくなるくらい強く抱きしめられる。
「はぁ~……心臓もたない……。ありがと。俺も好きだよ」
柊斗が私の肩に顔を埋めたので、心地良い優しくて低い声が耳に響いた。
そして――




