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溺愛幼なじみ未満  作者: 阿衣真衣


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キスしたいと思う?

「実は昨日、付き合って1ヶ月で、やっと流星(りゅうせい)くんと初デート行けたんだけど、帰りにキスしてくれたの!まあ、頬になんだけどね。

 それで、みんなは付き合ってどのくらいで初めてキスしたか聞きたくて! ほら、こういう話してなかったじゃん?

みんな彼氏持ちになったし、もっと恋バナしよ~」

「そういえばそうだね。私は……付き合って2週間してからだったかな?」

「私は、前の彼氏は中学の時だったから3ヶ月で、今の彼氏とはゆづと同じで2週間」


「2週間か~。やっぱそのくらいなんだね。麻琴(まこと)ちゃんは?」

「…………い」

「「「………ん?」」」

「ない…です……」


そう言うと、三人はお手本のような驚きの表情をした。

付き合って8ヶ月。キスどころか、ハグもまともにしてない。何度か軽くされたことはあるけど、漫画やドラマみたいにガッツリはない。

というか、普通に付き合ってて、あんなしっかり抱きしめるシチュエーションとかあるのかな?まあ、そんなことされたら心臓飛び出すかも。

となるとキスしたら……爆発?


「あのさ…そういう雰囲気になったことは?」

「………なかった…と思う」

でも待って。もしかしたら私が気付いてなかっただけかも。それか知らないうちにぶち壊してたとか…。昨日も手繋ぐ雰囲気だったらしいし。

漫画とかだと告白したあととかだけど、あの時は話すだけでいっぱい、いっぱいだったし……。もしかして、初デートの時、実はそういう雰囲気あった?緊張しすぎて逆に気づけなかったとか……。それか、一緒に帰ったあの日……


「やっぱ、知らないうちにあったのかもしれない……」

「ん~…その可能性あるかもね。てか、全部声に出てたよ」

「ゔっ……」

「やっぱ、ずっと好きだった子と付き合って、今まで何もないってね~。

でも正直、二人はその日にかなと思った。嬉しすぎて気持ちが高ぶって~みたいな。で、冷静になって後日手を繋ぐのが恥ずかしいみたいな」


天音ちゃんが言うと、二人もうんうんと頷く。どうやら、三人とも私が言わなかっただけだと思っていたらしい。

「まあ、小さい時から知ってるわけだし、二人とも奥手だもんね」

「でも麻琴は、したくないわけじゃないんでしょ?」

「……はい」


◇


昼休みに話したことが頭から離れなくて、午後は全然集中できなかった。しかも、今日は柊斗(しゅうと)と一緒に帰る約束をしていて、余計に頭の中がそのことでいっぱいに。

あんな話しして意識するなっていうのは無理。 

今から一緒に帰るのに絶対ぎこちなくなるし、話せる気もしない……


手を繋ぐタイミングも迷ってたのに、キスとか余計に分らなくない?

みんなは何となくそういう雰囲気になったとか言ってたけど、そういう雰囲気ってどっちが出すの?出すとしたらどうやって?急に?それともだんだん?


漫画とかドラマでは、強引に、いきなりってパターンと、宣言するパターン、見つめ合ってのパターンがある。

まず強引とか、いきなりはないな。嫌われるリスクがある。宣言するのは……かなりハードル高いかも。

でも、見つめ合ってってのは、何秒くらい? てか、キスのこと考えて柊斗の顔とか絶対に見られない。変な顔になる自信がある。その顔を、あの完璧な顔の前に出すとかなんの拷問?


「……そもそも、柊斗は私とキスしたいとか思うのかな……」

ひんやりと冷たい空気に風が吹いて一気に寒さが来る。

寒さで頭を冷やそうと外階段に出てきたけど、失敗した。誰もいないから余計に考えてしまい、思わず蚊の鳴くような声で呟いていた。



(だから外掃除はイヤなんだ)

せっかく麻琴と一緒に帰れるのに、外掃除とかついてない。先週まではすぐに終わる廊下だったのに。

今日は週明けで、さらに風も強く、落ち葉が多い。そのせいで時間がかかった。

しかも、くだらないことで話しかけられたり、用もないのに名前を呼ばれて、そういう意味でも外はイヤだ。


掃除を終えて麻琴の教室に行くと、外階段に行くのを見たと言われた。

(風強いのに? …まさか、誰かに呼び出されたんじゃ!)

すぐに外階段に向かい扉を開けると、階段に座っていた麻琴と目が合った。

「び……っくりしたぁ~……」


麻琴以外に誰もいなくて、ホッとしたのも束の間、上からイヤな声が聞こえた。

「あ~残念。もう柊斗来ちゃったんだ~」

目線を上げると、手すりにもたれて見下ろしているレオンが。その口元は挑発するようなカーブが描かれている。


「………二人で何してたの?」

麻琴はレオンのこと苦手だと思ってるから、そういうのはないだろうけど、一緒にいたってのが気に入らない。

「え~知りたい? どうしようかな~」

(お前には聞いてねぇよ)


「考えごとしたくてここに来たら上でレオンくんが告白されてて、盗み聞きするつもりはなかったんだけど動けなくて。そしたら気付かれて、声をかけられた」

「そっか。何か変なこと言われたりされてない?」

「ちょっと、ちょっと。柊斗は俺を何だと思ってんの? てか、二人とも俺にあたり強いよね?傷つくんだけど。

 そうだ!今から帰るんだよね?俺も一緒に帰っ――」



というレオンくんの声を二人でスルーして、柊斗と一緒に歩いているけど、今日に限っては、レオンくんもいた方がよかったかも……。

(いつもどうやって帰ってたっけ?)

どこくらいの距離に立ってた? 何の話してた? 

レオンくんがいる時はまだ普通だったけど、二人になった途端、なんか心臓がバクバクし始めて、口が開かなくなってしまった。


「あのさ…何かあった?」

「え!? あ、いや~…特に何もないけど…何で?」

「なんか、いつもより距離遠いし、あんま話さないから……」

「ゔっ……。あ!テスト!テストが心配だな~って。特に数学と英語!範囲も広い…しぃ……」

上からものすごく怪しんでる視線を感じる。


「やっぱりレオンに何か言われた?」「誰かに何か言われた?された?」「俺が何かしちゃった?イヤな思いさせてたら謝りたいから教えて欲しい」「体調悪い?」

(あ~…これ、絶対に聞き出されるパターンだ……)

心配そうな顔で色々聞いてくる柊斗に、首を振って答えるのがだんだん申し訳なくなってきた。


「あのぉ……柊斗に聞きたいことがあるんだけど…」

「うん」

「あのですね…柊斗は、私とキ――」

(待てよ。これは、今ここで聞いていいの?)


知り合いではないけど、同じ学校の人もいる。そもそも、こういう話を歩きながらする?

「公園に行こう!」



◇


いつもの公園に行こうと思っていたけど、突然雨が降り出した。

カバンから折りたたみ傘を取り出して差すけど、私の身長では柊斗が傘に入れないので、柊斗に傘を持ってもらい、私が柊斗の自転車を押すことに。

家に着くときには雨は上がっていた。

「傘ありがと。あと、自転車も」

「どういたしまして。傘持ってくれてありがとね……って、柊斗ほとんど濡れてるじゃん! やっぱ折りたたみじゃ小さかったか…ごめん…」

「ううん。ありがと。それより、俺に聞きたいことって――」


「いやいや…体冷えるから家に入りなよ。話は…その……今度でもいいから」

「いや、気になる。それに、このくらい大丈夫だから」

「ううん。柊斗は王道主人公だから、このままだと絶対に風邪引くよ。ってことで、家に入って! あとで電話するので」

引かないモードの柊斗に私も引かず、逃げるようにアパートの階段へ向かった。


柊斗のお蔭で濡れずに済んだ私は、部屋着に着替えてソファーに倒れ込む。

(電話するって言ったけど、余計緊張しない? いや、直接よりはそっちの方がいいのかな? でもなぁ………)

「よし! ちょっと出てくる!」

体を起こし、ソファーから降りると、その勢いのまま家を飛び出した。


やっぱ、直接の方がいいと思い、柊斗の家へ。

ひと呼吸おいて、インターホンを押そうとすると、後ろから湊(みなと)さんに声をかけられた。

「麻琴ちゃんが来るの珍しいね~」



一緒に帰っている間、麻琴の様子がおかしかった。ずっと挙動不審というか…

いつもより距離があったし、俯きがちで口数も少なかった。俺が何かしたわけでも、誰かに何か言われたりされたわけでもないみたいだから安心したけど、だとしたらあの様子は?

それに、聞きたいことがあるって言って、言いかけたあと、わざわざ公園に行こうとしていたのも気になる。


雨が降ってくれたお蔭で近づけたし、話もできたのはよかったけど、一番気になることが解決してない。

(てか、王道主人公って?)

色々気になることが多くて、すぐに電話しようと思った。


シャワーを浴びて風呂場から出ると、リビングから声が。

「ん?(この声……)」

リビングに入ると、母さんと湊、それから…

「麻琴!? なんで家に?」

「あー…その…電話で話すって言ったんだけど、やっぱ直接がいいかもしれないと思いまして……」

「とりあえず、俺の部屋行こう」


「お邪魔します…」

緊張したように小さく座る麻琴の隣に座ると、ビクッと肩が上がった。

「早速ですが、さっき聞こうとしていたことを話したいと思います」

「うん…」

かなり緊張している様子の麻琴に、俺まで心臓がドクドクいいはじめた。


シンとした部屋に、麻琴が小さく息を吸うのが聞こえる。

「柊斗は、私と……キ…スしたいと思ったことありますか?」

……………ん?


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